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とても良い

何の為に生きるのか、生きる為には何が必要かが問われる内容だったように思えた

正式な跡取りの多宝丸は父親に可愛がられつつ元気に暮らしているように見える。だが、首無し観音に目を向けた際に表情が曇るように、彼は母親の愛が自分だけに注がれていないことを察しているよう
多宝丸が稽古に精を出すのはもっと母親に見て貰いたいからかもしれない。子供が健やかに生きるには親の愛が必要だと判るシーン

百鬼丸は足りないものばかりでまともに生きていくことすら難しかったが、寿海に拾われたことで手足を得て自由に動けるようになる。しかし、摘んだ花の魂が消える瞬間を見てその直後に獣に襲われてからの彼は、殺される前に殺せと言わんばかりに殺生を繰り返す。更に鬼を倒せば自分の体が戻ると知って殺しこそ必要なのだと判ってしまう
足りないものが多すぎる彼は生きるためには奪い取り戻すしか無く、生きるためには戦うしか無い。

そして今回のキーパーソンとなった寿海。彼は己がしでかした罪に押しつぶされて身投げする。この時に彼は生を失ってしまったのだろうね
手足を補う技を得た彼は自分は生かされた、すべき事があると考えるがその道の先で出会ったのはかつて自分の罪によって親を失った少年。寿海に出会い幸せ者だと言っていた彼は過去の罪を知り彼に恨みをぶつける。「貴方は俺を救えない」と寿海の生きる意味を否定する
その後、生きる意味を無くし再び落ちた寿海は百鬼丸を見つけ、彼を育てることこそ自分の生きる意味だと見出す。しかし、育った百鬼丸は生きるために他者を殺す必要のある人間だった
百鬼丸が自分の体を取り戻す度に付いていくことは出来ず、何もしてやれなかったと悔やむことになる

結局、生を取り戻せず何処へも行けない寿海は生者ではなく死者に対して手足を接ぐしかなくなる。どうしたって生きる意味など見いだせそうにない彼の後ろ姿は哀しい。
だからこそ百鬼丸との別れのシーンは印象的だった。何も言えず何も見えない百鬼丸が別れを惜しむように寿海の顔を探る、対して寿海も感極まったように彼を抱きしめる
生きる意味は見いだせなくても、彼の生かされた命が何の意味も無かった訳では無いのだと伝わってくるようだった



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