TVシリーズも含め、この作品はとても危うい。
魔法士部隊、異世界転生、主人公が異能の幼女、という要素を含むファンタジーでありながら、その実、第二次大戦を部分的にモデルとした生々しい戦記物であり、主人公が軍人として属する国がドイツ第三帝国を部分的にモデルとした帝国であるという点において、実に危うい。倫理的にふざけた描き方をすれば各方面からの批判を免れないからだ。
しかしながら、戦争を過度に美化することなく、その破滅性、政治性、悲劇性が巧みに織り込まれている。このことで、一定の真面目さが担保されていると思う。
さすがにヒトラーをモデルにしたキャラが出て来ないので、帝国側にも一定の自由主義国家としての主張が成立している。一方、旧ソビエトをモデルとした連邦国には、スターリンに酷似したキャラが登場し、共産主義政治体制の在り方までもが酷似している。この辺りも、作品への批判を回避しつつ問題提起する設定面の上手いバランス感覚だと思う。
主人公は転生前にいた世界の歴史上の世界大戦の顛末と、その勝者と敗者による戦後の国際秩序についても知った上で、事情により仕方なく戦場に身を投じ、戦略と政治を考えている。
そこに別アングルの軸として、戦争に個人の信条や恨みや欲望が深く関与することと、主人公が存在Xと呼ぶ形而上の神との対峙も、物語の重要な要素として描かれている。
この作品は先述した危うさを内包しつつも、戦術と戦闘遂行の高揚感、友軍の面々の人情味あるやり取り、主人公の幼女の容姿とは対象的な鬼連隊長としての凛々しさとカリスマ性、後方支援のキャリアを志望しているのにいつも裏目に出て最前線に送り込まれてしまうギャグなど、エンタメ諸要素の魅力と、容赦のない苛烈な戦記物としての見応えを兼ね備えた良作だと思う。
アニメーションとしてのハイレベルな作画品質と声優陣の演技、世界観を的確に表現する音楽の丁寧な作り込みにも賛辞を送りたい。