細かい演出やじっくり見せる心情描写などはばっさり切り捨て、勢いとテンポの良さによる爽快感、そしてストーリー展開の面白さだけで最後まで押し切ったのは見事で、その潔い作風にはとても好感が持てました。
また、勢いや熱さといった直球だけでなく、シュールさやある種バカバカしいノリ、のような何処かシニカルな変化球を織り交ぜてくる作風が、個人的に好みに合って良かったです。これはシュウビの存在が大きかったかもですね。
ラストで明かされていく世界の秘密が、壁の向こうの更に向こうまで広がる、というスケールの大きさにワクワクする一方、これまでの壮絶な闘いの数々は赤ちゃんのお守りをする為だったという事にシュールさを感じずにはいられないw しかしそれがこの作品らしいかなと。
大円団を迎えた達成感と共に、更に先のお話に対する期待や想像を掻き立てる終わり方は、満足度が高く良かったです。
そういえば、最終話のタイトル「我が赴くは星の群か」は、劇場版銀河英雄伝説の「わが征くは星の大海」を思い起こさせますねえ。
魔法のランプに何を願うという問いが印象的。ユンは魔法のランプに消滅を願う。クールで現実的な彼がロマンチックな返答をするのが面白い。メイは魔法のランプに自らを破壊する方法を考えてもらう。理知的でありつつありえない超常現象も柔軟に受け止める発想の柔らかさが彼女らしい。
そして気になるのが葦原。彼は物語の重要人物ながらここまで他の誰とも繋がっていない孤立した存在なのが引っ掛かります。また彼の行動から未来を知っていた事を伺えるような。ひょっとすると未来から過去へ渡った人?考えられるとしたらユンと関連がありそうだが(髪型似てるし)、果たして。
廃墟、文明の跡。そして人の世に関わりなく佇ずむこの世界。その一瞬一瞬の美しさ、清々しく澄んだ空気感がスピアヘッドが初めて手にした束の間の自由と開放感を象徴するようでたまらなく好きです。本作は登場人物の心情を映すセンチメンタルな情景を描くのが本当に上手い。
帰れる所がなくあてのない旅をする彼らは”帰りたい”という言葉を残したレギオンを弔って何を思ったのだろう。死以外どこにも帰れる所がない、そう感じている彼ら。赤毛のアンが旅の帰りに、でも一番素晴らしいのは家へ帰ってきた事よ、そう言っていたのを思い出します。だからこそ、肩の荷を下ろし終え何処か空虚にもみえたシンが、新しい居場所を探しに行こう、そう言い出した時、彼らの中に差しこんだ希望を感じて心が温かくなりました。と思ったら一転、またしても不穏なラストに次回が気になるところ。
ホロとロレンスの掛け合い、ユーモアやウィットに富んでいて、クスッと笑える。それでいてそれぞれの言葉にお互いに対する想いが垣間見えて、イイなあとしみじみ。打てば響く関係というのだろうか。