演技と朗読は微妙に異なるもの
舞台を動き回る必要はないが、棒立ちが許されるわけではない。自分の言葉を相手へどのように届けるか、また自分はどのように言葉を発するかが焦点となる。それはまさしく自己表現だね。朗読を通して花奈という人間が他者へと伝わっていく
花奈は当初からその才能の蕾を持ち合わせている。それ故に彼女は朗読を通して何者になりたかったのかという点が彼女を理解する入り口となるのかな?
花奈の朗読を聴き放送部に勧誘する瑞希の行為はいわば眠る才能をを拾い上げるようなもの。それによって燻っていた者が活躍の舞台を得るのは物語の始まりを感じさせる流れ。対して花奈は言い訳を使い誘いを断る
放送部に入りたくない訳ではなく、環境が彼女に花咲く事を許さぬ意識を植え付けていた
最終便の時刻も朗読会を喜んでくれる人達も、大人や子供達からの評判も。また、人が少なく狭い島は彼女に我を通せぬ要因ともなったのかもしれない
瑞希は彼女の才を花開かせようとする。けれど、勧誘しても詩を聞かせても近づいても彼女は自分を咲かせはしない
けど、咲かないからといって咲きたくないとまで思っているわけではなくて
海を前に朗々と詠み上げた花奈は誰に何を届けようとしたのか?何の為に言葉を紡いだのか?
まさしく朗読の最後にあったように修羅と化していたのではないかと思えてしまう。自分を阻害する何者をも打ち破り己の思うが儘に蹂躙する修羅に
花奈は自身を花咲く事を許されない者だと捉えていたようだが、その一方で己を花咲かせようと藻掻いてた。だからといって一人で勝手に咲けやしない。そんな必死の願いを瑞希が聞き叶えるシーンは解放感に満ち溢れたものに思えましたよ
早くも本作への期待が更に増す初回となったね