花壇作りも箱庭作りもどちらも大変な労力を要する作業。それでも完成させたいと思うのは偏に大切な人の喜ぶ顔を見たいからだね
その意味では夏目と箱守り達の方向性は一致している。突然やってきて正体もよく判らない相手だったけど、その想いに怪しさはない。だから不思議な共同作業が成立したわけだ
自分の為ではなく大切な人の為に作るわけだから、どれだけ完成度を求めたって足りやしない
夏目の作った花壇は少し見ただけで想いが籠もった素晴らしいものと判る。石を盗まれた際に見張ろうとする程だし
箱守り達の細かすぎる要求も言ってしまえば、しだ姫に喜んで貰いたいとの想いがあるから。だから、夏目も何だかんだ協力的になる
大切な人への想いが籠められた作品は相手に嬉しさを齎すもの、その嬉しさにはお返しが有るものだし、それは他者にお裾分けも出来る。
夏目がお返しとして貰った種を箱守り達に分け与えたのもそういうもの。作業に加われなかった彼らに活躍の場を与えた
嬉しさのお裾分けとして得た花の種はしだ姫への想いを表現する作品の一分となるね
素晴らしい出来にあつらえられた箱庭はしだ姫に喜びを齎すものに。彼女が覚えた喜びや感謝が舞い踊る花びらの形でお返しされるというのは良いね
それは皆の労力に報いるものだけど、一方で夏目自身もあの庭を楽しめた。幼い頃の記憶の件を含め、夏目にとってはあの空間に身を置いた時間が何よりも褒美となったように感じられたよ