前回、鋼人七瀬を倒す為に人々を合理的解釈で納得させる手法が示された
それが寺田の死によって時間的な制約がつくと共に整合性を取るハードルが凄まじく上がってしまう
人はどうしても衝撃的な真相や「もしかしたら」というものを想像してしまうし期待してしまう。紗季が馬鹿な質問と言いつつ寺田が幽霊になっていやしないかと期待していたように
そういった想像や期待は簡単に止められるものではない。止めようと思えば反論が不可能な別の真相をぶち当てるしか無い
そうまでしないと人々は想像や期待が思い違いであったと納得しない
琴子は事件の真相を目撃者を介して知っている。それでも合理的虚構を求める彼女はただ真相を求めるには不要である情報さえも知ろうとする
そうすることで真相とは異なる虚構を組み上げることが出来る
紗季が呆れているようにこれは最早推理ではなくトンチだね(笑)
でも、真相を求めるのでなければ可能になる方法がある。それが九郎の示した真実の積み重ねだね
何も一度に万人を納得させる必要はない。万人のそれぞれが最終的に納得できるなら偽りの真相は一つである必要性はない
分割された虚構はそれぞれにとって納得できる真相へと構築されていくわけだ
本作も役割の分割が行われ、それぞれがそれぞれの立場で必要な行動をとってきた
探偵役の琴子は事件の解決策を推理し、助手兼彼氏の九郎は鋼人と戦いつつも琴子を支えたり。紗季は探偵と警察を繋ぐ役として琴子に情報を。寺田は怪異を信じない者として現実的な手法で鋼人と対峙した
それらが最終的に鋼人を倒す虚構へ繋がっていく
そもそも、今回の九郎の行動は何かと琴子を支える描写が目立つ
琴子の前では嫌そうな顔を隠さない彼だけど、疲れている琴子にチョコを差し入れ、琴子がだらしない格好をしていても何も言わず、紗季の来訪時にも琴子が身繕いをするまで待った
何よりも琴子に最後の閃きを与え、彼女が寝た後には鋼人と対決する算段を立てた
彼氏として立派な振る舞いだね
そうこうしつつ物語は最終局面に入るわけだけど、そんな鋼人との対決前に示されるのは黒幕である六花の事情
ここまで伏されてきた九郎の従姉の存在は物語に別種のスパイスを加えることになりそうだ