宙の楽園は失われた。人の死なない決闘場は、命を奪い合う戦場と化し、日常は容易に帰らぬものとなる。そんな現実を突きつけるソフィとノレアが望むものが、まさにその日常だった。
彼女たちとスレッタは見ている世界が何もかも違う。地球で何もない彼女たちは、スレッタが「そんなもの」と言い纏める日常を命懸けで追い求めている。一方で、スレッタは何もかもを与えられて、ガンダムが暴力装置であることも、戦えば人が死ぬことにも気付けない。
プロスペラのもう一人の娘であるエリクト・サマヤでできたモビルスーツというゆりかごの中で、スレッタは全ての悪意から守られていて、その悪意の存在すら知らないという最も醜悪な存在として映っていた。どこまでも無垢であるが故に、自分の邪悪さすら無自覚な様は、まさに魔女だった。