亡霊が鉄骨を持って跋扈する現実に勝る、鋼人七瀬など存在しないという虚構を求められる琴子
推理モノである本作で必要とされるのは真相ではなく、真相を覆す嘘であるという点は面白いね
琴子は虚構を立ち上げるために事前に事件について調べ、紗季から警察の捜査状況も知った。更に現場を見ていた亡霊の証言も得ている。普通の推理モノなら充分すぎる証拠だが、琴子が求めるのは真相ではなく虚構。
真相に繋がる物証よりも虚構をぶち上げる論拠を探している。極論、犯人すら必要としない
人々の納得を必要とするのだから、そこには合理的な解釈が求められる。合理的であれば人々は信じてしまう
そもそも、私達はニュースや本で見る情報のそれらが真相だから信じているのではなく、合理的だと感じたから信じているわけで
それを考えると琴子の狙いも充分成立しそうな気もする。これもある意味、視聴者が琴子の主張を「合理的だ」と感じたから納得できる展開とも言える
けれど、怪異なんて頭から信じないと決めている人間は別なわけで
寺田は怪異が跋扈する現実を信じず、人間が起こしているという虚構を信じ行動した。だからこそ、鋼人が本物の亡霊であった為に寺田は倒れた
生半可な虚構では立ち向かえないという突きつけられたシーンであるように思えた
これまでは現実に鋼人を見た者は少ないから、怪異の存在する現実を打ち破る道も容易かった。けれど、寺田の死によって怪異が人を殺す現実を虚構によって別のものに塗り替えねばならなくなった
鋼人七瀬対策が難事件に跳ね上がった事で物語は益々面白さを増していくね
勝負に勝つためには様々な条件を必要とするけど、肝心なものを持っていない育人と千雪
二人の戦いは苦しく勝利の難しいものばかり
冒頭、千雪は全くタイプの違う育人を尊敬してると言う。それは千雪には無い、全てを捨てず両立する覚悟を持っているからだね
そこでは数多の努力を必要とするけど、時には努力をしても同しようもないものもある。今回の描写からはその辺りの厳しさも感じられた
予選を勝ち抜く為にお洒落な服を作る参加者たち。当然、参加者が審査員になれば他者をダサいなどとこき下ろす
でも、学園長が言ったようにお洒落に客観的な点数をつけるなんて難しい。そこで必要とされたのはお洒落な服を作れるかではなく、自分のお洒落を信じられるか
育人は自分の感性と千雪の言葉を信じたために勝ち進んだ。
けれど、お金というファッションを作る上で削ってはいけない部分を削ってしまったから最高の成績とはならない
育人にとって勝つためにお金は必要なんだけど、同時に長男として家族も大切としたい。どっちつかずで捨てられない彼は予選で一位にはなれない
一方の千雪はやはり身長が足りないからそもそも応募すら難しい
そんな状況では2年掛けて貯めた大金も有効活用できる目算はない。
かといって千雪が素晴らしいのは腐ること無く、自分にできることを最大限行っている点だね
そんな精一杯努力している千雪の前に現れるのが心とは……
持たないゆえにショーモデルへの道が狭い千雪、持っているがモデルへの道を志さない心
この相反する二人が出会ったことで生じるバチバチがどうなるか……
ハイトラの為にソマリの血を欲したウゾイ。この瞬間、確かに彼女は人を襲う人外となったのだけど、結局は水に落ちたソマリを助けてしまう
なろうとした姿になれず、欲したものを手に入れられない
ウゾイとハイトラは、望んだものを手に入れられない描写が目立つ
ソマリを殺せなかったことでウゾイはハイトラが生き残る方法も手に入れられない。それはハイトラが死ぬも同じこと
対するハイトラも守りたかった者を守れず、欲したものを手に入れられなかった人間
人外が支配する世界での慎ましい生活を守れず、家族と生き残る為に化け物になろうとしてもなれず。
果てに知ったのは化け物と思った人外も子供を守る親であったという事実
ハイトラがウゾイの親の命を奪っておきながら、ウゾイの親のように振る舞っていたのは罪滅ぼしのため。けれど、罪を明らかにしないままの罪滅ぼしなんて意味はない
かといって審判役となるウゾイも望んだ形の断罪が出来ず悩む
ウゾイは他者の命を奪う無慈悲さを知ったばかりだし、ソマリの裏表ない言葉で自分の気持ちにも気付いた
だから、ウゾイは母を食ったハイトラを許しはしないが彼の死も良しとしない。両者とも苦しみながらも一緒に生きるという道を選ぶ
二人の哀しい選択は同時にとても尊いものだね
二人の選択はソマリ達への示唆ともなる
親役のハイトラは子供役のウゾイに嘘をついていた。これはゴーレムにも当てはまる。
ウゾイは罰の形でハイトラが変わらず傍に居ることを求めたけど、ソマリはゴーレムの嘘を知った時にどうするのだろうね?
