視聴者を『考え「続ける」ことで前に進む』ように誘導したかったのだなとよくわかる構成だった。
前作(正解するカド)同様、
後半戦からの展開がいまいち(露骨な誘導;ストーリーで見せるのではなく、教科書的内容をひたすら登場人物が語りすぎる)な点や、
舞台設定を必要以上に大きくしすぎてる(全世界の各国首脳まで出てくるのに、取り扱う問題は小さい…というよりトロッコ問題を論じるにあたり首脳クラスの人間が出る必要性はまったく感じられない)点など、
話のまとめ方がいまいちなのは相変わらずといった印象。
その点で、原作者の成長が見られないのは残念だった。
ただ、一方で、今作では物語核になる『作品を通して描きたいテーマ』が明確に押し出されていたのは良かった。作者の主張がしっかり前面に出ていて、作品として前作よりも明らかに良くなってると感じた。
いや、これをいわゆる『アニメ』と呼んでいいのかよくわからないけど…。個人的には、野崎まどの作品って、娯楽作品の皮をかぶった哲学書(の教科書)、みたいな印象を持ってる。
今作品で繰り返し出てきた
『哲学的な問題の1つ(トロッコ問題)について人はどう答えを出すべきか、は自明でないので常に人は考え続けなければならない』
というところに着地させる流れとしては、わりと良かったのではないかと思う。正直かなり強引な展開だったし、この作品を1つの『お話』としてみると、その終わり方はかなり後味の悪さが残るけれど…
視聴者に『トロッコ問題について考えてもらう』ことに関しては、小難しい哲学書を読んでもらうより、ずっと効率的に多くの人に届いただろうと思う。
ただ、グロやエロなど過激な内容で彩って無理やり視聴者の意識にねじ込むやり方は、作者の作風(持ち味)とはいえ、なんだかなぁと思ってしまう。自分的には食傷気味というだけかもしれないけど。
・・・
扱ってるテーマや特に後半の展開的に、作品を作るにあたって
・NHKでも放送された教育番組「マイケル・サンデルの白熱教室」
・書籍「これからの「正義」の話をしよう」
からインスパイアされたのかなぁと思った。
嗚呼、、、シデュリぃぃぃぃ!!!
原作だと分かる人には直接的な表現はなかったように思うのだけど、めっちゃ分かるように演出されててつら…。(原作でわからず見過ごして(戦って)、あとから、『あっ』って気づいたときの方がショックとしては大きかった。)
ギルガメッシュ王、よく考えたら「未来を見通す目」を持ってるから、結末が分かってて、表向き淡々としてたのだなぁとか思うと、賢王まじ賢王過ぎてもう言葉にならない。尊い。
4→7の展開好き過ぎる。
(4~7の前フリとして見たときの、1~3の展開も神がかってる。1~3の流れが通常の展開と見せてからの、4~7でフックが効いた展開がやって来る感じが好き。)
刻越えのデリダを見た後だと、『この制作会社、いい仕事するじゃん!』って気持ちになる不思議。ほのぼの。
音楽がちょっと耳障り(シーンにあった音楽ではあるけど、主張が強い…)と感じるものの、全体的に手堅い印象。
作品自体は、期待値が低いので特に可もなく不可もなく、ぼーっと流し見する分にはいいかなという印象。
期待してなかっただけに不意打ちをくらったというか、わざとらしく視聴者の心情に訴えてくる演出に、不覚にもうるっときてしまった。
この作品を通じて描こうとしたものすべてを言葉で説明する最終回…。『アニメーションとは一体…』という気分になる、たまによくあるパターンの作品。
舞台設定は興味を引いたのだけど、物語が進むに従い、世界の広さに対して登場人物が極端に少なく、スカスカな印象を受けた。ストーリー展開自体は面白いかなぁと思わないでもないのだけど、プロットを十分になぞりきれてなくて散逸的に展開した印象。違和感を感じるくらい少ない登場人物とはいえ、1クールでこの世界観を描ききるのは厳しかったのか、心情面の掘り下げが物足りなく感じた。
タイムリープによる過去改変(そのタイムリープの原理を主人公が探るというミステリ)を軸に、「ロボットに心は生まれるのか」という哲学的問題や、「ヒロインとのラブロマンス」「血のつながらない親子愛」などこれでもかと複数のテーマを絡めており、ただでさえ足りていない尺に色々詰め込み過ぎじゃなかろうか。(そしていずれも消化不良)
また、海外ドラマWEST WORLDをオマージュしたかのようなシーンが多々散見された。作り手側の科学技術に関する知識の不十分さが感じられたことから推測するに、自前でのSF世界の構築を諦め、補完しきれない部分を一部拝借・参考にした感じなのかもしれない。
WEST WORLDの規模の世界観を、限られた予算と時間内に押し込み、悪い方向に転ぶとこうなる、という見本かもしれないと思った。
総じて、『意欲作だったけれど、作り手の表現力が追いついていない』という印象。