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(第9話視聴後、これは最初から見返したい。何のために歌うのか、深く考え直したいと思って再視聴中の感想の一部)
 その夜、宿泊先の宿での、ジョーとシルヴィの会話(二人だけの、秘密の)は、圧巻の絵作りだった。特に光の配置が絶妙だった。ふたりのベットの間にカンテラのようなライト(エリーの蝋燭を思い出した)。部屋の天井の明かり(9つ1組)は消えている。月明かりが差し込まなかったり差し込んだりをした。
 ジョーはシルヴィが寝入っている(実際には寝ているふり)のを確認して、自信がないダンスの振り付けを確認する。窓に映る自分の姿を見て確認する。月明かりは強く差し込まず、窓は鏡になっている。シルヴィがお手本を見せる時、窓からは強く月明かりが差し込み、シルヴィ(とジョー)を美しく照らす。
 この時、窓は鏡ではなくなり、遠くの家の明かりが目に入った(元より映っていたが私は意識しなかった)。シルヴィに問われ、ジョーが何のために頑張るか、前向きでいられるか、答える場面。窓の外から二人が見える。二人に窓の格子の影がかかる。お金の問題、家の制約、そういったものは厳然としてある。
 そういったものに影響を受けて形を変えた私は、本当の私ではないのだろうか。(お金のためというのは)「家族のため…」で少しジョーから視線が外れた(おそらく自分の内心へと意識が向いた)シルヴィと、「でも」(ここは他の部隊とはちょっと違うね)で背中越しだが、顎が少し上向いたジョーの芝居が印象的に目に映る。よく見れば格子越しにも、本当の私がいる。縛られてはいない。
 (画面は部屋の内側へと戻って、ジョーとシルヴィの表情が見える)ジョーは気が抜けて家にいるような感じの言葉遣いが出てしまって、恥ずかしいと思う。そのジョーにシルヴィは昼間を思い出す。
 シルヴィは、母の墓前で迷いや煩わしさや、なんでも打ち明けることができた。シルヴィは、何事かに後ろめたさを感じる点で、ジョーと同じだった。ジョーが考えた新衣装の絵の狭間、似合うと思った白いリボンで髪を結えた自身の絵を見て、シルヴィは白いリボンをつける決意をする。隠さないと決める。
 この場面、室内に戻ってもベッドの頭の側からの構図になり、それまでの室内の構図(ベッド頭に向かってカメラを構える)と変化して驚きがある。また、月明かりは舞台袖に捌けて、部屋のベッドの間のライトが強く印象付けられる。それが好きだった。
翌朝、曇りガラス越しにリボンをつけるシルヴィと部屋の中からどきどきして待つジョーも好き。
「あたしね、自分に正直になろうって決めたんだ。何が正直なのかは、ほんというとよくわかんない。でもね、みんなと一緒にステージに立ちたい気持ちは絶対に本物なんだって」
 本物の気持ち、それは色々と見て出会い影響されて変化していき捉えられない。
 それでも、色々と見て色々なことを思った私は確かにいて、…そこにいる何者かは確かに本物だ。ローザ様、妻、母さん、…それらが鏡の姿だとしても、そこにいる何者かは本物だった。期待してくれている人がいると知って、リーダーらしい振る舞いに気合が入ったアイラもまた、本物の姿だ。シルヴィの父の残した締めくくりの言葉がとても強く印象に残っている。



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