大喜は突然の演技で雛相手にキャパオーバー気味。けど、所詮は演技だから何をしようと偽物。そこまで気にする必要はないのかもしれない
ただ、クラスメイト達は少しでも真に迫る舞台にしようと、例えば王子の出番を早める等の演出をしている。素晴らしい美術や装飾も同様
だから見る者や関わる者には偽物の筈が本物を模しているなんて受け止められてしまう。いわば友達を恋人に思いかねない状況であれを見せられた千夏は何を思ったのだろうね……
大喜がテンパってしまうのは突然の代役というのもそうだし、友達相手にキスシーンを演じなければならないから。練習時の雛を思い起こしてしまう大喜は偽と真、友達と恋人の境界が揺らぎそうになる
対して雛は流石だね。大喜相手である為に思う処は有るだろうに舞台の成功や大喜の想いを優先して「親友として」なんて言ってしまう
彼女は大喜に恋しているけれど、友達と恋人の境界は揺らいでいない。だからか、彼女の言葉を受けて大喜も舞台への迷いが消えたのだろうね
けれど、親友として偽のままで居られるのは演技中だからで
事故により表出する大喜と雛の関係。それは真に迫るものだから、実際にキスしていなかったとしても、見た者には付き合っていると認識されてしまう。千夏も見た光景から意味を汲み取ってしまう
でも、大喜も雛も親友としてあの舞台に立ったわけで…。それだけに恋人疑惑を否定するのは当然かもしれないけど、大喜に好かれたいと思っている雛にとっては嫌な問答だったろうな……
大喜なりに不満の残る終わり方となってしまった劇、匡相手だから言える愚痴
だからこそ、匡の側も特別な立場として大喜に突っ込んでくれたのは良かったな。ただ、現段階での大喜の答えは揺らがないが、揺らぎの無い答えを返す事で自分の感情を偽から真へと揺り動かないようにしているようにも感じられたけど…
また、大喜が揺らがなかったとしてもあの劇を経た雛や千夏の中に有る友達・恋人の定義が揺らいでしまう事も有り得るような
3人の関係はより危ういバランスとなった。そう考えるならば、ここに来て恋愛観について一端の意見を持つ菖蒲の登場は3人に何を齎すのかな?
今回は此処にいる理由を問い直すような話となった印象。まあ、それで済ませるにしては途中で明かされた秘密がどデカ過ぎたけど
れんげは自分の事情だからと皆に話さず一人で旅立った。でも、そのような旅ははれんげが望んだ旅や在り方ではないから、寂しさは彼女の空腹をより空虚なものとする
同様に寂しさを覚えたからこそ、えりか達がれんげを追って来る構図は王道的ながら良いものだね
すずらんと再会したれんげは、記憶が戻らないままでも姉としての格好を取り戻すね。けれど、そこで知らされたのは自分が死者である可能性。死者であるならば生者のように此処に居るのは正しくない
だからといって、すずらんの前から去るを良しとせず、妹である彼女を守る為に戦うという記憶を失う前と同じ理由で戦場に立つ彼女は、記憶が無くなっても存在理由が変わっていないのだと感じられたよ
同様に変わっていないのがえりか達だね
れんげが自分の事情だからと突き放しても、彼女らは同じチームだからと追ってきた。彼女達の仲は変わらない、れんげと一緒に居る理由が自分達にはあるのだと主張してくれる
一旦は別れてしまうかと思われた友達の輪が再び一つの枠に収まる様子には安心させられるね
ただ、気になるのは死者が蘇るかもしれない可能性。これ、下手したらゆりも蘇る展開があるんじゃなかろうか……
秋山にフォーカスされた今回はドラマ撮影を通して彼の心情を間接的に描きつつ、姉との会話シーンへ集約される良い作りとなっていたね
親の言いなりに成りつつ見えない部分で親の思惑から脱し、花奈と違い好きなものは無いといいつつ花奈と同じように他者に自分を認めさせたいと思っている
幾つもの矛盾を抱える彼はどのような人間なのか、そして彼は何と戦っているのか?容易に本心を明かさない秋山を丁寧に描いた回だと思えたよ
秋山が書き上げたのは己と姉をモデルにした話とすれば印象深いのは、詩人になりたいと言う紬に対する台詞の違いだね
脚本段階では後押ししているようで熱量は曖昧な台詞、けれど真に迫る花奈の詩を聞いて心から生じた感想を発しつつ強く後押しする台詞に。「そう言ってあげたかった」との発言や姉を前にした際の発言からすると、当時は姉の挑戦を応援したい気持ちと姉だけが道を変える選択に納得できない気持ちの矛盾する感情が見えてくる
それを脚本に反映していたのは気持ちの整理が出来ていないからか。姉の通知に反応出来なかったのも同様
そのような脚本を書いたのは、矛盾する感情と戦っていたからなのかな…
傾向を変えられたのは花奈が朗読した事で詩の魅力に改めて気付けたのかな。その瞬間に彼の中で矛盾が氷塊し、純粋に姉を応援したい気持ちが前面に出て、矛盾する感情と戦うのではなく上手く折り合う方針へと舵を切れたのかもしれない
そもそも納得し難い何かがあったとしても、戦う選択ばかりが望ましいとも言えなくて
判り易いシーンは撮影を邪魔する吹奏楽の音か。瑞希は敵だと言っているが、だからと演奏を止めさせようとはしない。冬賀も休憩の合間を縫って撮影しようとする
敵は敵かもしれないが、戦うより折り合う方が良い
今回の秋山は徐々にその傾向が強まる様子が見えるね。主役を宛てられても、演技の挑発をされても戦うのではなく折り合う事でより良いドラマ撮影へと進められた
そうした変化が彼の中で纏まった成長となったからか、矛盾した感情を向けていた姉と再会でき、更には苦手だろう己の心情を吐露する行為へと繋がったのだろうね
主役を宛てられた際や姉を前にした際の仕草からすると、秋山は緊張した瞬間に手が強張ってしまうタイプなのかな?だとすると、以前放送部に入った理由を説明した際の仕草も同傾向のものだったのかもしれない
何はともあれ、秋山は姉や己の感情と和解できた。そのタイミングで現れるのは秋山が天才と褒めた姉が天才と認めた修羅を名に持つ少女
杏は敵だと息巻くけれど、果たして修羅と戦おうとする事は杏や花奈に何を齎すのだろうね?
