遂に始まる芸華祭ファッションショー。ここで披露される数々の服飾をお洒落と見るかダサいと見るかは個々人の自由だけれど、それらの感性とは関係なく伝わってくるものがある
ファッションショーにおいてその服の完成度やお洒落さも問われるのだろうけど、最も重視されているのはショーのコンセプトであるように思える
だから、最初の方では退屈そうにしていた審査員たちもコンセプトが明確である香留や育人が表れると途端に身を乗り出す
それらのコンセプトは言葉で説明されたものではなく無言の主張。それでも判る人には伝わってくるもの
それはショーの舞台だけではなく様々な場面で言える
遠を追い越した育人の主張、扉を開く事で勝負相手として敬意を払う行動
これらは言葉にしなくても意図は相手に伝わっている
葵の名前から連想した青い光、ほのかが好む曲。これらの要素はこれから始まるショーが津村育人のものであると主張してくる
またその後に続く服の数々は素人目にはただのお洒落な服だけど、見る人が見ればそれが「世界を巡る」というコンセプトに則っている事が判る。
どちらも伝わる人にはきちんと伝わるようになっている
審査員からすると育人のコンセプトはあまりにも明確。ただ明確とはつまり予想しやすいって事になるのだけど、育人は見事に審査員の予想を裏切っているね。だから段々と育人のショーに夢中になる。
次に何を仕掛けてくるのかと身を乗り出してしまう
伝わるべき人に正しく伝わる主張はそのまま評価に繋がる。だからこそショーの終わりに育人は拍手で迎えられるし、子供の為に笑顔でいようと決めていた母親も滂沱の涙を流すほどに感動してしまう
無言のまま行われたショーは充分に育人のメッセージを載せている
それにしても育人や香留のショーだけでも服飾を通じたコンセプトの伝え方の多様さが伝わってくるのにまだ心や遠のショーが待っているという……