透明化現象の鍵があるかもと学校に戻ってきたのに、更に麻衣を見え無くなる人は増えていて、それが余計にまだ見えている咲太を追い詰めてしまう展開はきつい
眠らないためと大量のカフェインを摂取して、解決策はないのかと量子力学を学ぶ咲太の姿勢は本当に素晴らしいとは思うが、その姿勢は逆に麻衣を気遣わせてしまうものでもあって。咲太は何をしてでも麻衣を忘れないようにとするけど、麻衣の方は咲太を犠牲にしてでも咲太に忘れて欲しくないとまでは思い込めない
だからだまし討ちのような形で咲太を眠らせ、その尽力への褒美として幾つもの言葉を投げかける。けれど、「元々私は一人だったんだから大丈夫よ。咲太に忘れられるくらい何でも無い」はむしろこれから訪れる孤独の日々に耐えなければならない自分を騙すかのような言葉のように思えてしまう
これまで咲太が麻衣を観測できたのは、咲太が学校に蔓延する『空気』に混じれなかったからだろうか。しかし、それは全く『空気』を読んでいないという訳ではなくて、『空気』に弾かれた者としての行動に準じていただけのような気もする。だから『空気』と戦うなんて馬鹿馬鹿しいと思ってきた
そんな咲太が麻衣を取り戻すために、恥も外聞も捨て学校の『空気』という本来なら変えようがない敵をぶっ飛ばすために、公開告白する姿には惚れ惚れとする
触れてはならないと麻衣を居なかった者として扱ってきた『空気』であっても、流石にあれだけの大声で恥ずかしい言葉を連呼する存在を無視する『空気』は作れない。そして注目された咲太が言及する麻衣が『空気』から注目されるのは当然の流れ。ある意味それは『空気』の上書きとも呼べるもの
麻衣がした咲太の噂を学校に向かって大声で否定するのも『空気』の上書きか。
今回、二人が『空気』に対してこじ開けた穴なんて大した大きさではなくて、数日もすれば又変わらない日常が戻ってきてしまうかも知れないようなものだけど、それでも失われかけた関係性を取り戻すには充分なわけで。
あれだけの大告白を受けながら、雰囲気で押し切られた感じがすると「一ヶ月後にもう一度言って」と注文をつけてきた麻衣にはちょっと笑ってしまった。それに対して咲太が「毎日言っても良い?」と返すのは流石。
どちらも面倒な性格であるだけに逆にピッタリと来る関係性。二人の仲が収まるべき所に収まるラストは非常に気持ちの良いものだった