前回に続き、明確に司とへスポットを当てた回となっているね
実際に滑るのはいのりなのだから彼女の挑戦を中心に見たくなってしまうが、前回にて示されたように彼も遅い挑戦から藻掻き続けて初めての担当生徒であるいのりと向き合っている身
いのりからは頼もしく見えても彼の内面は「これで正しいのか?」と疑問が渦巻いている。だからか、いのりが光や涼佳の出会いにより触発されたように、司も夜鷹や蛇崩との出会いが彼を奮起させるわけだ
一度は出来たジャンプが何故か出来なくなってしまう。スランプ気味のいのりに対して司が求めるのはタブレットでの撮影や蛇崩からのアドバイス。それは間接的に彼の自身の無さ、何がいのりに相応しい言葉か見つけられなくなっていると取れる
そんな指導の下ではいのりは益々不安が満ちてしまうし、そんないのりを前に司も袋小路に入ってしまう
ただ、ここで迷って終わりではなく、自分がいのりを育てるように、いのりに自分は育てられていると気付ける彼の着眼点は素晴らしいもの
先輩コーチである蛇崩は司の先を行く人物。いのりが絵馬のジャンプに感心を覚えたように、司は蛇崩の指導に感心を覚えられると思っている。だから彼のアドバイスを求めた
だというのに彼を前にした時に司が口にしたのは適切な改善点。つまり、彼に指導者人生の中で身に付けるべきは正しい指導法というより、自分の指導を信じる力となるのか
これまではシングルを指導する上では足を引っ張る経歴と思っていたアイスダンスで得た経験がシングルを指導する強みと知れたのは良かったね
司が一つの壁を超える見込みを手にした他方でいのりは新たなライバルと邂逅、初級の大会が終わり1級と成った事で見える世界が広がった形だね
出来る事が増える度、成果を積み上げる度にいのりが立ち向かわなければならない課題は増えていく
だとしたら、大会という大事な場面でキャリーバッグを紛失する冷や汗ものの失敗とて彼女の成長に必要な壁と言えるのかもしれないね
医官以外は薬を作ってはならないという掟破りを知られた猫猫は秘密を握られた形。類似の構図で壬氏の命令に従う運びとなったように深緑の頼みは猫猫に行動理由を与えるものとなるね
けれど、下女としての猫猫以前に、薬師としての猫猫の行動原理は病人の救済。深緑の頼みが感染症絡みなら断る理由もない。壬氏という上下関係とは別の構図から猫猫に依頼が入る事で彼女が何を許せないのかという点が改めて描かれた気がするよ
幾ら怪しさ満点とは言え、上級妃の侍女頭を罰するなんて下女には不可能。しらばっくれられたら壬氏でさえも追求は難しいかもしれない
それでも猫猫が踏み込んだのは下女の命を軽んずる杏の言動を許せないからか
けれど、猫猫では杏を罰せられない。出来るのは彼女が軽んじるものを真に大切に想う者だけ。あの梨花妃が自らの手を使って杏を罰する場面からは彼女の成長や変化を感じてしまいましたよ
もう子を害されても何も出来ない母親では無くなったようで
事件そのものは気持ち良く解決されたが杏がどのようにして堕胎剤の事を知ったかは明らかにされず。またもや小さな謎が残ってしまった形
幾ら真相を推理しても後宮に巣食う悪意はなくならず。そう思ってしまうからこそ、同僚の無事を願って小さな抵抗をしていた下女の優しさが目に留まるラストに思えたよ
愛しているから殺したくなる、なんてハナの人間性は突飛が過ぎて彼女を真っ当だと認識するのを難しくさせる
だから一瞬忘れてしまいそうになるのが彼女は姉を亡くしたばかりの女の子であるという点。また、他のエレメントのように欠けた感情に悩んでいると考えれば、彼女もサッコ達と同じく悩む少年少女であるのだと見えてくる
ハナに対してすらそう思える状況な為か、悩みや欠けが全く見えないサンが不気味過ぎるが……
サンの語る内容は意味不明。後々意味を持ってくるような気もするが、現状では彼と対話を繰り返しても見える事はあまり無い
ならばマシと言えるのはハナとの対話。それを真っ先に行っているのはモモヒメか。殺されかけている彼女はそれだけハナから感情を向けられていると言えるからモモヒメが最も彼女を知る最前線に居る、ハナに憎しみが欠けていると知れる
欠けが見えれば、サッコ達も彼女への理解が進むわけだ
次はサッコがハナを理解する番であり、自分が戦う理由を理解し直す番とも言えるのかな
そのような工程はハナにも戦う理由を身に着けさせるものとなったようで
そんなハナが初戦闘でいきなり合体して敵まで倒すなんて流石だね。ただ、一旦は逃げ出してしまったわけだから、彼女が一人で戦える訳じゃない。それはサッコ達も同様
互いに欠けを持つ少年少女がアクエリオンを通して欠けを埋め合い強大な敵を倒す構図がより明確となったように思えるよ
…それにしても、アクエリオンがキスして敵を倒す必殺技って何だよ…って気持ちも芽生えてしまったんだけどさ(笑)
文化祭特有の空気感が瑞々しさを以て描かれているね