あおいと千明の馴れ初めが明かされる回
なんてことのない、小さな事故から始まったと思われた二人の関係。その実、もっと前に踊るような気持ちの中で出会いが有ったというのは胸が温かくなる描写
本当に大切な思い出ってそうそう口に出さないものだよな~、なんて思ってしまった
自販機のラッキーチャンスは嬉しい出来事だったけど、覚えていたのは千明だけ。けれど、今はラッキーチャンスなんて無くても三人は並んでジュースを楽しそうに味わう。そんな野クル三人組の姿に思わずほっこりとした気分になるね
役者が揃ってきた事で物語の全容が見えてくると同時に普通の人間でしか無い紗季とそれ以外の差も見えてきてしまった印象
今回は異なる世界を隔てる境界線が明確に見えてきたように思える
冒頭、琴子と紗季は九郎と鋼人七瀬が織りなす戦いを見守るしか出来ない
鉄骨を操る怪物の前に出られるのは頭を潰される覚悟のある者だけ
身体的には普通の人間でしか無い琴子と紗季は自販機の向こう側の世界に入れない
そこでは九郎と怪物の違いはなく、紗季は両者を平等に恐れる。琴子は怪物の世界を見慣れているためか、九郎の不死性を保険の心配をしなくて良いなんて呑気に考えるが、人間の世界に居る紗季は九郎との子供や結婚を考えられず別れるに至った事情が話される
両者を隔てる境界線が壊れるのは琴子が自販機の向こう側に踏み出してから。鋼人は消え、九郎は朴訥した青年に戻る
かといって琴子はペースを握れない。紗季は境界線として機能した自販機からコーヒーを購入し九郎に渡す。この瞬間に九郎は怪物の世界から人間の世界に戻り、元恋人の世界を作り出す。
そうなると今カノの琴子はその世界に簡単に入れなくなる
紗季の部屋で展開される話も基本的に人間の世界での話。となると、元恋仲である紗季と九郎の間に微妙な空気が流れたっておかしくないが、紗季はベッドに、琴子は椅子に、九郎はその隣に座ることで両者の間に境界線ができ、紗季を必要以上に警戒させない空間となる
琴子はそういった二人の空気に気付いたから人間の世界に居ながら、紗季に九郎を諦めさせるために怪物の世界の話をする
人々の想像を媒介にして形を得る”想像力の怪物”。本来は噂話などの不確かなものに名と形が与えられて怪異となるわけだけど、鋼人七瀬はまとめサイトによって名と形を与えられ不確かな怪異となった鋼人七瀬。
このネットの世界に居る存在に対して現実の世界に居る琴子達がどう対処していくのか、そしてそれをどのように描いていくのか楽しみだね
モデル活動をしながらもデザイナーを目指す心。初めてのショーが綾野麻衣であることから彼女のモデルとしての才能はかなりのものと推察できる
だから、彼女のマネージャーは心がデザイナーを志すことを気の迷いだと断じる
きちんと才能があるのに別の道に踏み入るのは誰に対しても失礼だと思える。けど、心はノートや部屋の様子から判るように恐ろしい程に本気。でも、その本気度は内面的なものだから他人には伝わらない
