17年の『正解するカド』がガッカリだっただけに不安はあったが、終わってみると『カド』に比べて面白かったと思う。
正崎たちを弄びまくる曲世や、どこまでも自殺を肯定する齋の言葉と振る舞いは、視聴するこちらの倫理や正義・悪への観念を揺さぶり、試すかのようで、これほど考えさせられたアニメは久しぶりだった。
演出面も優れており、特に7話の、九字院の自殺や曲世の殺人とある日常の風景がリンクする悪趣味にすぎる演出にはゾッとした。
しかし、そうした我々の心への強い揺さぶりは多くの人が言う通り7話がピークで、それ以降は『カド』ほどではないものの失速してしまう。
正崎の渡米以降は齋と彼が掲げる自殺法がフェードアウトし、「自殺は正しいのか?」という問いも有耶無耶にされてしまう。
正崎が執念で曲世に一矢報いるかと思いきや、結局正崎を含めて誰も彼もが彼女の掌の上で踊らされて終わる。
引っ張った割にあっさりとしたラストには、否が応にも「原作未完」という足枷の存在を意識させられる。
竜頭蛇尾…というのは言いすぎだが、後半の失速が本当に惜しまれる作品。
原作の完結を待ってから、しっかりとアニメ化してほしかった。