あまりにも早すぎるステージ体験
ステージへ向かう道程は経験有るアイドルと経験のないアイドルの差を明確にするが、それでいてステージ上では差を曖昧にしてしまう空気も感じられる回だった
美嘉は作中において人気アイドルとして描かれる。それはライブ中の歓声という結果だけでなく、練習シューズの擦り減った靴底からも彼女がこれまでに培った経験が見える
また、レッスンには取材で遅れ、終われば走って出ていく様子からも彼女のスケジュールの密度が察せられるようになっているね
卯月達はどう考えてもそんな美嘉と同列のアイドルではない。だからここで卯月達に求められているのは万全の成果を出すことではなくて、美嘉と一緒にステージを作る上で様々な経験を積むことになる
そういった意味だけを見れば卯月達は新人そのものと言えるんだけど、実際に会場に行けば新人扱いだけでは済まない
楽屋挨拶時、スタッフや共演者に挨拶はできても、お偉いさんが来た際に川島瑞樹のように節度を持った挨拶をすることは出来ない
また、リハーサルでも新人だからと練習時間が多く取られる特別措置は無い
経験の無さと与えられた役割のギャップに息苦しさを覚える未央達の様子が容赦なく描かれているね
だから、経験のない彼女らを笑顔にするのはアイドルとしての積み重ねの中にはないんだよね。普通の女の子であれば話に花が咲く好きな食べ物は緊張に固まっていた未央達を解きほぐし、掛け声となってステージへ飛び立つ勇気の源となったようだね
本番は少々不出来な部分も見えるけれど、どうにか上出来と言えるステージとなったようで
一方で垣間見える不安。今回のライブは良い経験になったものの、三人のシンデレラは自分の足ではなく、他人が押し上げた昇降機によって舞踏会の場に立ってしまった
ラストに未央は「これって現実なのかな?」と言った。その言葉からはこのライブでの体験を上手く消化しきれていないように感じられた