欠くことのできない勇士を3人も行動不能にしてしまったことで、シナリオが行き詰まった。過去の英雄たちの不在で、主役に繰り上げられた整合騎士たちでは、派手な戦闘シーンを繰り広げたところで、体制を支えきれないだろう。前作の本編や設定資料を見た印象では、ユージオとカーディナル抜きでアンダーワールドの混迷を収束するのは不可能、という実態が浮かんでくる。
SAOはキャラ売り作品であり、一部の人気キャラクターが売り上げのほぼ全てを支える構図のコンテンツ群である。第2期あたりまでは、この状態を維持することで業界内の地位を保ったが、劇場版あたりから企画サイドが妙なプライドを出したらしく、それまでの主要なキャラクターを軒並み排除し、キャラクター人気に頼らずともネームバリューで乗り切れると考えたのだと思われる。それが「アリシゼーション」で視聴者が感じた、作り手の(異常なまでの)気負いの原因だろう。結果は見ての通りである。繰り上げ主人公格のアリスは、物言わぬ英雄に泣いてすがり、終盤にアスナとシノンが介入して幕を閉じた。
ストーリーは前作「アリシゼーション」の時点で破綻し、今作の不評は、前作で観客を無視して非道な展開を続けたことで従来のファンが離れており、そのとばっちりを受けたともいえる。これまでの蓄積があるだろうから企画自体が頓挫することはないと思うが、ネームバリューで何でも突破できると思ったら大間違いということだろう。
大義のために闘う側の心理を
汲み取る理解のために一言添えておくと
「主犯格に話し合いは通じない」ということ。
アダムを撃破しなければ、一連の事件は収束しない。
操縦されている者はその限りではないので、
秩序を回復する側がとるべき対応は異なる。
内容もさることながら、内容よりも
企画をめぐるトラブルのほうに話題が集中した。
監督が打ち切りに不満を表明した報道から察するに、
打ち切られたことは事実らしく
監督は雑誌のインタビュー記事で
業界に対する問題提起をしたようだが
おおかたの視聴者は「打ち切りの原因は内容」と捉え、
監督に同調する者はほとんどいないと思われる。
「いかにして視聴者を不快にしてやろうか」とでも
思ってそうな演出に心血を注いだ本作に加え、
被害者意識をにじませたコメントが
メディアに流れる経過がひたすら痛い。
監督は原作・脚本を兼ねており、ブレーキ役がいないことの
弊害を示す例として認識されることになるのではないだろうか。
主人公チームが、試合に向けて奮闘し
試合中も助け合う場面の数々は美しく、
その点は称賛に値するだろう。
公式戦の戦績には疑問がつく。
サンダースは中盤から車輌を大洗と同数にし、
プラウダは大洗の籠城に際し突入を急がず待機、
黒森峰は西住まほが増援を待たず、一騎討ちに臨んだ。
対戦相手が物量作戦や短期決戦を決行していたなら
大洗は負けている可能性が高く
「手加減してもらえたから大洗は優勝できた」という印象が残った。
あるいは、演出上の意図で
あえて「文句のつけようのない勝利」にはしなかったのか、
とも思える。