夾の独白によって紡がれる、透が知らなかった夾の苦しみ
生まれながらに猫憑きとして罪を糾弾されてきた彼の苦悩は計り知れない
ここで夾の境遇がより悲劇的に思えてしまうのは透との恋愛的距離感があと一歩の所だというタイミングで夾が過去を完全に思い出してしまった事だろうね
夾本人には何の落ち度も無いのに猫憑きであるというだけで母を不幸にし父から敵視された
師匠以外の全てが敵に見えていた幼少期の夾にとって、夾の寂しさを理解して普通に接してくれた今日子の存在はどれほど救いになったのだろうと考えてしまう
自分が救われたから相手を救いたいと思う。そこには今日子の娘である透も含むわけだね
だというのに救いたい相手は憎き鼠憑きが救ってしまった。更に今日子は夾が隠したい感情も詳らかにしてしまった
夾にとって自分は奪われる存在であり、認めて欲しい相手から否定されてしまったように感じられる日になってしまったのかな……
今日子を見捨て死なせた罪。それを受けて自分を追い詰めていた夾にとって、慊人からの賭けとその先で出会った透は天国と地獄が一度に訪れたようなもの
だから自分を少しでも守るために透には何も知られないでいて欲しかったのだろうけど、一方で自分を裁く為に透には真実を知って貰いたかったのだろうなとも思ってしまう
夾の独白を受けての透の発言が光るね
透は罪を裁くより自分の好きだという想いを優先し、母の言葉すら否定した
でも、罪よりも好きを主張する透の言葉は今の夾にとって受け入れられるものではない。だから夾は透にも、そして向き合えない自分にも幻滅してしまう
決定的なすれ違いを見せる透と夾、慊人の凶刃が迫る現状。何もかもが悪い方へ向かっている中で果たして救いは有るのだろうか……