これまで描かれてこなかった沙弥香の内面が描かれた回。
彼女も完璧な七海橙子を信奉する人間であることは確かなんだけど、それだけではない点が色々見えた気がする。というか彼女について色々誤解していた点が有ったのだなと判った
中学時代の経験から同性への恋心を表に出すことに臆病になってしまった沙弥香。彼女の橙子への執着があるようで居て踏み込まない姿勢には疑問を覚えていたのだけど、そういった事情があったのね。
沙弥香は橙子に惹かれているが、同時に橙子が何か事情を隠しそれによって余裕が無いことも知っている。だから沙弥香にとっては橙子と付き合うことは重要ではなく、誰の物にもならない橙子の一番傍に居られる今の関係性が心地よいものとなる。
また、沙弥香は自分の存在が橙子にとって重荷となってしまうことを何より恐れている。だから橙子に好意を寄せる相手は把握していても今回ラブレターを送ってきた相手を見に行くようなことはしない。最近の侑と橙子が親しくなっていても橙子が誤魔化せばそれ以上踏み込まない
しかし、誰にも明かせない想いを抱え、それが報われることも願わない状態は辛いものでも有ったのだろうね。だから親しいわけでもない店長相手に、もしかして中学時代の先輩と違って自分の想いを理解してくれるのではないだろうかと不躾な質問をしてしまう
そこでの遣り取りは秘すべき想いを見つめ直す行為に繋がり、店長から沙弥香の想いを肯定されることで自分のあり方は間違っていなかったのだと知ることが出来る
侑や橙子が隠し事、秘密が増えてきた点に負い目を感じていたように、時に秘密は抱える当人にとって負担となる。特別な人間で在ろうとする橙子の傍に居続けると決めた沙弥香にとってこのように相談できる相手を見つけられたのは良かったのかもね
しかし、そうだとしても沙弥香が橙子に一方的に想いを寄せている関係性は変わらない。それだけにラストに橙子が沙弥香が居るから、頑張れていると告白するシーンは沙弥香の想いがほんの少し報われたかのようで心温まるシーンだった
……だからこそ橙子が既に侑に夢中になっていると沙弥香が知ってしまったらどうなるのかと恐ろしくなるんだけど