正義に固執する少年衛宮士郎と囚われの少女間桐桜を圧倒的な映像美で描いた物語。Fateシリーズに触れるのは随分久しぶり
この章は導入部分でもあるためか、物語の芯の部分はあまり描かれず。これまでも幾つものパターンで描かれてきた聖杯戦争を舞台としつつも影に潜む者達の暗躍によって歪んだ聖杯戦争となっていく様子が描かれている
英霊たちのバトル描写を楽しむ流れは以前のUBWを思わせる要素があるからこそ、英霊たちの戦いが「影」によって穢されていく描写は何とも辛い。Fateシリーズに思い入れがあればあるほど、心に響いてくるだろうね
そういった展開の中で最も印象的なのは士郎にとって桜が暖かい家の比喩的存在になっていく様子
切嗣によって引き取られながらも唯一の家族である切嗣を亡くしてしまった士郎。面倒を見てくれる藤姉はいてもやはり彼は孤独。だったのに押しかけるようにして桜が現れて、いつの間にか桜がいる生活が当たり前のようになってしまった。合鍵を渡す形で桜を家に居て当然の存在と定義する流れは良いね
桜を気にかけ受け入れている士郎だから、その兄貴の間桐慎二には思う所がある。そして慎二は慎二で弓道において自分より優れた成績を修めながらも執着無く去っていった士郎にコンプレックスがある。そういった関係性なのに、士郎は慎二に対しても善人面をしてしまうのだから慎二としては堪ったもんじゃないよなぁ……
聖杯戦争が始まった辺りから慎二は行動が過激になっていくのだけど、それって少なからず士郎が理由になってるように見える
でも、そのような状況になっても士郎が慎二に目を向ける理由は聖杯戦争に参加するマスターだからではなく、桜の兄貴だからという辺り慎二は更に歪んでいきそう。そして慎二の歪みがまっさきに向けられるのが桜であるという理不尽
一方で見えてくるのは桜の士郎への信頼と依存。士郎の家を訪れ始めた当初は暗い表情ばかりだった少女が士郎との触れ合いを通して徐々に明るい表情になっていき、幾つかのシーンでは普通の少女のような表情をする風景は見もの。また、最初は服を綺麗に畳むことさえ出来なかったのにいつの間にか上手になり、料理にも積極的になった。それらの変化が何よりも桜が衛宮家で過ごした時間の長さを表している
一緒に過ごした時間が長いということは一緒にいることが当たり前になってきたという意味でも有って。士郎によって提案される桜を家に泊める展開。これはちょっと驚かされる部分もあるけれど、両者にとってこの提案が素っ頓狂なものとして扱われないのはそれだけの蓄積があるからなんだよね
「もしわたしが悪い人になったら……」という日常ではあまり聞かない言葉を使った桜。彼女が抱える闇に対して正義を志す士郎は何処まで立ち向かえるのか、今後のストーリーが気になりますよ?
事態は混迷を深め、士郎の隣からセイバーは居なくなってしまった。それでも士郎の帰りを待ってくれていた桜の存在には士郎だけでなく視聴者まで癒やされてしまうね
でも、先の展開を思うと……