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全体
普通
映像
とても良い
キャラクター
普通
ストーリー
普通
音楽
良い

まず言及したくなるのは圧倒的美麗な背景美術かな。新海誠作品と言えばと真っ先に言及したくなるくらいに奥行きと静謐さを備えた背景の数々には毎度感心するね
新海誠作品の鑑賞といえば『秒速5センチメートル』以来な気がするのだけど、それでも鑑賞早々にこれぞ新海誠作品!と思えるのは先述の部分が徹底されているからなんだろうなぁ

内容としては各地に出現する災いの元となる扉を閉じる前半部と、大切な人を取り戻す故郷への旅となる後半部に分かれていた印象

前半部は判りやすく危機感を煽るミミズに対応しつつ草太を椅子に変えたダイジンを追うエンタメ性の高いパート。けど災いが発生する度に鳴り響くアラートや鈴芽の目に映り込む災いの赤は日常を歪ませるモチーフとして徹底されているね
人々を守る装置である緊急地震速報のアラート、けれど作中で描かれるように鳴り響いた瞬間はビクッとしてもすぐ「なぁんだビックリした(笑)」みたいに遣り過してしまう。
でも常世が見える鈴芽と草太だけはそのアラートに別の意味を見出す。そんな二人は現し世と異なる世に身を置きかけた人間と言えるのかな
だから災いから守るべき現し世の住民達との触れ合いが鈴芽に自分が何を守っているのかと指し示すわけだね。彼女らに助けられる事はそのまま助ける人々の温もりを知る事に他ならない

ただ、そういった触れ合いの中で鈴芽にとって最も特別となる対象が草太ですか。最初は一目惚れだったかもしれない。眼の前のトラブルに首を突っ込んでしまった結果の関わりかもしれない
それでも特別な仕事を一緒にし、多くを守る中で彼の存在も大切で特別な存在へ成っていったと……

だから雰囲気が一転する後半部は大切な人を取り戻す旅
後半部にて作中で指摘されては居ないけど存在する要石の役割を誰が担うかという問題。大切な一人の命と見知らぬ数百万の命どちらを優先する?といった天秤。鈴芽がノータイムで草太が大事と考えているから表沙汰にならないのだけど
あの時の鈴芽にとっては草太が大事。それこそ自身を心配する叔母を振り切っても故郷へ向かおうとしたくらいに

そうした鈴芽の無茶苦茶さは現し世に身を置いていないだけに、現し世に居る叔母や芹澤に説明できないから共感されない。むしろ当てつけのように現し世に存在する問題を突きつけられてしまうわけだ
あれは左大臣による嫌がらせなのだろうけど、同時に鈴芽が居るべき場所を指し示すものでも有るんだよね
あの時点で鈴芽が草太の代わりに要石になる未来は否定されていたと受け取れる

ただ、草太も鈴芽も要石とならないなら、別の犠牲が必要となるわけで…
この点が先に述べた天秤の問題となってしまう気がするんだよなぁ……。大切な人は犠牲に出来ない。かといって自身を犠牲にする事も否定されてしまった。なら元から犠牲になっていた者が再び犠牲になる他無い
この点はダイジンの印象が前半部と後半部で真逆であり描写不足な為に納得できない部分はあったかも……

さておき、後半部で旅が進むごとにあの大災害の傷痕が。美麗な絵であるが為に現実感を以って描写されていくね
既に過去の事ながら、その傷を持つ鈴芽にとっては過去になりきらない。けれど記憶に蓋をしていたから悲しみと向き合えない。向き合うきっかけとなったのは大切な存在の為だったという点は、人は一人で生きているわけではなく助けが有って生きていると暗示しているような…

「死ぬのは怖くない!」と吠えていた少女は常世にて死を悲しむ幼い少女に未来の尊さを説いた。それこそが鈴芽が旅の中で手にした成長であり明日への希望なのだろうと思えるラストシーンでしたよ



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