まあ文句なしに面白かった。120点の回は無いけど、90点以上の回を28話毎回やってくれた。山あり谷ありの展開ではなく、なだらかな山を一歩一歩登っていく。でもその一歩が毎回心に響いてくるという美しい作品だった。
本当にずっと美しい作品だった。展開の美しさ、色彩の美しさ、音響の美しさ。それら全てが調和して最高の雰囲気を醸し出していた。
その中でも一番良かったのが「セリフの美しさ」。時は流れゆくものという不変の事実に対して、その儚さと可能性を一つ一つのセリフによって最大限に魅せてくれた。個人的に一番好きなのは「人間はエルフに比べて死に近い場所にいる。人生の決断を先送りにはできない。だからこそ、成長の可能性を秘めている。これからは人間の時代がくる」というセリフ。このセリフから、フェルンがフリーレンを殺す展開は文句なしだった。
それぞれの旅の目的も美しい。あくまで平和な世界だから、旅を掻き立てるような目的は無い。フリーレンの目的がヒンメルと再び会話をすること、フェルンの目的はフリーレンと一緒にいること。最も単純だけど、最も強い動機。この目的だからこそ、この作品の静かな雰囲気が作れる。様々な人々の気持ちをおくり届けることができる。
あと、旅の別れが大袈裟じゃないのもすごく良い。ザインの別れとかすんなりだったんだけど、スッと溶けて無くなるような別れが絶妙だった。で、そのあっさりとした別れの理由が、「また会ったときに恥ずかしいから」。旅は終わらない。今生の別れなんてない。たとえその人が亡くなっていても。だって、今からヒンメルに会いに行くんだから。これが本当に美しい。
あとこの作品の良いところは、オンオフの切り替えが自然にちゃんとできてること。バトル展開より各地を巡る話の方が個人的には好みではあったが、バトルもちゃんとスパイスになっていて面白かった。魔法とは想像の世界という見せ方も良かったし、戦闘内容も面白い。一瞬に全てを解放する作画も素晴らしい。戦闘をだらだら続けず、一瞬に全力投資する作画だから、その後の静けさの余韻が味わえる。やはり戦闘アニメーションにおいて一番大事なのは緩急なんだと改めて感じた。
キャラ魅力も抜群、アニメーションのクオリティも抜群、最高の雰囲気、台詞の良さ。全てが調和された最高の作品だった。細かなシーンまできちんと描くのにテンポが良いのもほんとすごい技術。手放しに褒めていいと思います。
ここまで刺さるとは思わなかったです。原作ももちろん買うけど、アニメの出来が素晴らしいから是非アニメでも見たいな