平家の中心である平清盛の死。平家の凋落がここから本格的に始まる事を思えば歴史の分岐点になった瞬間と言える
だからか皆して未来を見ようとしている。未来の不確かさに恐れる者、迫る未来へ覚悟を決める者。でも、それによって未来が変わる事はないという事実が何よりも残酷に思えた
未来の残酷さからは清盛も逃れられない
支配者であった清盛にとって予想できない未来は「面白いもの」だった。でも頼朝の動向も南都の反抗も予想出来ない上に「面白くない」
東大寺焼失は一瞬面白く感じたものの、それによる祟りがあるかもという未来は面白くない
また、源氏打倒の未来を楽しめる事もない
上皇の危篤に際して、徳子に明るい未来を用意しようとした清盛・時子。けれど高倉上皇の愛を知った徳子にとっては暗い未来。それは初の逆らい、道具からの脱却となり、自分の生きる意味を実感する未来へ繋がる
ただ、亡くなった上皇への愛に生きるという事は過去に生きるという意味でもあり…。なのに、びわには見える過去の存在が徳子に見えないというのは少し残酷だ
未来を見る面々の中で維盛だけは未来を全く想像できず声を荒げる。「先が見えたってきっと何も出来ませぬ」と言われた維盛はあの瞬間に辿り着く未来すら無くしたのかもしれない
そして平家の未来を想像する資盛の言葉が……!
未来と過去を見るびわが平家から離れた事は平家にとって何を意味するのか……
それにしても清盛の遺言は印象的なものだったな
多くの平家作品において、「頼朝の首」発言は清盛のクライマックスとして扱われているように思う
けれど本作ではそれを扱いつつも、最後の言葉として徳子を想う父親としての言葉を示したのは意外だった
そういった点からは本作を軍記物よりも人間の物語として描こうとしているのだと伝わってくるね