その中では雛は常とは異なる姿となるし、大喜もいつにない反応を見せる
雛周りで何かが起きそうと思わせるのは、両者が普段と全く異なる事をしているから。いつもの雛とはギャップ有る姿はいつになく大喜を照れさせる。だから何か起きそうと思わせる
けれど、今回は大喜と千夏の方が文化祭特有の空気感を醸していたような
文化祭当日でも自主練をする大喜と千夏は通常営業。その動作に垣間見えるはしゃぎようから2人も今日という日を特別に過ごしたいのだという想いが見えはするが…。これは雛との関係のように何かが起きると安直に思える状況というより、自らの意思で何かを起こせる状況といった印象
文化祭でライブを一緒に見に行こうなんて、さり気なく言えばそりゃさり気ない約束。けど、その瞬間に千夏がシュートを外していた事から彼女の心に小さな動揺が有った点が見て取れる。だからこそ、直後の安心した表情が言葉に現れない多くを物語ってくれる
本人達が何を起こしたいかが鍵になるから、千夏が遅れた状況は起こるべき何かが起きなかったではなく幻や勘違いで大喜は済ませようとしてしまう
でも、千夏は息を切らしてあの場に駆けつけたわけで。そう思えば、彼女が演奏中に大喜を誘った理由を明かそうとしたのも彼女なりに大喜へと伝えたい何かがあったのだろうと推測してしまうね
ただし、言葉は音として伝わることはなく。千夏の勇気が途切れたのか、真相が明かされずに焦らされる結果となったのはもどかしい心境と成ってしまうな
にいなの予想、西田の占い…。そうした前フリを経て発生するのは王子役の代役ですか
大喜ってこういう部分での器用さってあまりイメージに無いし、大喜相手だと雛も何処まで演技できるやら怪しい気もするが…
また、今回アオハルな雰囲気を醸し出していた千夏が大喜と雛のキスシーンを見てどのような反応を示すかもちょっと恐ろしい気がしてしまうよ…
他の生存者との接触はえりか達に過去との繋がりを持たせる事になったようで
生きてるなんて思っていなかった友達や家族との再会は彼女らにとって喜ばしいもの。再会の喜びが大きくなるのは相手を過去から知っているからこそ
逆に言えば、記憶も過去も無いれんげにとって懐かしい相手などそもそも居ないというのは悲しいね…。れんげとえりか達は友達になった、そうなれた筈だった。けど、過去からの連なりが異なる為に両者は完全に分かたれてしまったね
その過程でしとろんと会話量が増えるのは、ちょっと意外だったかも
出会ったばかりの彼女もえりか達との過去を持たない人物だからか誰と誰が再会したという話も彼女には関係ない
彼女は彼女であそこに辿り着くまでの過去を、大量の墓を見詰めている。そのように異なる過去を見ている彼女だから示せるのが、れんげの過去に繋がるかもしれないヒントか
えりか達は既に過去を見つけた。だからこそ巻き込む理由が無いれんげの過去探し。このような独断行動は過去がどうのというのとは別の理由での連なりをれんげとえりか達に持たせるものになりそうな予感
杏と秋山は似たタイプかと思っていたけれど、彼の生活の一端が描かれた事で秋山は杏と全く異なる環境に身を置いているのだと知れたね
杏は勝ちを目指す衝動を持っているが故に適正に沿って希望を変えた。対して秋山はそもそも衝動を持っているかさえあやふや。見えるのは彼が親の指導範囲に囚われているという点。ただ、そうなってくると何故放送部に在籍しているのかが判らなくなってくる
彼の心情を探る上で花奈との対比と相似が見える回だと思えたよ
冬賀の主張に現れるように、花奈の決断に現れるように自分の好きを大切にする2人は衝動に従って道を決めている。また、箱山は人に道を強いられながらも、その中で自分の好きを貫こうと努力しているね
そんな3人の遣り方は未熟な部分があるから指導が必要になる。そう考えると吉祥寺の指導は凄まじいものだったね。正直、彼の事は少々信頼できないと思っていたのだけど、Nコンで勝ち抜く方法を示しつつも部員達が志向する遣り方を尊重する指導法には感銘を受けてしまったよ
まあ、吉祥寺がその様子だからこそ、秋山父の酷さが目に付くのだけど
秋山が花奈を取材しようと思ったのは何故だろうね?前回の台詞を聞く限り、好きが明確な花奈と好きを持たないかのような秋山はタイプが異なるように思える。けど、異なるからこそ彼女を知りたくなったのだろうか?
朗読会を主催する花奈と親の方針で動く秋山、両者は異なる遣り方に身を任せているように見えて、「認められたい」という面では共通項が存在した。それは親の方針に従う秋山とて、花奈のように自らの内から湧き出す衝動を持っているのではないか、それの活かし方さえ判れば花奈のように好きの衝動に従って動けるようになるのではないかと示唆するものだね
だとすれば、花奈が親の望みではなく自分の望みとして続けてきた朗読会を秋山が見た事でどのような欲を呼び覚ますのだろうね?
