氷が割れた世界に雪が降って風が鳴って、ツィベタの心の創った世界の変化が始まったのがわかって(心には3つの要素があると説明されたことも思い出されてよかったです)、その世界の変わりように目を奪われて、観ていきました。Aパート、Bパートの境目を利用して劇的に、静かに心の世界が開かれたのが印象的で、とても好きでした。
「けど、間違いなく彼は今の世界を壊そうとしている、誰かの夢を歪めながら。
だから、どうかお願い!彼らを止めて!スティグマに世界を壊させないで!」
この場面で、ツィベタの涙が流れた理由がわからなくて、けれど、直感的にすごく好きでした。色々と考えてみて、今のところの答えは出して見たのですが、そのうち考えが変わるかもしれません。今のところの答えとしては、ペーシャのいるこの世界を愛しているから、そして歪められる誰かの夢を、歪められてその誰かが自分のように大切な人を傷つけてしまうことを思ったからではないかと考えました。
ツィベタの存在にはおかしなところがあって、というのも回想でペーシャは母レターナが事故で死んだと思っていました。つまり、ツィベタがペーシャの心だけから生まれたとしたら、本当の死の記憶が存在するのはおかしな話です。ツィベタの立ち上げにはいわば地球の心(それがどんなものかよくわかってないで書いています)が関わっているのだろうと思います。
それを映したものと断定できませんが、ペーシャの目にツィベタが映って、ツィベタが地面に残った氷の鏡(透明な涙のように綺麗で、けれどナイフのような大切な人を傷つけてもしまう形の印象も含まれていて好きです。ほかにももっと多くのものを含んでそうに感じますが、うまく形になりませんでした)に映った場面が、それはちょうど「夢を叶える」(「人が心の奥底で強く願うことを現実の中に形作る」)スティグマの能力を話している場面ですが、印象に残っていました。瞳(心)から瞳に映ったペーシャと同じように、世界(心)から世界に映ったツィベタが成立している感じに見えました。ツィベタの話しているペーシャが強く望んだことと同じように、レターナ(ツィベタ)も再会を強く望んだから、この「夢」が浮かんだと思います。
二人が夢を叶える場面、大人になってお酒を酌み交わす場面が、白い外枠に囲まれて、動画として止まらずに一瞬として止まるのが素敵でした。雪の白で、空白の白で、幸せな白でした(追記。読み直して火ではないところも素敵かもしれないと思いました。シャイも立ち入れない、本当に二人だけの特別です)。
ツィベタ(レターナ)がずぅっと前に伝えたかったこと、そのいつかに戻って伝えた言葉は、「こどもにかえる魔法」がみせた奇跡で、本当はその時に既に伝わりあっていたことだったと感じました。この「夢」は本当に夢のような出来事で、きっとこの夢がなかったとしても、ツィベタとペーシャはお互いの思いを了解していたし、スピリッツ(ペーシャ)とシャイ(テル)はお互いへの理解を同じように深めていたと思います。それくらいには儚い、降る粉雪のような出来事でした。それでも、こんな風に物語があってよかったと思います。
……粉雪って書いたら無性に『粉雪』が聴きたくなりました。聴きに、いってきます(「バイバイ」より行ってきますだったって。なんとなくです)。
付記。入る場所がなかったので最後に残します。ツィベタがスティグマのことを思い返していて、手に氷が生えてくるところ(これは手をつなげなくなる拒絶だった、とも)で、心の「記憶」が「感情」(身体)や「世界」に影響を与えているのが出ていると思って、ここでも記憶が刺激されました。
訂正。ツィベタ、ツィペタと書いていました。以前に戻って全て直します。