人に伝える為にはショーにデザイナーとして出るしか無い
育人は芸華祭参加者から貧乏だと笑われる。また、庇われたお礼をしたいと言えば甘いと批判される。育人の在り様は浮いてしまう
それでも育人は自分の遣り方を変えない。参加費が生地購入費と知れば切り詰める気で居るし、感謝を伝える気持ちも変えようとしない
言われたから辞めてしまうなんて流儀は育人にはない
それは千雪にも言えること
背が低いからとモデルの道を絶たれかけた彼女だけど、ショーモデルとしては小柄と言われたセイラを手本とする道を選び、家でウォーキング練習を繰り返す
171センチですら小柄と言われる世界へ挑戦することを千雪はまだ止めようとしない
誰に何を言われても自分の夢を叶える為に努力と挑戦を止められない三人が揃ったことで物語が本格的に動き出したように感じられるね
星咲祭、それは地学部の活動成果を示す場所であると共に皆に地学に興味を持ってもらう場所となる
学生が主体となるから大規模なものは出来ないけど、それでも工夫に溢れたものになったね
勿論、活動成果は本番だけでなく直前の準備にも表れる
地質班が行う疑似ボーリング調査、そこでは野球部に協力して貰った。その光景は「よく判んないけど面白い」と評される
謎多きクールキャラとして見られていた桜先輩の部活動に打ち込む姿は一種の成果となる
同時に桜先輩も協力して貰い、無事にボーリングが出来た事で「無理って決めちゃうのは勿体ないな」と認識させるに至る。
そういった経験を味わえたからこそ新聞部に素直に感謝の言葉を挙げさせたり、先生の失敗を大笑いしたり。そういった変化を桜先輩に齎したのかもね
惑星を手作りする天文班。あおは木星、モンロー先輩は月をこだわって作る。こだわって細かく作れるのは普段から観察しているからで
また、目の前にある月がモンロー先輩に天文を志す夢を話させるきっかけとなるのは印象的
本番の星咲祭では様々なパネル展示に実物展示、お菓子や飾り付けが登場する
それらはごちゃまぜで纏まりがないように見えるけれど、地質・天文と遠いようで近い別ジャンルが混ざり合っていることで結果的に楽しい空間が出来上がったのだろうなと思える
それらは学生だけでなく家族達も観覧する。両親などはこういった展示を通して地学部に居る我が子の活動成果を見られるというわけだね。
とりわけ、口下手なあおの成果を両親に見せられたのは良かったのでは
そしてラストには三年生陣から驚きの発言。時期や地学部としての成果を纏められた今なら妥当とも言えるけど唐突ではある。
イノ先輩は先輩から後輩への受け渡しをどこまで受け取れるのかな?でも彼女なら問題なくできそうだ
そういや、クラスメートが来た途端にメイド服を脱いでジャージに着替えた桜先輩の挙動が気になるのだけど、あれはクラスメートに飾り付けた自分よりも普段に近い自分を見せたかったとかそういう意味なんだろうか…?