夜鷹への宣戦布告、夜鷹と司にはかなりの実力差が有るんだろうなとぼんやり思っていたら、実力云々以前の別世界レベルだった……。よくもまあ司はオリンピックメダリストを前に啖呵を切れたな…
ただ、彼の過去が描かれた事で見えてくるのは彼が挑戦を辞めなかった人間であり、辞めそうになった時も誰かの応援によって道を切り開けた人間である点か
だから望みが有るなら勇気を持って踏み出す必要も、人は人に助けられて挑戦を続けられるとも知っている。それが無謀な挑戦にも見えるいのりを支えるコーチングへと繋がっているのだろうね
初級の大会が終わった夜に1級の大会を志すいのりは凄いね。しかもその理由が焦りというよりも慢心せず成長する為なのだから尚更
いのりが大人に対して意見表明できるようになったのはいのり自身の成長も有りつつ、やはり司への信頼も強いのだろうな。ならば気になるのはそんないのりが信じる司はどのような成長を遂げて今に至るのか
そうして明かされた彼の過去はいのり以上の難行に溢れ、同時に人の温もりを感じられるものだったよ
やんわりと諦めろと諭す大人達の中で加護一家は様々な面で司の後押しをしてくれる存在。司は一家からの支援を幸運と捉えていたけど、芽衣子にとってはあの瞬間に司と出会えた事こそ幸運だったんだろうと思える
あの時、司は加護一家から応援される存在になった。ただし、司にはその応援が一方的に思えるから、彼らに頼るを良しとしきれない
そのような片道の応援に見えたからこそ、加護一家にとって果敢に挑戦を続ける司の姿に救われていた、彼を応援する行為はwin winだったと知れたのは良かったな
思えば、のぞみもいのりが必死に滑る姿を見て応援する気持ちと大変だけれど楽しい日常を手に入れていた。選手を応援する行為は応援する側にも得が有る現象なのかもしれない
挑戦する司を見て芽衣子が救われる過去があって、今はいのりを指導しつつ困窮する彼を見て再び手助けしたいと加護一家は考える
また、軽やかな滑りを見せるいのりを見て司が感銘を受けた過去が有って、今の司は指導と云う名の応援をいのりに向けている
応援は一方通行ではなく双方向。そう思えばラストにて一緒に優勝の喜びを噛みしめる2人の姿が今回のテーマを象徴していたのかも。実際に滑って優勝したのはいのりだけ。けれど自分事のように喜ぶ司の姿から、選手の頑張りは関わる人全てに喜びを与えるものなのだと思えたよ
やり手婆の話からして眉唾な月精の噂だったけど、猫猫は正しく事実を導き出したね。しかもやり手婆の時は偶然生じたそれを必然的に再現してみせた。彼女の推理力は冴えているね
まあ、今回の殊勲賞はどう考えてもアレな役をこなしてみせた壬氏なんだけどさ(笑) 前々から彼はそのままの姿でも他者を魅了して止まない人間だったけど、猫猫の知恵が加わった事で絶世の美女にすら興味を持たなかった特使をも驚愕させる美を披露するなんてね
ただ、本人的には大変不満な仕事だったっぽいのがほんと笑えてしまうんだけども
お高く止まった特使の鼻を彼女ら以上の美を以て黙らせた猫猫の手腕は見事
けれど、それだって問題とヒントが見え、壬氏からの命令が有ったから成し得た大仕事。だからか猫猫が不気味な状況から勝手に考える上級妃に纏わる陰謀の正体は見えて来ないし、憶測を進めるのも良いと思えない
それは憶測と推測を分けて考えられる猫猫の美点であるのだけど、一方で謎に対して動くには壬氏から与えられる動力が無ければ動けないタイプであるとも示しているね
目に入る諸問題は去り、壬氏からの命令も無い状況では猫猫とて普通の毒見役らしく翡翠宮で勤める日々だからか、これまで気にもしていなかった診療所の存在に気付くというのは何とも抜けている話
けれども、猫猫が褒める診療所の存在は後宮や医官の歪さ、猫猫が薬屋として駆け回る危うさを示唆するものとなったね
猫猫は壬氏の命令により自由自在に動き回る、いわば彼の庇護下にある境遇。だとしたら深緑に猫猫の特異性が知られてしまった事は猫猫や壬氏の関係にどう影響してくるのかな?
本人の心残りがあったとしてもサヨは綺麗に死んだ。そう思っていたからサヨが再び校舎を徘徊する様子には心底驚いてしまったし、その正体がこれまで影も形もなかった妹であった為に尚更吃驚ですよ!
前世という通常有り得ないものに振り回されるサッコ達。今回はより見えないもの、又は見えてはならないものが強調された回となったような
七不思議や転校生の噂に沸き立つ学生達はまさしく対象が見えないから興奮していると言える。でも、見えないとはつまり存在しないとも言えるから、噂はエンタメ的な消費で終止する
一方で見えるなら存在しているという話になるから、サッコ達はサヨの姿や前世の光景に動揺するわけだ
もう一つ今回見えたのは被害規模かな
堕天翅族による襲撃が見えなくなったとしても、亡くなった人の情報は見えたまま。それは敵の存在を知るエレメントに重く伸し掛かる責務となるね
だから上もエレメントの補充を行ったのだろけど…
モモヒメと感応したサンを含めハナもサッコ達の前世に関わりあるのだろうか?また発想も存在も突飛過ぎるハナの思惑から何が見えてくるのだろうね
以前敗れた相手に立ち向かうリベンジマッチは以前から変わった自分を見せ付けるチャンスでもあるね。つまりは以前との比較が行われるという事
大喜の試合を見つめる雛と千夏の2人が思い浮かべるのは試合に至るまでの大喜の姿。同様に大喜自身も遊佐との再戦に辿り着くまでの道のりを思い起こす
そうして、過去を越えて新しい境地へと歩みを進める事こそが、真にリベンジが成し遂げられた瞬間と言えるのかな?
