ヌシの悩み解決編と鋼人七瀬導入編が同時に描かれる回
怪異と現実が織り交ぜられていることで、現実に対して虚構を用いて推理する琴子のスタンスが際立っているように思えた
事件の真相を琴子は浮遊霊を通じて知っていた。本作が通常の推理モノであれば、その真実を懇切丁寧に話してヌシを納得させる展開になるかもしれない
けれど、琴子は秩序を重視する
地位有る存在を無理に納得させるのではなく、ヌシが『納得したい』虚構を信じさせる
それは嘘とか屁理屈と言われるかもしれないが、琴子の虚構によって傷つく者は居ない
あやかしであるヌシが事件関係者と関わることはなく、犯人の知らぬ所で行われている、推理の要である嬰児の死体が見つかることもない
虚構によって全てを丸く収め、琴子の望む場所に話を収めている
琴子は同様の手法を九郎に対しても使う
九郎は琴子と付き合う気はない。けれど九郎が心配しているのを良いことに琴子は言質をとって「付き合うのを認めましたね」と突きつける
九郎の言葉は別に琴子との交際を強く意識したものではないけど、琴子は望む虚構によって現実を塗り潰している
対して河童に出会って以来、現実が破壊されたままの紗季は鋼人七瀬の話に上手く向き合えない
鋼人七瀬を本物と受け止めつつ、取り繕った偽の証言を調書に採用してしまう
また、鋼人七瀬を何かを隠す為の囮と受け止める寺田を納得させる言葉を言えない。虚構も現実も告げられない
あやかしの世界に生き現実の問題を解決する琴子、現実の世界に行きあやかしと向き合えない紗季。この二人の出会いを通して鋼人七瀬という怪異事件への対応がどの様に描かれていくのか楽しみだ