鑑賞するにあたってTVシリーズを見返したりとかしなかったため、何処がTVシリーズから削れられて、何処が新規カットだったかは明確には判らず
けど、その分だけ本作の物語にどっぷり浸れたように思えたな。そして総集編の形で見返した事により、この最終楽章において何がテーマとなり、何が久美子達に課題として突きつけられたかが改めて感じ取れたような
冒頭はあすかを見送り、そして託されるシーンから
黄前久美子という人物は高校に入った当初から吹奏楽へのやる気に満ちていたわけではなかった。流れ流れて、その内に覚悟を持って向き合うようになった。その中で“死ぬほど悔しい”という感情を身につけながら
だからか、部長の座に就任した件もどちらかといえば流れ流れて。率先して部長をやると決めていなかった彼女には年度当初のイベントはどれもこれも大役、精神を削るもの
でも、久美子の良い点は最初は出来上がっていなくても向き合っている内に形が整っていく点だね。序盤は先輩達がしてきた事をなぞる様に部員達に向き合った。しかし、部長やドラムメジャーとして行った指導や判断により1年生達が挫けそうになった時、彼女は北宇治高校吹奏楽部の部長として遂に整うね
晴香や優子とは違う、けれどれっきとした黄前部長として部の皆と向き合う覚悟ができた。彼女は難題と向き合う中で皆を率いる部長として成長していくのだと感じられる
だとしたら転入生としてやって来た真由は様々な意味で皆の中に含まれ難い人物というのも見えてくる
部長としての大仕事、部の目標をどうするかと決めるシーン。彼女は祈るように全員一致の目標と出来るかを部員に問うたわけだけど、その“皆”の中に真由は居なかった
勿論、彼女はあれだけの練習量に付いてこれるわけだから、『全国大会金賞』の目標に異論があるわけないだろうが、兎に角真由は“皆”の中に居なかった
また、その後も転入生である為に制服も異なれば、リボンの色も異なり、ジャージのデザインも異なる。極めつけはユーフォニアムの色が彼女だけ銀色、視覚的な違いはどうしても意識に紛れ込む。それらに加えて彼女は「たかが部活」なんて思想の違いまで見せてしまった。どうしたって黒江真由の異物感は強くなってしまう
この異物感に対して特に吹部の面々も低音パートも拒絶しているわけではないし、久美子だって好意的に接している。けど、久美子から無意識的に漏れるのは真由への拒絶感。難しいのは黄前久美子という存在は吹部の部長であるから、彼女の意思は時に部を代表したものに成りかねない点
久美子は真由への拒絶を表明しているわけではない。けど無意識の苦手意識は彼女が部に混ざりきるのを難しくする。結果、真由は部への溶け込みが難しくなり、余計に久美子へと赦しを求めるようになる
でも、表面的には真由を拒絶しているわけではない久美子は真由への対処ができないまま。そうして迎えたのが関西大会を控えたオーディション結果か……
あの瞬間から始まる部内の不穏さやバラバラ感は久美子が気付けていなかった部内の不調和音が原因。けど、それに事前に対処できたかと言えば、あの局面で対処方針を巡って幹部会までもがバラバラになったように、最適解なんて事前に求められるものではなかったんだよね
ここでかつてのリーダー格であり、今は部を外から見遣れる先人が登場するのは感無量の心地になる。特にあすかが滝先生を「滝さん」と呼んでいたのは印象的。見る視点が異なれば、得られる解釈も異なってくる
そうして行われたのは再度の目標設定。今度こそ場には真由も含まれるから、彼女は阻害されること無く北宇治が目指す方針に混ざれる。彼女はあの瞬間、異物ではなくなる。行き当たりばったり感があろうとも久美子の真骨頂が示されるとても良いシーン
ただ、それはあくまで一時的な話で。結局、この前編において久美子は真由の内心にも、そして真由に接する際の自身の内心にも踏み込めなかった。そうして陥った悩みの極地がおそらく後編にて描かれるだろうあのシーンへ集約されるかと思うと期待半分・緊張半分な気分ですよ……!
演奏を主題とした本作、特に京アニが制作しているのだから映像面でも音響面でも凄まじい物がスクリーンに映し出されるのだろうと身構えて鑑賞したのだけど、こちらの期待を裏切らない高品質な作品を提供してくれたね
映像面の美しさは言わずもがな。舞台となった京都の街並みをまるでそれ一つで芸術作品となりそうな美しさで描き出してくれたね。そうしてスクリーンに映し出された背景は鳴り響く音楽をとても効果的に支えていたな
音響面は様々なこだわりを感じられたね。特に久美子がユーフォニアムを演奏する際に、ピストンを押し込む音まで収録しているなんてこだわりが強すぎて驚かされるよね。当然のように吹き込む息も収録されている
それらは彼女らの演奏を実在性あるものとして描き出す為の一助。彼女らが用いる楽器は鳴らせば音が流れる器ではなく、息を吹き込み、ピストンを操作し、精密な扱いをして初めて音が鳴り響くものだと伝わってくる
そうした表現にこだわって制作された作品だから、終盤の関西大会における演奏シーンが際立って感じられたね。あのシーン、音の粒が感じられるだけでなく、音によって空間が震える様子まで感じ取れるように思えたからね。こだわりの強さに拠って実現したとても素晴らしい演奏シーンであるように思えたよ
前編を見て予想外だったのは総集編として扱った話数か。前編・後編という枠組みなのだから前編では半分程度を扱うのかなと思いきや、まさかのTVシリーズ10話くらいまで収録してしまったよ…
全国大会での演奏シーン増量は当然として、まさかあのオーディションシーンを増量するのか、それとも別の仕掛けがあるのか?
最終楽章の後編という本当の終わりを様々に想像しつつ、その時をゆっくりじっくりと迎えたい心地ですよ