やまびこは孤独な旅の末にこだまという陽だまりを知り、その安らぎの中いつまでもいたいと望むように。それゆえこだまに太陽という女神でいてくれる事を暗に求め続けたように思います。彼女はその優しさゆえ彼の、皆の期待に応え続けた。いつか一人の唯の女の子になれる事を願いながら。
辛いことを忘れ穏やかな安らぎに心委ねることは心地の良い事です。しかしそれで外にある辛いことやそこから来る心配や恐れが解消するわけではなく、むしろ時が経つにつれ心の中でどんどん肥大してしまいかねず。こだまの優しすぎる優しさはそれを助長してしまったのかもしれません。そしてそんな心模様が疫病という形で具現化したようにも思えました。
今話は、前回のバベルの塔に続き、希望が見えない現実下におかれた人間の在り様が描かれ、その中を漂う閉塞感や登場人物の心の奥に潜む絶望や不安が心にズシリと響きました。そして希望とは、現実と向き合うとはどういうことなのか、強いメッセージとして表現されているように思えました。