王家の争いの中で毒杯を飲まされて死んだ16世紀デンマークの王女スカーレット(CV:芦田愛菜)。死後の世界で現代の看護師 聖(CV:岡田将生)と出会って旅をする中で、心の中の重荷を解放していく話。ハムレットと神曲が原案。作中のキャラクターの名前や、途中で有名な「この門をくぐる者は…」が出てくる。読んだこと無いけど。ダンテ(もしくはハムレット)がスカーレットで、ベアトリーチェ(もしくはオフィーリア)が聖。聖の無私の奉仕の心に、復讐に取り憑かれたスカーレットが心を開いていく。
映像はCGで作られているシーンが中々良かった。宇宙から見た地上みたいな実写風のシーンだったり壮大な背景だったり。ただ途中の熱帯雨林の中を移動するシーンはCG感強すぎたかな。
キャストも良かった。ストーリー的には芦田愛菜独演会みたいな作品だけれど、吐いたり泣いたりよく泥臭い芝居をしていた。脇を固める悪役クローディアス(CV:役所広司)を初めとするオジサン達が頼もしかった。音楽も十分な予算があるんだろうと思わされる出来。
ただストーリーは細田守の常として、なんでこのシーン入れた?みたいな前後のつながりに違和感のあるシーンが入る。未来の渋谷の路上でダンスを踊る二人。歌付き。とにかくダンス入れたかったんだろうなぁとしか思えず。「行きて帰りし物語」の意識の変容を描いているっぽいが、死後の世界だから何でもありでどうもね。ラストも大勢の前で現代(未来)的なリーター像とはみたいな話の安っぽい演説をするスカーレットが途端に嘘くさくて、無理に入れないほうが良かったのでは。
分かりやすいストーリーだったし、ここ数作の細田守作品からしたらいい出来だったと思う。それでも「時をかける少女」を超えられないのがなんとも。原作・脚本は他の人のサポートで共著みたいに書いて、演出を主にやるのが良いのではないかと思うのでした。