そんな事を思ってしまったよ
雛と千夏の大喜へ向ける印象は異なるものだね
序盤の雛は試合に精神を削られる大喜を見たくないと言う。それまで知っていた大喜と異なっていたから。この試合は更にその傾向を強めるね。
対峙している遊佐が不気味と評する程に試合中に大喜は変貌を遂げる。そんな大喜を雛は全く知らない
けれど、そんな姿に恐れは抱かなっただろう点は去る時の顔色から少し見えるね。彼女にとって知らなかった大喜の姿は新たな魅力と映ったようで
対して、千夏から見ればこの試合の大喜は知っている姿の延長線だったのかな
大喜が千夏の頑張りを見ていたように、千夏は大喜が日々頑張る姿を見ていた。また、大喜と言葉を交わす中で彼の心情も聞き及んでいる
だから試合中の変貌は彼女の目には新たな姿と映らず、むしろ変貌によって手にする勝利を彼の努力が報われた瞬間と捉えられたのだろうね
以前との比較という意味では今回は遊佐の視線がとても印象的
彼が以前戦った時の大喜を何処まで覚えていたかは不明瞭だけど、試合の中で大喜への印象は様変わりしていった筈。だからこそ、遊佐の方から大喜の名を聞いたのだろうし
大喜は遊佐に勝ち、来年のインハイ枠へ少し近づけた形。対して針生はまさかの敗戦…
実力差が従前の通りに進むとは限らないからスポーツは面白い。けれど、ひっくり返る構図は当事者にすれば堪らないもの。大喜が成長を得た事で彼の周囲はかなり刺激的な事になりそうだ
まあ、取り敢えずは刺激的過ぎる夢を見てしまった彼がこれから雛にどういう視線を向けるかが気になるけれども(笑)
人間の実在証明を水着動画によって行おうとするとか、こんな光景を哲学者が見たらどう思うのやら(笑)
頓珍漢すぎる状況はさておき、れんげ達がやろうとしたのは自分達が血の通った人間であると証明する事。その為に水着という要素が適切だったかは微妙だけれど、あまりに考えなしな光景だからこそ、自分は此処に居るという証明へと繋がったのかな?
人間と証明する為に彼女らはそれぞれの得意分野を動画に残そうとするね。そこには彼女達らしさが詰まっている
けど、一人一人が撮った動画で決定的な証明と成り得ないのは、それが個別に撮られたものである為かな
実在証明であるならば、自分は此処に居たと証明しなければいけない。単純な動画ならフェイクで作り出せる世の中で実在を示すには、やはり知っている者同士で映り合うのが一番
実在証明には今居る5人だけでなく、ゆりの実在証明も関わってくる
特にれんげがえりか達と仲良く成れたのはゆりが存在したから。れんげ達5人で撮る動画にはゆりがそこに居たのだという間接的な証明にもなるのかな
どうやら次回ではあの世界で生き残った他の少女達に出会う事になるようで。その中でゆりが生きていた証はどのように作用してくるのだろうね
「好き」という己から湧き出る衝動に従って朗読で読む課題を決めようとする花奈。対して己の声質に合ったアナウンスで勝負しようとする杏
その違いはNコンの目指し方に現れる程度と思っていたら、そもそも行動指針全般に現れる違いであったような
花奈は「好き」を大事にするから杏とも友達になりたい。杏は勝ちにこだわるから部活の皆を競争相手とする
2人の指針はかなり異なる。だからといって判り合えない訳ではないという点も描かれた話となったね
花奈の課題の決め方は瑞希と同じ遣り方となったようで。相手をよく知って、好きになって、それを自分の声で読み上げようと思う
けれど、声質や勝ちを重視する杏は花奈の遣り方を否定するね。アオハルな作品より『変身』の方が合っていると諭す
ただ、こうなると気になるのは杏が花奈にだけ突っ掛かり指針を直そうとする点だね。杏と指針の反りが合わない部員なんて他にも居るのに花奈にだけしつこく声質云々を言うのは杏自身の羨望が含まれていると見れるのかもしれない
何故なら今の杏は適正によって指針を変えてしまった人間だから
杏に理解を示す秋山の素振りにヒントを見出だせるのかな
彼は他人が示す適正によって道を決めた人間でそれに納得した発言をするけれど、その矛盾は冬賀が指摘した通り。その際のドアノブを握る秋山の仕草から彼は何かの想いを握り隠しているのではないかと思えてしまうほど。似た仕草は雨の中で花奈が先輩を強く庇った際にも杏が見せている
花奈は「好き」という己から出た衝動に則って行動している。異なる指針を持ち適正により道を決めた杏の中にだってきっと衝動は有る
ならば、朗読を選べなかった杏に響かせられるのはやはり朗読だけ。朗読を通して杏に響かせたのは杏の心情そのものであり、それに向き合う花奈の在り方そのものかな
ようやく杏が話した敗北感。そこにこそ彼女の衝動が籠められており、また指針決定には彼女の意思が正しく存在していると知れたのは良かったな。指針も遣り方も異なるけれど、望んで道を決めたという点は花奈と同じだから
ちょっと水と油気味な2人だけど、ようやく友達らしくなれたようで微笑ましさを覚えてしまうね
前回のいのりの滑りがあまりに素晴らしかったものだから、後編ではそれ以上のものなんて描かれないだろうと舐めた考えをしていただけにぶっ飛ばされましたよ、本当に……
いのりが優勝するのは納得、涼佳が表彰台に乗ったのも頷ける。でも、そんなのは初級の争いでしか無いと知れる光の演技はいのり達と同次元と考えるなどおこがましい神々しさを持っていたよ……
涼佳が大人を信用しない理由、それは大人から信用されなかった反動
だからか、リンクで失敗した際に鞠緒必死の念も届かない。いのりが司の想像を超えたのに対し、涼佳は鞠緒の想像よりも低く且つ自分の想像に引き摺られ負けてしまった
あのリンクは涼佳の存在意義が否定されるような空間。それだけに、鞠緒が涼佳が否定的に見ざるを得なかった個性をむしろ長所・武器と見たのは驚きかも
涼佳は自分を見捨てた大人を見捨てたかも知れないけれど、そんな涼佳を見捨てずに拾う大人も居たんだねぇ
同じようにいのりだって酷い事を言った涼佳に手を差し伸べてくれる
そうした温かさをぶん殴ってくる光の滑りがエッグい……
いや、目が惹き付けられて離せない演技は心から凄いと思うのだけど、いのりや涼佳の努力感じられる演技の直後に同年代が別次元の滑りを見せてくるとか絶望すら感じてしまう
いのりは涼佳の滑りを見ても、変わらず友達で居て欲しいと自ら手を差し伸べた。それは自分達を同次元と捉えているから。逆に光の「一緒に~」という発言に疑問を覚えてしまう
そう思えば、光との隔絶に直面しても変わらず彼女に追いつこうとするいのりは良いのだけれど、それは夜鷹が言う「知らなすぎる」事なのかも知れず…
ならば頂点を目指すとは何かを「知っている」司がいのりの代わりに応じるしか無いわけだ
ただ、この点もどうなのだろうね…。司は夜鷹に自身を覚えて貰っているだけで少し驚いていた。そのくらいメダリストとそうでない者には隔絶が有るのだろう
同様にいのりよりも早くメダリストを目指し、いのりより高い階級で戦う光は当然いのりと隔絶が有るわけで
現役時代に勝つ見込みなど無かっただろう相手に啖呵を切った司。彼はいのりをメダリストにする為にどれだけの勇気や覚悟を背負えば良いのだろうね?
