初回からずっと「ローマの休日」みたいなラストを想定していただけに、本作がハッピーエンドに辿り着いたことにただただ驚愕してしまう。これが多田とテレサの想いの結果、身分の差や生まれたときから決められた運命を越えたというのなら納得し受け入れられるのだけど、シャルルがテレサを想って身を引いてくれたから辿り着けたラストだからなぁ……
まさか壁を越えるのではなく壁が退いてくれるとは予想していなかったよ
前回、多田は勇気を出してラルセンブルグまでテレサを追いかけてきた訳だけどその時点で伝えたい言葉はどちらかといえば感謝の比重が強かったように思う。それがテレサの身分とシャルルとの結婚を知ることで一時の迷いが生じ、そこから伊集院の後押しと招待状を死に物狂いで追いかける経験を経て、最終的には感謝だけでなく自分の恋心も伝えることが出来た。
特に招待状を追いかける時に両親に何も言えなかったことやテレサの言葉を思い出す描写、何よりも両親の一件で心の一部を凍らせてしまった多田の恋心を再び動かすためのギミックとして冷たい川の中でも熱い想いを抱え多田を走らせる描写ははとても良かった。
暗い廊下で多田はデートの時も前回の再会に際しても伝えられなかった本当の思いを伝えようとする。最初はテレサも頑なな態度を保とうとするけど、それを打ち破り本当の想いを引き出せたのは幾つもの転機を越えた多田が自分の恋心を奥底まで伝えきったからだろうね。
ラストには多田が勇気を出してラルセンブルグまでテレサを追いかけたように、テレサも勇気を出して日本まで多田に会いに。そんな勇気の果てに二人が結ばれた結末は良かった。……のだけれど、シャルルが婚約を破棄したからって、テレサがシャルルとはまた別の人物と政略結婚する必要はないのか、日本人である多田との自由恋愛が許される環境なのかといったラルセンブルグ側の事情があまり描かれなかったことで今回のハッピーエンドを手放しで称賛できないのは残念な点でも有った