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全体
とても良い
映像
良い
キャラクター
とても良い
ストーリー
良い
音楽
良い

TVアニメ2期以降の原作エピソードを圧縮しつつ、けれど圧縮を感じさせない形で原作終盤までの物語を再構成していたね
久々に本作を視聴したものだから懐かしい感覚に浸りつつ、その上手い構成としっかりと描かれた情緒に感銘を受けてしまったよ

本映画で主題として描かれているのは「クリエイターの業」かな
本作で最もその傾向が強い紅坂朱音にヘッドハンティングされる形で倫也から離れた詩羽と英梨々が「クリエイターの業」に支配されているのは判り易いけど、同時に倫也にも「クリエイターの業」が見え隠れしているのが映画の面白い点かな

物語最序盤ではキモい妄想を垂れ流して周囲に迷惑をかけるキモオタでしかなかった彼が創作活動を通して、クリエイターの卵になって、そして映画ではクリエイターとして化けようとしていた
まあ、既に一線で戦う紅坂朱音達に比べれば未熟も良い所だけど、最高に可愛いヒロインを描きたくて猛進する彼は充分にクリエイター
そういった意味では本映画はクリエイター達の物語として扱っても問題ないのだけど、倫也達の場合難しいのは「クリエイターの業」と恋心が密接に絡んでいる点か

詩羽と英梨々はクリエイターの道を選んでしまったから倫也から離れる事になった
倫也はクリエイターとして書くためには恵の助けが居る。
人間性を捨ててクリエイターとして自立できるかどうかの差が絶対的な差となって両者を分け隔ててしまうわけだ
倫也は中盤で詩羽達を助ける為に自分のゲームを放り出している。その瞬間だけは確かに倫也も「クリエイターの業」に支配されていたかのようだし、その瞬間だけは詩羽達と倫也は以前のような雰囲気だった
でも倫也が「クリエイターの業」によりその場に居るなら、両者の間に恋心は入り込めないわけで
詩羽達が自身で選んだ道。その果てが当事者にとって凄まじい茨の道でありながら、それでもその道を歩む事をやめられないというのはそれこそ「クリエイターの業」を感じられる部分だったよ
ただ、それが何も報われないというわけではなくて、頑張り続ければクリエイターとしての詩羽達に焦がれる倫也がいずれ追いついてくる。その点だけは詩羽と英梨々にとって救いと言える部分なのだろうね

そういった「クリエイターの業」が主題となりつつも、本作のテーマは可愛いヒロインを育てること。そしてヒロインである恵の最終到達地点が何処になるかと言えば、それは倫也のヒロインになるということで
映画では時間を掛けて、倫也と恵が恋人になるまでが描かれていたね
……まあ、その前からかなり親密な仲になってなかった?とも言いたくなるのだけど

それを感じられる描写は随所に有るね。一方で有り過ぎてそれは付き合う前のドキドキではなく、既に所帯染みた描写でもあったけど
恵は倫也の家に来れば当たり前のように合鍵で入って食事を用意して物の片付けもやったりする
また、シナリオ推敲の為にSkypeするシーンでは流石に映像は繋いでいなかったけど、入浴後のケアをしながら会話なんてシーンもあった
こういうのって交際開始前の高校生男女には通常発生しないような気がするのだけど、それが発生してしまうくらいに倫也と恵の距離は近くなっていて、だからこそ今の恵に対して倫也が現実の恋心を感じずに済んでいたとも言える

だからこそ改めて恵を「好きな人」として見るために恵をヒロインに見立てたシナリオの推敲を二人でする必要があって、時には仲を深める二人を切り裂くトラブルも有って
特殊なのはその状態がそのままゲーム作りに活かされる点か。それは自分の人生を創作にしてしまう「クリエイターの業」ではないんだよね。恵への一目惚れが倫也のクリエイター道の根源にあるから、二人は自分たちの経験をゲームにしてもそれは同時に恋心を育くむ行為に繋げられる
それはそれで詩羽達との違いとも言えるのか

終盤の描写で印象的だったのは倫也・恵と詩羽・英梨々で目の前に広がる坂の様子が異なっていた点か
詩羽達の前に広がるのは何処まで続くのかと言いたくなる無限の坂
倫也達の前に広がるのは少しだけ大きな、そして想い出の坂
その違いが両者のクリエイターとして歩む道の形であり、未来の形に思えたよ

エンディング後のおまけシーンは良くも悪くも騙されたせいで一瞬妙な心情になってしまったよ(笑)
どうやら皆してクリエイターの道をそれぞれの形で突き進んでいるようで
あの頃とは違うクリエイターとして活動を続けながらも、あの頃とは違う理由で再び合宿を開けた倫也達の様子を知れて、そして乾杯の音頭できちんとフィナーレを迎えられた。それは視聴者としても充分にめでたしめでたしを感じられる終幕だったかな



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