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とても良い

冒頭、お祭りの主役だったときのあんこの思い出。しかし一方で現在はお祭りに浮かれた人々へ醒めた目を向ける。それと対比させられるのが恋だ。興味深いのが登校時に商店街の人々から何かと貰い受けるところで、これを意中の人に見られまいとするのはお祭りや商店街の人々との関わりをより大きな視点で、田舎っぽい振る舞いと認識して忌避している様に見える。生き方そのものとしての「都会vs田舎」の構図が組み込まれている、と読めるところだが、問題の意中の人が実はいかにも都会的なイケメンの方ではなかったというオチを考えると、これもメタレベルでのミスリードなのか、それともただの深読みか。
あんこが「昔は…」と呟くところが最も重要で、つまりあんこは単に興味が移ったという訳ではなく、自分が主役ではなくなってお祭りを楽しめなくなった、という心理があったのだ。
お祭に目配せしつつ博物館へも行く、両天秤の作戦は失敗に終わってしまうのだが、あんこはそこで他の子供に自分の「主役」の体験と同じものをプレゼントすることになる。ここに至って、あんこは地域コミュニティというものが単に自分自身のためではなく、そこに貢献する中で何かを受け継いでいく、そうした中で充足が得られる場所であると気付く。(やはりコミュニタリアニズムとリベラリズム(自由恋愛)という構図を思わせる。)いや「母」の役目を引き受けることで、多様な立ち位置、主役以外にも楽しめる役割があることを理解する、といった感じかもしれない。とにかくそうしてコミュニティへの愛着を回復する。
しかしそれでめでたしではない。それではかび臭い懐古的保守主義になってしまう。物語はそこで恋の側にきちんと報いるのだ。「別の道は別の花。新たな花が咲いている」
そして上述のオチによって対立は結局無化されてしまう。別に彼女はこんなテーマ性云々の為に生きているのでは決してないのだ。きちんと時代性を踏まえつつあんこの機微を描いていて素晴らしい回。



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