その人がもう一人存在するかのように錯覚させる美しい姿見。けど、実際は別の姿を隠しているだけかも知れず…
今回の話はそれと同じく整った鏡面の裏に何が隠されているかを探るかのような話となったね
高順が持ってきた謎解きは象徴的。表面だけ聞けば密室トリックっぽい話だが、裏面を覗き込めばきな臭さが垣間見える。けれど、面倒事に首を突っ込まない猫猫だから裏に言及しないだろうと信頼され、取り繕った表向きの謎だけを話されたのだろうね
他方で壬氏は厄介な謎解きの最中のようで
遠方から来た女性大使が望むのは無理難題。50年前に美人だった人物を連れて来いなんて無茶にも程が有る。代わりの美人を用立てるのも難しい
ここにも美人を用意する表の難題と何故そんな要求を?という裏の謎が両立している。また、50年前に舞ったやり手婆もどう成功させるかという表の難題、何故そこまで評価されたのかという裏の謎に直面した
大使がどのような思惑を隠しているかは曖昧なままだから姿も映らない。ただ、猫猫に課せられたのは表の謎解きだけな訳で
猫猫ってば、凄まじい解決策を用意しようとしてる…(笑)
そうか、合体によって互いの欠けを補い合う構図と受け取っていたけど、むしろ互いの欠けを補い合えた状態だからこそ、アクエリオンでの合体が意味を持ってくるのか
流れ込んできた気持ち悪さを伴うマナによってギクシャクしてしまったリミヤとモモヒメ。普通ならそこで距離を置こうとしたって可怪しくないのに、二人は互いを求めた。リミヤはモモヒメの名前を手繰り、モモヒメは彼をデートに誘う
欠けた感情という存在しないものを探る工程は己だけでなく相手をも知る工程となったようで
デートの場所に水族館を選んだモモヒメ、理由は自分が来た事がなかったから。対してリミヤは女子と何度か来ている
その点を恋愛的に見れば、どちらも恋愛感情との相性が悪い来た事がないし、来ても発展しなかったと言える。ならば、そんな2人が水族館に来たって得られる感情が恋愛の訳がなくて
だからって「お姉様」は完全に予想外だったけど。おまけにアクエリオンでハートマーク作ってるし。ただ、これによってリミヤもモモヒメも互いの欠けに納得を得られたのかな
色々とトンチキな展開が多くなってきたけど、これこそアクエリオンって感じがするよ
実力は上がっている筈なのに満足できない大喜の焦りを中心として、現状より更に上を目指そうとする者達が描かれたね
その感覚を向上心として無条件に肯定的な描き方をするのではなく、ネガティブな感情さえも醸し出す焦燥感を思春期特有と表現する事は不適切。そこにはライバルに勝ちたいという競技者として業が見えた気がするよ
焦るあまり褒め言葉も正しく届かない大喜を、似たような焦燥感を経験し今も渦中にいる針生が先達らしく見守っているね
ここで物語を複層的に見せてくれるのは針生が大喜の現状を理解していても、彼の蟠りを解消する為に積極的に絡む事は無い点だね
針生とて焦燥感の中に居る。ただ、付き合い方が上手いから大喜のように砂漠を無闇に歩き続けたりしないだけ。彼とて藻掻き続けている。簡単に苦悩から解放される事はないと知っているだけ
一方で気持ち良い心情で上を目指しているのが雛かな
千夏に告白を報告する行為は大喜と千夏が同居している状況への焦燥感に基づくものだろうけど、現状の千夏は大樹と同居していない。それは大喜との関係を進めたい雛にとって道が開かれていると教えるもの
競技者としての業ではなく恋する乙女としての業だからか、雛のそれは大喜達と比べて気持ちが良い。特に目覚めるシーンの練習風景は良かったな
雛としてはどのように演技したら良いか判らないのは事実。だから、どのような心情かと想像を働かせる。そうすれば想い人とのキスを想像してしまう。ここで大喜にも多少の想像をさせたという点において、雛は大きなリードを取れたと言えるのかな
他方で気になるのは千夏か
確信的な恋心を抱いている訳ではないだろうけど、自身の狡さと直面せざるを得ない千夏の現状は大喜と少し距離が出来ている。そこに現れた雛は明らかに恋する乙女の表情をしている
競技者としてバスケとの向き合い方に悩みつつ、恋を予感させる中で大喜や雛と向き合いつつ…
そんな千夏の中にはどのような焦燥感が渦巻いているのだろうね
競技的な朗読との向き合い方に悩む花奈の姿が引き続き描かれるね
杏は自分の声に合う課題を選ぶという吉祥寺と似た正解を手繰り寄せる考え方。瑞希が課題図書を読む内に好きになったのとは対称的
朗読が好きなのであって、課題の内どれかの本が好きというわけではない花奈にとって課題の選び方は難しい
それだけに変態的な趣味によって課題や好きを絞っている良子の在り方は刺激的だったんじゃなかろうか。色々な意味で
今回のメインはお昼の校内放送か。活動初期からNコンの話が出たから色々常識が壊されたけど、放送部と言えばこちらの活動の方が判り易い
