Aパートのエピソードは、主人公である夕日のドラマに一つ大きな区切りがつく、大事なエピソードなわけですよ。原作で読んだときは強く心を揺さぶられたものですよ。それがこんな、原作が持っていた熱が欠片も残っていないようなアニメになるなんて……。
一番疑問なのは、原作とはシーンの順序を変更して、原作では夕日が祖父の病室を飛び出してからノイに願い事を告げるまでが一連のシーンだったのを、願い事を告げるシーンだけAパートの最後に持ってきたこと。原作では、夕日が祖父に対する憎しみを吐露し、直後にそれでも祖父を助けてくれと願う、愛憎が同時に存在する人の心のままならなさ、夕日が隠していた心の奥底にあった一面、というのがよかったのに、シーンを分けたことでそれらが台無しになってしまっている。
原作既読であっても何を言っているのか聞き取りに困難を覚える夕日の声の演技については言うまでもなく。
また、泥人形と戦っているときの「死線を越えてやるって言っただろ」という台詞は、願い事を告げるシーンの「共に死線を越えようぞ」という台詞を受けてのものなのに、シーンの順序を変更したことでおかしな台詞になってしまっている。改変したことによって発生する不具合の手当てもできないのなら、改変なんぞしないでいただきたい。
Bパート「僕が割り込む余地なんてないじゃないか」のシーン、相変わらずキャラをスライドで動かしているだけで全然「割り込む余地のない戦い」に見えなくて、思わず笑ってしまった。
あと、個人の好みの範疇だと思うが、ルドの目が原作と比べて犬っぽさが減って人間に近い目になってしまったのが残念。