似ているようで居てかなり違う二組。どちらも人間と人外、大人と子供という組み合わせは同じなのに、その内実はとても異なっている
ソマリとゴーレムの組み合わせはソマリの溌剌さから判るように、無邪気な子供役となるソマリ、ソマリを見守る大人役のゴーレムという組み合わせ
ソマリがゴーレムをお父さんと呼び、ゴーレムがソマリを庇護する関係から二人は擬似的な親子となっている
対してウゾイとハイトラの組み合わせは何処かしっくり来ない
サイズ感の違いは大人と子供のように見えるけれど、ウゾイがしっかり者であり病気を抱えたハイトラを気にかけているために大人と子供の関係性がすぐに当てはまらない
そう考えると、ウゾイがハイトラのために無邪気なソマリに手をかけようとするのも親鳥が雛のために餌をとってくる行為のように見えてしまう
けれど、ウゾイがただの親鳥にならないのはやはり彼女は子供役の部分もあって、同じ子供役であるソマリとどこか波長が合ってしまうからだろうね
性分か、ソマリの「どうして?どうして?」という質問攻勢に答えずには居られないウゾイ。二人の姿は姉妹のようにも見えてしまうし、本当の親をなくして変わりの存在と旅をしている境遇も瓜二つ
二人が仲良く慣れる余地は充分あるように感じられる
けれど、完全な子供役ではないからウゾイは大切なハイトラの為に別の存在を切り捨てることが出来る
自身に向けられる害意にソマリはどう思うのか、自分のために子供を手に掛けようとするウゾイにハイトラはどう対処するのか。
次回をどう描くのか気になるね
レムはひたすら自分が持っていないものを求めてきた少女
姉のようになりたいと願い、役に立つ者になりたいと願い、最後には姉の角が折れたことに喜んでしまった少女
姉ならこう出来たはずだ、姉ならもっと上手く、姉の角さえあればと存在しないものを求め続けても際限が無い。
スバルにすぐに手を伸ばさなかったことを悔やんで暴走した果てにスバルとラムに助けられてしまったレム
その有り様は成長していないと本人を更に悔やませるものだけど、そんなことはスバルには関係ない
レム達の経緯を知らず、レムに助けられた経験を持つスバルは今のレムを肯定する
レムが拘泥するラムの姿を知らないと言い切り、爽やかな表情でレムの価値を認め、笑えと促してくるスバルは格好良い
小さい頃「見てて」と言って森で食料を取ろうとして失敗して以来、何もしなくてもいいと感じてしまった少女。けれど、スバルは今のレムだけを見て、今のレムが成した成果を基に彼女の努力を褒め、感謝の言葉を伝えた
ようやく笑えた少女の表情はとても素晴らしいものだったね
魔獣から子供を取り返してスバルも助かってハッピーエンド!……とならないのがこの作品の厳しさ
逆にスバルの余命が明確になったことでレムが追い詰められてしまう理不尽
助かった筈なのに余命幾許もない。それは命を失いかけているも同様
けれど、スバルはこれまで何度も命を失ってきた。そこでスバルは決して死に慣れるなんてことはなく、むしろ命の大事さや「その後」に至る尊さを知った
スバルには失いゆく中で得たものがある
ラムは鬼でありながら角がない。鬼のアイデンティティである筈のそれがないことをラムはあまり気にした様子はない。レムに頼りっきりの現状も「頼るしか無い」ではなく「頼ることにしている」と言う
その様子はラムの言葉通り「無くしたことで得たものもある」状況なのだろうね
失ったことで別のものを得た二人が死物狂いでスバルを失うまいと戦うレムを止めようとする構図は印象的
「カチカチ山」の話があっという間に「ウサギとカメ」と混同されてしまう描写には笑ってしまうし、写真撮影と見せかけてモノボケに走ってしまう三人娘にも思わず笑ってしまうね
先週に引き続き相手を納得させる方法を模索する琴子と紗季
琴子は九郎が自分を放って行方知れずである現状を納得できず、紗季も琴子が九郎の彼女だと納得することが出来ない
琴子は自分が九郎の彼女であると証明するために一緒に居る写真を提示するが、九郎の元カノである紗季には通じない。というか琴子の出現からして納得できない
