TVシリーズにてまことの話がある程度の決着を見ていたとはいえ、ここまでガッツリと咲の話になるとは少し驚き
まこととは違う方向性から自分だけの特別を求めた彼女、そこに至る足掻きは彼女自身の問題に留まらず家族との深い繋がりすら左右するものだから容易な判断を許してくれない。また、そこに咲自身の望みを言えない傾向が拍車を掛けて迷いの打破を難しくしていたね
咲に訪れた難しい進路選択はどちらが正しいという趣旨で選べないもの。父か母か、咲の意志を尊重しているようでいて実態はほぼ無視している二者択一は自分の意志で選ぶ事を不得手とする彼女にとってあまりに難しいもの
また、その選択を容易とさせない要素が彼女は両親の全てを知っている訳では無いという点でもあるね。本当の鯨を知らなかったように、時には父だって仕事よりも自分を優先してくれると知らなかった。母の家を訪れた事が無かったように、現在の母がどのような暮らしをしているかを知らなかった
自分が無知であり、特別と思っていたものが特別ではないと突きつけて来る真実は余計に選択を難しくさせる
そんな咲に対して、これまで寄り添ってきたまことや竜二に何を出来るかと云うと、過度に踏み込んだりしなかったのは印象的。というか、ここでも咲の自分の意志を発揮し辛い素質が助けを求められない状態へと押し固めてしまう
打開策は咲自身が見出すしか無いのか、と危惧していた辺りで彼女の友人である佳奈子や美代が咲の悩みを引き出す展開は想像の外からやって来るような展開だったかも。あの二人って咲の友人として前々から登場していたけど、まことや竜二との接点が無いから物語への絡みがなかった。マイノリティを扱う本作にて、そういった要素も接点もない彼女らがこれまで重要な役どころを担う事もなかっただけに私の中での印象も薄かったのだけど、彼女らって実は咲の祖母に次ぐくらいの距離感で咲を見続けてきた人間と言えるんだよね
だから咲から本心を引き出すには強引にでも踏み込まなければならないと判っていたんだろうなぁ…。ただ、その後の解決策まで強引だったのはすげぇ…となってしまったが
こう書くと、自力で決断できなかった咲に落ち度が有ったように思えてしまうけれど、そもそも体調面に不安のある祖母と二人暮らしをしている少女に突然、父か母か?なんて選択を突きつける周囲の大人の方が可怪しい
母親の無理解に直面していたまことが、親と向き合い直す事で事態打開を図れたのが珍しいくらいの話で
けど、まことだって最初からそのような力が有ったわけじゃなくて、咲と接する中で又は竜二と衝突する中で身につけた力。ならば咲だってまことや竜二と接する中で手に入るかもしれない
その為に必要だったのが恋敵のような竜二と何でもない時間を過ごす事で、まことの告白を受け止める事で。彼女にとって家族の問題を乗り越える事とまことや竜二とどのような関係を築きたいかという将来は繋がった進路選択だったと言えるのだろうね
二者択一の選択肢から自分が望んだ道を選び取った咲の笑顔はとても朗らかなものでしたよ
また、星を見上げに行ったのに曇り空でも何だかんだ楽しい思い出になるし、その後に続く晴れの日を期待できる恋人や友人が隣に居る3人の様子にはこちらまで温かな気持ちとなれるラストでしたよ