本人にはどうしようもない残酷な境遇に立ち向かう二人の物語と見せかけて、ラストにまた別の残酷さが顔を見せる構成が堪らない
千雪が夢見るパリコレに出るには高身長が要求されるが、今の身長では無理だしこれから伸びる余地はない。つまり、千雪の夢への道は既に閉じている
なら、後はいつ諦めるかという問題だけ。そういった意味では父や雫の温情は千雪に無理な現実を受け入れさせるためのもの
けれど、逆境に負けず足掻き続ける千雪の姿勢は良いね
だからといって「諦められない人」に理解が有るわけではないのだけど。
逆境の中で夢を目指そうとする育人に無理だと告げる千雪の言葉はそのまま自分に返ってくる
育人が受けた辛辣さは千雪が受けた辛辣さと同一
そういった意味では育人との会話は千雪に夢を諦めさせる踏ん切りとなるはずだったのだけど、そうは問屋が卸さず
もう一人の千雪である「ミルネージュ」が存在する限り、千雪に夢を諦めるタイミングなど無く人生が続く限り千雪は夢に向かって進み続けるのだろうね
こうして千雪は育人の繕った服を着て1%の壁をこじ開けたのだけど……
ここに来て雫が言った「ショーモデルの仕事は――服を見せるの」との台詞が活きてくる。千雪をパリコレに飛び立たせるはずの服は育人を舞台に引き上げる為のアイテムとなってしまう
千雪は育人を踏み台に使ったつもりが、育人に踏み台にされ、物語の主役すら譲り渡すことになった。
この主人公交代のギミックが今後物語にどのように影響してくるのか、そして千雪が再び物語主役の座を奪い返す日は来るのか。ワクワクしながら見守りたい