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全体
とても良い
映像
とても良い
キャラクター
とても良い
ストーリー
とても良い
音楽
とても良い

前編で随分豪快にエピソードを消化したな、なんて思ってしまったものだけど、こうして後編を鑑賞すると、前編と後編で役割を分担していたのだなと思える
前編はいわば部の経営、新人部長・久美子が先輩達の遣り方を始めは踏襲しつつ、立ち行かなくなった時に自分なりの遣り方を模索して、更に全国金賞を採る為に強豪の遣り方を導入して波乱が起き…
全国行きが決まった後の後編は様々な自我が入り混じる話となったような

全国出場という輝かしい成績を掴んだ久美子が部活動とは別枠で直面するのは己の進路。部活で忙しいからと後回しにできても、部活に関わりなく訪れる締め切りに彼女は辟易するしかない
但し、親友の麗奈は部活動の先にあるものとして音大を目指しているし、久美子にも目指して欲しいと考える。何故なら麗奈の自我にとって久美子は分かち難い存在だから
その点は久美子も同じ筈なのに音大がしっくり来ないのは彼女の自我が麗奈だけで構築されている訳ではない点を示唆しているね

こうした傾向は真由との対話においても垣間見られるかな
真由は全国大会を前にしても重ねて久美子に「自分がソロを吹いてもいいのか、辞退しようか?」と投げ掛ける。この問いに対して、実は久美子は正しく向き合えていなかった点が見えてくる構成は秀逸
部長としての久美子は真由に実力主義を求め、辞退する必要なんて無いと断り続ける。でも真由が見ている久美子の本心(自我)は別に在る。仲の良い麗奈と共にソロを吹くと決意を持ち話す様子を見て、久美子はどうしてもソロを吹きたいのだと捉えている。部長である久美子を押し退ければ部にとって宜しくないと考えるから真由は久美子に促し続ける。でも、久美子は己の恐怖心に気付かぬままでいたいから真由の前でそうした自我は出さない。部長としての自我で応対し続ける
そうした擦れ違いが余計に二人を拗らせる

擦れ違いが解消へと向かうのは久美子が真由の中に自身に繋がる自我を見出した為か
自分がかつてオーディションで選ばれた事で人間関係にショックが起きたように、真由もそうしたショッキングな経験から避けようとしているのだと察した。同時に彼女は全国大会金賞に向けて手を抜けない人物とも判る。その2点は久美子と共通する自我、真由は異星からやって来た宇宙人などではなく等身大のユーフォニアム奏者なのだと久美子は己の自我を通して理解したわけだ

久美子の自我の成長は真由との関係以外にも見て取れるね
進路に悩んでいた彼女は自分が進むべき正しい道が見えていなかった。だから友達が進路を定められても何も決められない。けど、久美子の定める遣り方は角張った遣り方などではなく。みぞれの言葉は久美子の自我を確固たるものにするね。考えて得た道を己とするのではなく感じ得た道を己とする
だからか、周囲の者達は「そうなると思った」なんて、久美子の選択をイメージした通りと納得するのだろうし

そして久美子の自我の成長が最も見られたのがあの再オーディションか。テレビ放送時はあまりに衝撃的な事態を受け止めるだけで一杯一杯になったあのシーン。結果が判った上で改めて鑑賞するとあのシーンには様々な視点があったのだと思えたよ
一時は部長の在り方で少しギクシャクした麗奈と久美子だけど、1年次から2人は分かち難い間柄として互いを欲している。だから麗奈は進路が分かれる事に過剰反応するし、久美子は進路が分かれても変わらないと確信している。二人は意思を同じくしたまま道を共に歩んでいけると判る。二人の自我は通じ合っている
だからあのオーディションシーンもそういう事なのだろうな。テレビ放送時は麗奈が真由のユーフォを選んだと軽く考えていたのだけど、大吉山での大泣きに現れているようにあの決断は久美子も参画した、同じ判断だったのだと伝わって来たよ。麗奈が久美子を裏切り真由をソリストに選んだのではなく、あの場に居た久美子も真由こそソリストに相応しいと感じたから、通じ合った自我によりソリスト選びに挑んだ二人は真由を選出するわけだ