けれど、紗季が納得できていないのは琴子の存在だけでなく、九郎が人外である点にも納得できていないのだろうね
対して琴子は九郎が居ない現状には納得できていないが、居ない理由については納得している模様。また、九郎が持つ人間の範疇に収まらない在り方についても平然と受け止めている
その納得しきった姿が紗季には九郎の傍に居るに相応しい人間だと感じさせてしまう
そして肝心の鋼人七瀬、或いは七瀬かりんの顛末
あれよあれよとスターダムを駆け上がっていく筈だった彼女が足踏みして死に至ったのは父親の事故死のせい。生前の発言や日記によって世間が「彼女が犯人」なら面白いと思ってしまったことが原因
それによってかりんはアイドルとして期待される存在ではなく、犯人であればと期待される人間に変わってしまった
そんな彼女だからこそ、亡霊のような形で再び現れれば世間は納得してしまう。復讐に来たのだと思ってしまう
けれど、刑事の寺田がそう思わせる裏の意図を推察する辺りは流石といった所。しかし、そこに本物の怪異が潜んで居る点を今回も紗季は納得させられない
本物であれ偽物であれ不自然な存在である鋼人七瀬。どのようなアプローチを取るにせよ、理解し納得するためには情報が必要となる
琴子と紗季がほぼ同時にかりんの死の真相について知ろうとする流れは推理モノらしくなってきて面白さが増してきたね
育人がデザイナーを志す理由を中心に据えながらも互いに想い合う家族の絆を描くAパート
優しすぎるあまり、家族のために夢を諦めていた育人。そんな育人に憤りを隠せないほのか。どちらも夢を叶えて欲しいと思うから、相手に譲ってしまう
そういった大きなすれ違いを育人が柳田の所で働くことでお金の問題も夢の問題も同時に叶え二人を和解させる
更にはほのかが自分の選択に憤っていたことを知った育人が久しぶりに自分の口で自分の夢を語るシーンは良いね
デザイナーの世界が広がるBパート
展示会は育人に服が売れる瞬間を見せるだけに留まらず、新たな出会いも齎してくれる
類まれな才能を持つ独立志向の遠、モデルをやっていたのにデザイナー志望としてやってきた心
助っ人を探していた筈が育人が助っ人として駆り出されるかもしれない事態。そこに芸華大でのファッションショーの話も絡んできて、デザイン方面の話がどんどん広がっているね
自分はどのような方向性に進むべきか、というテーマの下に桜先輩とイノ先輩の人間性が深堀りされているように思えた
みらとあおの距離が縮まったことにヤキモチを焼いていると感じてしまうすず。彼女は混乱のあまり、勝負にならない勝負を持ちかけてしまう
そんなすずを見てイノ先輩が諭すのは「三人で親友でいいのでは?」とごく当たり前な解決法
イノ先輩は地図好きであり、小さな名付け札や前髪の変化など細かいことに気が付く性格であるためか、人に道を示すことが上手い。
迷走するすずに対して、みら達三人が一番笑顔になれる道を示してくれる
対して桜先輩は物事を難しく考えてしまうためか、道を見つけるのが上手くない
みらに小惑星を見つけた後が何に繋がるのか聞いてしまったのは、そこに意味を求めすぎてしまうから
同様にプレゼントのお礼に何を伝えるかで散々迷ってよく判らないテンションになってしまったのも桜先輩の性格が現れているね
文化祭の展示を考える際にもボーリング調査のアイディアに採用したのは良いものの、それをどう現実に落とし込むか行き詰まり、無理だと感じてしまう
次々とアイディアを出しながら立ち上がる周囲に対して一人だけ座る彼女の絵は辿るべき道へ歩み出せていない事を暗示しているかのよう。
勿論、イノ先輩は所々で桜先輩の仕草を見て、彼女の迷いを感じ取っているのだけど、先輩への遠慮があるのか桜先輩に道を示すことが出来ない
ここで更なる年長者であり学生に道を示す生業の幸が中途半端でもいい、無理と決めちゃうのは勿体ないと諭す展開は良いね
幸の言葉に思い直し、立ち上がった桜先輩。ここで彼女は自分が進むべき道を見つけたわけではない。けれど、物事は確実にしなければならないとの考えから脱することが出来た
彼女が歩き始めたその道の先に何を見つけるのか、次回の文化祭が楽しみだ
親と子、それぞれの成長が見受けられる回
