誰しもついつい他者にこうであって欲しいという期待を抱きがちで、そんな時そのままのその人を素直に認められなくなるのかもしれません。親子ともなれば尚更。それが知らずのうちに相手を縛り付け苦しめる事も。ほろ苦いような、肩の力がすっと抜けるような、色々沁みるお話でした。
俳優の荒井啓太郎役は堀内賢雄さん。深みのある声が生前の父とのエピソードにしみじみ感じるような味わいをもたらしていて良かったですねえ。
普段はぼーっとしているのに料理となるとスイッチが入ったように目を輝かせて活き活きしだすキヨ。ああ本当に料理が好きなんだなあとほっこりします。まかないさんになったのは運命の導きとでも言うのか人間収まるべきところにちゃんと収まるものなのかもしれません。
副館長の「プランクトン、はいは一回でいい」は笑う。この人意地悪とか辛辣というより超合理的で無駄は省きたいんだよねw いちいち気を遣うのは時間の無駄と考えてそう。ただくくるの異変にすぐ気付いたように決して心の機敏がわからない人というわけでは無さそう。
くくるの仕事に囚われて二進も三進もいかなくなる感じ、似た経験がないわけではないので見ていて心にずしっとくるモノが。仕事量がオーバースペックというのもあるでしょうが、飼育への未練が断ち切れず目の前の仕事にどこか身が入ってないのもありそうな感じがします。
今回くくるを助けるのは夏凜になるのでは。社会人としての先輩であり、飼育員を目指して転職しながら営業の仕事に携わっている彼女がどう心に折り合いをつけたのかエピソードとして語られていないので、この辺りを絡めてくるのではないかと予想しますがはたして。
そういえば久しぶりの開放的な海の風景が印象的でした。後半クールはずっとティンガーラ施設内が舞台だったので。初期の頃はこういう開放感も魅力の一つだったんですよね。草むらをかき分けて広い海に出る演出は鬱屈したくくるの心が解放される様子を表しているようで巧いなと。
いよいよロケット打ち上げ。正直絵的にチープなため映像的に映える一大イベントの割にさほど見応えはありませんが、これまでの過酷な訓練、宇宙飛行への恐怖、そしてレフとイリナの交流など丁寧に積み重ねてきたからこその感慨深さがあってしみじみ。劇伴の良さも光ります。
グミのナストイカと炭酸レモンで気持ちを伝えるエピソードは、まさにその積み重ねの結果としてこの二人の関係ならではのやり取りになっているのが本当に素敵。低予算ぽさと裏腹に素朴ながら丁寧にエピソードを綴ってきた本作の魅力がよく表れている場面だなと思いました。
ラストシーンで生還したイリナをレフが正面から抱きしめるのではなく、横に並んで肩を抱き寄せるのがまた良いですねえ。単に心惹かれ合う間柄というだけでなくて、同じ理想を共有している同志、戦友でもあるという二人の関係を象徴的に表しているように感じられました。