自身を競売に掛け鎖をつけられるチセ。非常にリスキーで背徳感溢れる方法なのに、そこでチセが願っているのは何でもいいから帰れる場所が欲しいとだけ。その姿からは追いつめられた少女の姿を現実的に感じられる
けれど、そこに骨の頭部を持つ魔法使いが現れ、温かい食事や暖かい家を与えられ家族とまで言われてしまう。非現実的にも程がある展開
競売に掛けられた事もエリアスに買われた事もチセがスレイ・ベガだからという特殊な背景がある。それによって見えざる者が見えていたチセにとっては、「良かったことなんて一つもない」と叫んでしまう程の事実なんだけど、エリアスに言わせれば「運が良い」とのこと。これは現実的な人間の世界から非現実的な魔法使いの世界へ渡ることで価値観がひっくり返る可能性が提示された瞬間とも言える
その後のチセに付けられた鎖がエリアスによって壊される瞬間の表情がとても良いな。
絶望の淵から、突然厚遇を受けるようになった現状はチセにとって現実感に乏しいものなんだろうね。だから妖精の誘いにもホイホイ乗ってしまう。
人の世界で暮らすより楽だという幻想的な誘い。そこから自分を引き戻すために現実的な痛みとエリアスの言葉によって踏みとどまったチセ
チセは帰れる場所が欲しいと望み競売に掛けられ、エリアスによって帰れる場所を与えられた。けれども最終的にはチセ自身がその家に帰りたいと思わなければ本当の帰れる場所とはいえない。競売に掛けれられる前のチセにとっておぼろげだった『家』のイメージが現実味を持った瞬間なのかな
面白いのはチセが『家』を手に入れた瞬間にエリアスから更に提示されたのは『お嫁さん』。15歳の少女にとって結婚するだけでも非現実感なのにそれが魔法使いの嫁だという。チセがエリアスの言葉を現実のものとして受け入れられる日は果たしてくるのだろうか?