夜覚めの花を探すソマリ、それを捧げられるゴーレム。
ソマリの願いが少しずつゴーレムに伝わっていく流れは秀逸
地下へ潜った二人を追ってきたムスリカ。彼は面倒見が良いが見た目は恐ろしく、二人に帰れと諭す
しかし、ソマリはそんなムスリカに臆すること無く願いを叶えるために花を探すと譲らない
そこにあるのは親ともっと一緒に居る為に成長しようとする子供の姿だ
その姿勢はソマリだけでなくキキーラにも見られる。
前回の遊び姿や無謀に地下に入ってしまう点は子供らしさに溢れるが、ツチトカゲを威嚇してソマリを守ろうとする姿からは男としての矜持が垣間見えるね
ソマリを守るキキーラの姿、父と一緒に居たいと願うソマリの純粋さ
それはツチトカゲの子供を通してツチトカゲに届く。花の番人が二人を見逃したことは二人が成長した何よりの証となる
一方で杓子定規な対応でソマリを悲しませてしまうゴーレム
そこにあるのは確かにソマリを心配する感情なのだけど、感情をそのままぶつけてしまっては子供を悲しませてしまう
ソマリを悲しませないためには親としての成長が求められる
ムスリカの叱咤、ソマリの体調不良。それらはゴーレムに自分の未熟さを理解させる
だからこそ、ここでゴーレムは杓子定規な対応から外れられるのだろうね
路銀を薬に変え、ソマリの願いを叶えるために嘘をついた
それは親としての成長の証
互いに謝り合い親子として成長した二人。願いの通り、ずっと一緒に居られればそれでいいが、そもそもこれは別れるための旅。それを思うと単純に成長を喜べないのは辛い……
次回はあの二人が登場ですか。あのエピソードって結構好きなんだよね
スバルが8話で勝ち取ったものによって進む9話。呪いの発生源も判明するし、再び村へ行く際もレムが同行してくれる展開にもなった
居なくなった子供達を救出する際、スバルは子供達の夢を守りたいと語り、友達の心配を優先する意気を汲もうとする。それらを語るスバルは真剣な表情を浮かべる
そういった表情の中にレムはスバルの人間性を見つけていく。
やはりここでも笑顔ではなく、別の表情や行動によってスバルは信頼を勝ち取っていく
そういった積み重ねが土砂崩れを前にしてレムがスバルを押し、助ける展開に繋がるのだろうね
それはスバルも同じ。鬼となり殺戮を繰り返すレムに対してもスバルが躊躇なく助けようとしたのはこれまでの積み重ねによって鬼になったレムであっても信頼できると考えているからだろうね
幾つもの積み重ねによってここまで辿り着いたスバル。その頑張りはきちんと報われるのかな?
そして自分を助けてくれたレムに対してお礼を言う機会はあるのだろうか?
今度こそはと皆を守るために行動を開始したスバル
まずは信頼を勝ち取ろうとするのだけど……
前回などは正体を怪しまれ殺されるに至ったのだから、自分は怪しくないと主張するためにスバルは笑顔を過剰なまでに振りまいている
けれど、その無理やりさが却って怪しまれてしまうのは哀しい所
そもそも相手を信頼する方法なんて笑顔だけではないとスバル自身が知っている筈なのにね
スバルは自分を殺そうとしたレムとラムをリスタート直後に信じていると伝えた。それは前回のループで自分の手を握ってくれていたのが二人だと知ったから。スバルは二人を信ずるに相対する相手だと見極めた
同じようにエミリアはスバルの笑顔ではなく、泣き顔を見て信頼を見極める
エミリアの膝の上で泣き喚くように辛さを訴え、子供のように眠ったスバル。それは何よりも悪い人間ではない証拠となる
エミリアはスバルを信じ、そしてレムに信じられる相手だと教えられる
そうして培われた信頼はスバルが予定より早く村へ行き、状況を変える下地となるのは良い展開
ヌシの悩み解決編と鋼人七瀬導入編が同時に描かれる回
怪異と現実が織り交ぜられていることで、現実に対して虚構を用いて推理する琴子のスタンスが際立っているように思えた
事件の真相を琴子は浮遊霊を通じて知っていた。本作が通常の推理モノであれば、その真実を懇切丁寧に話してヌシを納得させる展開になるかもしれない
けれど、琴子は秩序を重視する
