この作品の巧いところは、「溺愛」だけで終わらせていない点だと思う。
婚約破棄をした元王太子が、きちんと後悔している。
これは実はかなり重要な描写だ。
多くの悪役令嬢ものでは、破棄した側は単なる愚か者として退場することが多い。
けれど本作では、
・自分の判断の軽率さに気づき
・周囲の空気に流されていたことを自覚し
・失ったものの大きさを理解する
という「過ちの自覚」が描かれている。
その感情があるからこそ、世界が少し立体的になる。
単純な勧善懲悪にとどまらないのがいい。
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そして甘さがかなり強めなのに嫌味にならない理由は、ヒロインがただ守られている存在ではないからだと思う。
彼女は毅然としていて、泣き崩れず、感情を暴発させず、品を保つ。
だからこそ、溺愛が“ご褒美”として成立している。
……とはいえ、甘々度はなかなかのもの(もちろん褒めている)。