あれだけの拒絶と否定をされ、なおスピアヘッドの隣に立とうとしたレーナの覚悟には驚かされる……
レーナと86達の間には幾つもの隔絶が有った。それを乗り越える為にレーナが無意識の内に自分に設けていた壁すら取っ払ってしまう展開はクライマックス感があるね
レーナは道理を説いて86への非道を辞めさせようとした。けれど、共和国やレーナ自身に存在する無知が道理を通さなかった
ならレーナが道理を守る理由なんて何もない。失明の危険や無許可の迎撃砲、アンリエッタへの脅迫。とんでもなく馬鹿な行動だらけだけど、その馬鹿さは蔑まれる馬鹿さではなく誰かを救う本物の馬鹿となる
レーナが道理を破った事を起点に他の道理が破られる展開は爽快
ショーレイはシンエイへの殺意を滾らせていた。だからシンエイも殺意を向け返し、それが二人の中での道理となった
けれど砲弾から弟を守る兄となった事で道理は崩れ、殺し合いは弔いとなった
ショーレイを殺していたらシンエイは泣けなかった。兄として弔ったから顔や声を思い出し、そして泣くことが出来たのだろうね
隔絶を越え道理が崩れたレーナとシンエイ達の遣り取りは非常に穏やかなものとなったね
近くに居ないけど顔を書いたメモを並べた事でまるで向き合って会話しているかのよう
ただ、そこまで両者の関係が進展しても越えられなかった隔絶。どれだけ心が近くなったとしても両者はとても離れた場所にいるという物理的な隔絶は越えられない
シンエイ達は生き残って自由となり戦場の外へ旅立った。けれど、国という壁を越えられなかったレーナ置いてかれてしまう
ハッピーエンドの筈なのにどこか遣り切れないビターエンド
遠くにいる彼らの会話にレーナは混ざることは出来ず、どれだけ走っても追いつく事は出来ない。「先に行きます」という言葉を受けたレーナがこれから破らなければならない道理はどれ程存在するのだろう……