ただし、一人で朗読する事は得意でも、誰かとの会話を第三者に聞かせる経験なんて無いだろう花奈にとっては難しい活動。眼の前の瑞希のように喋れなかった経験は失敗として刻み込まれてしまうもの
競技的な朗読を知り拒否感を覚えた時と違い、失敗した校内放送への拒否感を覚えず、むしろ瑞希達のように成りたいと考えられた花奈は早くも良い兆しが見えるね。それは微かでも競技的精神だろうから
ならば、次の競技の際には勝てるようにレベルアップを行う。そのヒントが未唯子との会話の中にあり、そして彼女と友達と成れていたと知れたのは大きいね
喋りのヒントは人との会話の中に在り。だから良子との会話も花奈にとって校内放送と向き合うヒントとなる。また、それだけでなく自分が何を好きかを前提に課題を選ぶ良子の姿勢も花奈には貴重なヒントと成ったような
失敗した校内放送へと頑張って再挑戦して。「学校生活には慣れましたか?」の質問に「はい」と応えられ、今後の楽しみを語れた彼女は確かな成長を遂げられたように思えるよ
いのりにとって上手く出来ない事が多いのに、何故フィギュアスケートだけはしがみつくような努力を止められないのかと少し疑問だったのだけど、初期衝動に姉への憧れが有ったのか…
あの時の姉のように滑りたい、テレビで見る選手のように輝きたい。いのりの中にイメージは明確に有る。それを邪魔してしまうのは『出来ない結束いのり』の存在。そのような娘を見てきたから母・のぞみもいのりを応援するより心配してしまう
そう思えば、この大会でいのりが打ち克たなければならなかった相手は自分を邪魔する弱い自分だったのかもしれない
司から認められ、バッジテストを潜り抜け、他のフィギュア選手とも邂逅を果たした今のいのりはリンクに不法な遣り方で侵入していた頃とは違う。彼女の為にのぞみだって衣装を用意する為に無理だってしてくれる程
だからって一足飛びに強い人間に成ったわけではなく変わらず弱さは有る。練習でも一つの失敗から総崩れになってしまうのは彼女のメンタル的な弱点が現れている
それはこれまでの『出来ない』いのりと変わらない姿。だからのぞみだって本番で彼女が失敗する事を前提に物事を考えてしまう
隠れ止まってしまういのりを変えた、というより変わっていると知らせてくれたのが姉に憧れた頃の自分を思わせる少女の一言であるのは良いね
今のいのりは遠いリンクを眺めていた無名の子供ではなく、結束いのりとしてリンクに立つ選手。以前の『出来ない』自分に合わせる必要はない。これから栄光を手にしていく選手として何を目指したいかをはっきり口に出せる
ただ、自分が変わっても、大会が緊張する場である事までは変えられない。そこでバディを組む司が魔法の言葉を授けてくれるわけだ
そしてリンクに降り立ったいのりの滑りは本当に素晴らしかったね!
最初こそ転んでしまった。それでも人から憧れられる選手とはどのように滑るのかを実践できた彼女の滑りには誰もが魅了される
トドメとして司がまともに教えてない技を披露したシーンには鳥肌が立ってしまったよ!それは失敗を、『出来ない』を打ち消す為に何をすべきかを考え抜いた彼女が土壇場で披露した『出来る結束いのり』への変身
それは評価得点を上げるという単純な意味に留まらず彼女はフィギュア選手に成ったのだという認識を誰しもに与えるものだね
いのりが司の滑りを見て憧れたように、司はいのりの滑りに改めて感銘を受ける
そして、最大の認識変化が起きたのがのぞみ。いのりが自分を『出来ない』と思っていたように、彼女も娘を『出来ない』側と思い込んでいた。それは知らずしてのぞみ自身も『出来ない』人へと変えてしまっていた
だから『出来る』いのりを見て、のぞみ自身も遂にいのりを『応援出来る』人へと変われたのだろうね
光や涼佳のように己の目標を明言したいのり。これまでなら大言壮語と思われたメダリストへの夢が実現可能だと思わせてくれる素晴らしい感動回でしたよ…
壬氏に指示され行ったキノコ採取が意外な事件の真相に結びついていく流れは本作らしくて良いね
おぞましい死体の上で傘を広げる珍しいキノコ。それは猫猫が想起したように、穏やかな後宮の裏では女達の嫉妬や執念が渦巻いている現状を暗喩しているかのよう
それを腕に様々な痕を隠し持つ猫猫が探り当てる構図は、人に見せられない醜さを持つ彼女だからこそ見出だせる真実があると言わんばかり
キノコの特性から普通の死ではないと推理された静妃は後宮の暗い部分を象徴するかのような人物。性格は気難しく、他者を害し、毒を持ったのではないかと疑われる。そんな人物だから自身に痣が出た原因も毒だなんて邪推される
けれど、猫猫はそんな憶測に惑わされずに真相へと至ったね。物証とキノコの症状から正しく隠された静妃の遺骸を見つけ出した
ただし、憶測に惑わされないという事は憶測だけで行動できるタイプでもないとも示していて
その点は壬氏が猫猫の足りない部分を補っているね。彼の指示で動くから猫猫は必要な憶測だけを推理すれば良かった。壬氏と猫猫の組み合わせは後宮の暗部を探り当てるのに最適