真由の選出に久美子も参加していたと思えば、直後のシーンについても新たな解釈が出来るような
3年時の久美子は部長として幾つもの難題に立ち向かってきた。その中で失敗もあったし、何とかやれたという成功もあった。そうした果てにあった再オーディションは彼女の集大成、部員に比較させる遣り方に抜かりが無いよう調整するし、決定後にざわつく部員達に向かって“正しさ”も説く。あの瞬間、久美子の自我は北宇治吹奏楽部に溶け込み、そして北宇治吹奏楽部の自我は一体化したのだと感じられたな。久美子の演説があの場面において何よりも必要であり、何よりも正しく、そして何よりも真由を北宇治吹奏楽部の自我に迎え入れてくれるもの
あの瞬間に全国大会金賞へ向けての意思統一が本当の意味で計られたのだと感じられたな

だから、以降のシーンって余韻みたいなものかもしれず
『響け!ユーフォニアム』シリーズ劇場作における決めの演奏シーンって演奏者の手元や顔をしっかり映してきた印象があるのだけど、今回は別の手法を用いているね。テレビ放送版の拡大版、回想シーンや北宇治の生徒達のこれまでを描くやり方に
全国大会で金賞を目指す演奏を本シリーズの集大成として扱いつつ、一体化された北宇治吹奏楽部の自我を今だけのものとせず、これまでに奏でてきた生徒達の演奏をも一体化した自我、つまりは北宇治吹奏楽部に関わって来た者達が居るから、このような素晴らしい演奏が奏でられている、誰が欠けても実現しなかった未来と主張しているように思えてしまったよ
あの金賞は久美子世代の演奏が表彰されたという意味に留まらず、時間を掛けて育てられてきた北宇治吹奏楽部という存在を表彰しているのだと実感できる…

もう一つの余韻は全国大会が終わった後
吹奏楽に3年間を懸けた久美子として全国大会金賞は集大成であり到達点だけど、その後も彼女の人生は等速で進んでいく。そうした描写の中に美しさを覚えてしまったな
学校を卒業すれば準備室から楽器を持ち出す事なんてもうない。楽器等と共に卒業するなんて出来ない。だから彼女はあすかから受け継いだ楽譜も不要となってしまうが、だからこそ後輩へと託せる。それこそが久美子が吹奏楽部に残した自我であり受け継がれる北宇治の伝統となる。代わりに北宇治から持ち出した自我は友人達との絆、麗奈達との関係は学校を卒業しても変えたくないと誓い合う
北宇治で学ぶ内に育まれた久美子の自我は様々な形で彼女の中に留まり、外に向けられ、大きく広がっていくのだろうと思える良いシーンでしたよ

テレビ放送版と異なり、大人となった久美子の描写は限定的。けれど、桜の木が育ち、彼女が残した楽譜が多くの生徒によって紡がれていくと知れた点は久美子達の世代が大会で金賞を受賞した以上の何かを部に残し、そして鑑賞した私達の心に何かを与えてくれたのではないかと、そう思える程の素晴らしい終幕でしたよ……

本作の音響面は素晴らしい点は既に前編の感想で述べていて、後編でも変わらない感想なのだけど、後編だと改めて演者さん達の演技も素晴らしいなと思ってしまったり
聞いていて思わず鳥肌が立ってしまうような、感極まってしまうような台詞なんて幾つもあったからね。繊細な楽器音響に負けないくらい、演者達も繊細な心情を抜群に表現しきっていた
また、背景美術や楽器表現も素晴らしい物ばかり。何度も感嘆してしまったし

このような力点の置き方が感じられるのは本作が生半可な作品などでは決してなく、関わる誰もが全力を傾けたくなる名作だからだと伝わってくるし、この最終楽章に向けて一切の手抜きなど許されないのだという覚悟も伝わってくる
そうした全力が籠められた本作を鑑賞したからこそ、鑑賞直後の感動なんて本当に深いものとなった

改めて、このような素晴らしい作品に出会えた事に幸福を覚え、そして出会わせてくれた製作スタッフの皆様には感謝を捧げたくなる、そんな逸品でしたよ!



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