なんて優しさに満ちた甘酸っぱい物語だろう
妖怪の落書きからホラー調に始まるけど、最後にはそれが恋文だと判る。その最初と最後の間にあるのは多軌と妖怪たちの優しさであり、それを結ぶのがおじいさんが作った妖怪が見える陣であるのが心を震わせてくる。モサモサした妖怪も自分の声が人間に聞こえないまま枯木を伐採されたことで人間を嫌うけど、陣を通して多岐と互いの姿を認めあったことで心が変わっていく。それは兎の小妖怪も似たようなもの。モサモサは見えぬ相手は居ないも同然と言うけど、彼自身は家の外から多岐を見守るし多岐だって見えないながら妖怪と積極的に関わろうとする。それは見えなかったら居ないなんて簡単に片付けられる状態じゃないよね。
兎は共に危険が及ぶなら二度と近づかぬと言うしモサモサも同意のようだけど、それはきっと関わり方が中途半端だったからで、いつかきちんと両者が関われるようになればいいなぁなんて思ったりした。