だからか、猫猫が隠したいものまで掘り起こされてしまったようで。死体から生えたキノコに心躍らせる猫猫を見る壬氏達の視線がそりゃもうやべぇ奴を見る視線となっていて笑ってしまったよ
サヨは本当に死んでしまい、エレメントは早くも欠けてしまった。合体によって互いの欠けを埋め合うサッコ達の前に新たな仲間として加わるはモモヒメですか
彼女は遅れて真相を知った為か、欠けた自分の認識を埋める為に懸命にサッコ達への接触を繰り返すね
そんな行動がサッコ達に欠けていた認識を手に入れさせる事に繋がり、同時に1万2千年前との繋がりさえ見え始める展開は新機軸を感じさせるね
エレメントは何かしら欠けているらしいけど、優等生でパーフェクトなモモヒメの欠けている面は見当たらない
むしろチームワークやら諸々に欠けているサッコ達の不足すら埋めてくれているかのよう。怖い物知らずなサッコに度々注意するのも彼の欠けを埋めようとしているかのようだし
それもあってか、彼女は誰よりもサヨの死を正統に悲しんでいると受け取れる
現状ではサッコよりもモモヒメの方が主人公属性が強いように思える。練習でも初出撃でも問題なくマシンを操作できてるし。だからこそ彼女の欠けは何なのかが気になってしまう
合体によって互いの欠けを埋め合わせる。ならば合体の影響により不快感を覚えたモモヒメ、それにショックを受けたリミヤそれぞれにはどんな感情が流れ込んできたのだろうね?
それはもしかしてエレメントにとって感情が欠けている状態こそ安定しているなんて可能性もあるのだろうか?
大喜にとって千夏が家に居る状況は異質なものだったはず。でも、いつの間にかそれこそ日常と成っていたのは驚きでありつつ納得
当たり前のように傍に有ったものが無くなってしまうと改めて尊さを感じてしまう。大喜は千夏との同居が一時的に解消された事で現状がどれだけ恵まれたものであり、千夏とお近づきに成れたのかを再認識したようで
一方で雛の方も日常生活と異なる文化祭へ向けた時間が始まった事で大喜への意識に少しの変動が有ったような…
同居解消の少し前、並んで座り同じクラスな自分達を空想する大喜と千夏の姿は微笑ましい
それはもし同じクラスだったならこんなにも楽しい日々を過ごせていたのだと想像する行為。現状の関係も2人は楽しいと思っているだろうけど、もっと楽しい生活も在り得たのだと考えている。そのように捉える時点で大喜だけでなく千夏も、この相手と共に過ごす時間に満足感を覚えているのだと察せられるね
だから同居解消と知れば大喜が驚くのは当然として、千夏も少し驚きを隠せない表情をしてしまう
同居していない状態での大喜と千夏の関係は以前通りにネット越し。また、大喜が考えるようにいずれ同居は完全解消される。やはり今の時間が特異な程に尊いだけ
だからか、家でばったり会えた時に嬉しくなってしまうし、朝練で共に過ごせるようにと大喜も千夏も期待して学校へ向かってしまう
そんな状態だから昼間の学校で普通に会える時間も尊くなって会話も弾んでしまうと
雛は雛で文化祭へ向けた日々の中で別種の頑張りを求められて苦戦中。ただ、同じように別種の頑張りを求められながら問題なくこなしてクラスメイトからの評価も上がる大喜を見て嬉しそうな。彼女は彼女で現状の尊さを感じ入っているのかな
でも、雛のそれは大喜と千夏が結ばれていないから成立するもので
自身を狡いのかと気に掛ける千夏に大きく踏み込んだ雛の言動は現状をどう変えてしまうのだろうね?
制服を身に纏う彼女達だから学校で過ごすの本来は普通の光景。けれども人が居なくなった異常な世界は彼女達を普通からずらしていたような
というか、状況だけでなく彼女らが持つ属性がああして学校で共に居る歪さを教えてくれるね
ひなげしは学校に行っていなかったし、れんげは学校に行った記憶が無い。学校生活に関する記憶を共有しているのはあの面子の中でさざんかとあやめだけだったのかな
それもあって、今回は2人の関係を深掘りする話となったね
どうやらさざんかとあやめは最初から仲良しという訳では無かったようで。普通の学校生活では仲良しになれなかった2人が異常事態になってから仲を深めたというのは奇妙ながらも面白い
また、小学校の頃と中学校の頃の在り方が逆転したというのも面白いね。さざんかはあやめを見習って人と関わるようになった。対してあやめはさざんかに成ったかのように人から遠ざかった
その在り方は逆というより互いを追いかけていたのではないかと思えてしまう。その追いかける行為が異常事態の学校でも再現されたわけだ
また、異常事態にて彼女らに温かみを与えてくれたのが特殊な武器の存在というのは印象的
あの吹雪の中からたった一人を見つけ出すのは本来難しい。けれど、戦闘用途の武器が彼女らに生還の目を与えた
異常事態だから雪中で遭難してしまう。でも異常事態だったから2人は互いを守れた
さざんかとあやめの仲の深さを改めて見せつけられた気になりましたよ