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良い

石也大きくなったな…、千晴も大きくなってるよな。御台様からぶんぶんしていた頃が懐かしいと言われていて立派に笛を吹いていた。鬼夜叉は久しぶりに自分の家へと運ばれていた。
無駄が嫌いな義満、少し遅刻した公家を追い出したらしい。そこに来たのは鬼夜叉のファンであるおじいさん。名を二条良基であり元関白であった。将軍と話をした。花は予感を楽しむもの、それを味わうことが至上の喜びだと良基は言ったが義満は予感を味わっている間に死んでしまいそうと言った。将軍として多くを引き付ける完成された花を持つと言った。義満に菊亭を欲しくはないかといった。
彼は鬼夜叉のためなら何でもやるといい、美しいものはいじめてこそだとも言っていた、歪んだ愛情だぁ…。

家に戻った鬼夜叉は大きくなった十二五郎と話したり、みんなと宴を楽しんだりした。
石也も久しぶりに会うのだが、少し躊躇していた。もうすっかり別世界に人に見え、昔過ごした日々も夢とすら思うと言ったが頭はお前と歩んだからこそ今の鬼夜叉だと言った。
石也に望みを聞いた頭、お前はどこへ行きたいとも聞いた。霧が晴れたらまた好きに歩けと言ってその場を去った。義満は鬼夜叉はどこかと聞いたが与一が休ませていると言った。千晴は義満に鬼夜叉は戻ってくるだから待っていて欲しいと言った。替えのきく花なのかもしれないが、舞台の上の彼は様々な感情を呼び覚ましていたと言った。義満は見る目がないのかと千晴に問うた。彼女はぶっちゃけはいと答えた。義満は大笑いし、雅なるものの意見を引き入れてみるかと言った。

久しぶりにサツキが出てきた。彼女は交代で村の人みんなで子守しているらしい。誰だって出来ない事があるだから一緒に生きていくんだと言った彼女を見てサツキは変わらないなと鬼夜叉。子どもたちが鬼夜叉の舞を真似しているのを見た。鬼夜叉はあんな時が私にもあったのかと懐古。彼はどこにも行けない虚しさを感じ、自分が自分である限り、この体の限り犬王の場所に至ることはない…。と感じた時に聞こえてきた歌。その歌を良いと感じて向かったところ石也がいた。

鬼夜叉は彼の歌を綺麗な歌声だったと言い、石也の歌は相変わらずきれいだと言った。すると石也は初めて褒めてもらったと涙を流した。鬼夜叉はずっと褒めていたと言っていたが石也は歌ってくれとしか言われていなかったと言った。石也はこの体に生まれたからずっと逃げていた。いろんなことを諦めてきた。でも本当は怖かった。悲しい気持ちになりたくない、ひどいことを言われたくない。だからそうなる前に逃げた、芸からも、若からも、コガネのこともそう。許されないことから私は逃げたと石也。それでも彼は舞台に立ちたい、同じようには歩けない、コガネはもういない、でも彼は諦められなかった、消えてくれなかった。ずっと石也は鬼夜叉と舞台に立ちたかった。生まれも体も関係なく舞いたかった。鬼夜叉は自分はもう限界だと言い、父のようにもなれないし、犬王のようにもなれない、石也の声も持たない。それでも私は舞が好きだと鬼夜叉は笑顔で行った。才能のある何者かにならなくていい、舞だけが居場所の人が、舞だけでしか思いを伝えられない人が、舞がただ好きな人が、みんなずっと舞えればいいと思う。それがいつまで見続けばよいと思う。私は舞で世界を変えたいと石也に向かっていった。彼は笑顔で頷いた。

鬼夜叉。齢15。後に世阿弥と呼ばれる能楽師となる。彼が向かう先は川よりも海よりも広く、月よりも遠い未来。花の御所で日吉座の舞台当日に観世座鬼夜叉が舞を披露せよと将軍から急な命が下った。限界を感じるその体とその声、その瞳で最後の歩みを進める。

最後の覚醒の舞を見せてくれるだろうか。



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