今回は小村くん役の伊藤昌弘さんの演技が特にキレッキレだった。「誰か俺に手錠をかけてくれ」とか、声の演技だけで笑ってしまった。「もうだめだ…イケメンフレグランスが惜しみなかったんだ…」もよかった。
小村くんの子供の頃の写真と鉄棒のエピソードも好きなエピソード。写真見たさに不自然な言動を重ねる三重さんがかわいい。不意打ちのズボンチラ? 大好きに決まってるじゃないですか!
ネタバレ:アリスもテレスも出てこない!
それはさておき。
見ながら何度も心を揺さぶられました。一度最後まで見ていろいろわかった上で、もう一度最初から見てみたい。きっと同じシーンでも感じ方が変わるはず。
自分にとっての岡田麿里さん脚本の魅力である、猥雑で生々しさを感じさせる人物描写を、本作でも存分に堪能できました。相反する面を平気で同居させることができる、多面性を持った人間。
バカじゃないのかと言いたくなるくらい単純でありながら、同時になぜそこでと言いたくなるようなところで捻くれている。自分でもわけのわからない苛立ちがいつも心のどこかにある。映画を見ているとそんな思春期の頃の自分が心の中に蘇るようでした。
芝居も映像表現も、劇場作品に相応しいとても見応えのあるものでした。影の主役と言っていい製鉄所をはじめとする美術も素晴らしかったです。駐車場で雪が雨に変わるシーンとラストカットが特に心に残りました。
今回のエピソードで最も大事な瞬間は、朝礼台の上で小村くんが三重さんの顔に手を添えて彼女を見る瞬間であろう。原作では1ページ1コマの大ゴマで三重さんの表情をアップで見せる(台詞もなし)ことでその瞬間を強く印象づけている。
翻ってアニメ版では、その直前に三重さんが「いいよ」と言ったところでも三重さんの顔のアップを使ってしまっているため、大事な瞬間のインパクトが薄れてしまっている。
加えて、大事な瞬間の三重さんの表情のニュアンスが原作からずいぶんと変えられてしまっているのも残念。目をどのくらい開けているかとか、何より口の表情が原作のニュアンスを汲めていない。加えて、(アニメ版は常にそうだが)髪の毛が動きまくっていて、それが三重さんの表情に注目するのを妨げるノイズになってしまっている。
俄然攻勢を強める三重さんを見て、前回のエピソードを経て彼女の中で確かに何かが変わったのだろうと思う。
美術準備室に行くエピソードとか、二人きりになりたい以外のなにものでもなく、前回までの三重さんには見られなかった行動、のような気がする。