地位有る存在を無理に納得させるのではなく、ヌシが『納得したい』虚構を信じさせる
それは嘘とか屁理屈と言われるかもしれないが、琴子の虚構によって傷つく者は居ない
あやかしであるヌシが事件関係者と関わることはなく、犯人の知らぬ所で行われている、推理の要である嬰児の死体が見つかることもない
虚構によって全てを丸く収め、琴子の望む場所に話を収めている
琴子は同様の手法を九郎に対しても使う
九郎は琴子と付き合う気はない。けれど九郎が心配しているのを良いことに琴子は言質をとって「付き合うのを認めましたね」と突きつける
九郎の言葉は別に琴子との交際を強く意識したものではないけど、琴子は望む虚構によって現実を塗り潰している
対して河童に出会って以来、現実が破壊されたままの紗季は鋼人七瀬の話に上手く向き合えない
鋼人七瀬を本物と受け止めつつ、取り繕った偽の証言を調書に採用してしまう
また、鋼人七瀬を何かを隠す為の囮と受け止める寺田を納得させる言葉を言えない。虚構も現実も告げられない
あやかしの世界に生き現実の問題を解決する琴子、現実の世界に行きあやかしと向き合えない紗季。この二人の出会いを通して鋼人七瀬という怪異事件への対応がどの様に描かれていくのか楽しみだ
夢に手を伸ばす地学部の面々。と、同時に自分の好きな分野が集積された施設に行ってテンションが爆上げになるみら達が可愛らしい
地質標本館やJAXAなど自分の好きが詰まった空間に夢中になって標本などにかぶり付くのは正しい姿
でも、合宿として来ているなら自分の夢に手を伸ばす為の行動も必要
そういった意味ではJAXAでのみら達の行動は面白可笑しい部分はあるものの別の意味で正しい姿
JAXAでは新天体発見をしていない為に求める情報は手に入らなかった。けれど、あそこで聞かなければJAXAでは判らないと知れなかった。また、他の拠点を探せば専門家に会えると知ることも出来た
これらはちょっとの前進かもしれないし、大ジャンプかもしれない
普段はマイペースなモンロー先輩も夢に手を伸ばそうといつになく真面目にメモをとっている
皆の目がない場所でロケットに手を伸ばしたのは彼女の夢が本気である証であるとともに、本気の夢であるとアピールすることへの気恥ずかしさも感じられた
両者の行動は夢に手を伸ばす真剣な行動なだけに周囲が見えづらくなっていたり、ちょっと不器用な面が出てしまったりする
そんな時にフォローする桜先輩がいい仕事をしているね
目指す夢が無いと言う彼女は逆に地に足がついている。だからか、手を伸ばして足が宙に浮いてしまう他の部員をフォローできる
でも、桜先輩以上に陰ながらのフォローをしているのが顧問の幸
地学部が興味を持ちそうな施設に連れていき、みらとあおに新天体発見プログラムを教えた。
彼女も昔、夢に本気で手を伸ばした人間だからみら達に必要なものが見えるのだろうね
夢に手を伸ばす為に行動を続けるみら達に触発される形で国土地理院に向かったイノ先輩
夢に手を伸ばす者達と地に足つけた者達。大きな夢の前にはどちらが凄いなんてきっと無い。だからこそ、そんな両者が関わっていく事で本当に大きな夢まで辿り着いてしまうのだろうなと思える回だった
育人と千雪は急場の代役であるが表に居る観客には裏の事情は関係ない。
表に出てくるものが全て。二人にプロとしての実力が試される回
育人に求められたのは表に居る観客に柳田一のブランドを伝えること、もう一つが裏で服を千雪の緊張が溶ける楽しいものに直すこと
それらを同時に叶えるには発想力があれば充分。服の表を綺麗に整え、千雪に着心地の良い服にし、ほんの少しの遊び心があれば問題ない
千雪に表として求められたのはコレクションの成功、裏として育人の直した服を観客に見せること
身長の小さな千雪はランウェイで浮いてまうがその堂々たるウォーキングや千雪に合った服によって、それも柳田の意図なのかと思わせる
千雪の才能が観客に不審を抱かせない
そしてヒールが折れて千雪が転んでしまう場面、ヒールが折れていたなんて完全に裏の事情であり表に居る観客には伝わらないもの
通常なら見たまま、千雪が転んだと受け取られるそれはもう一つの裏の事情、育人の仕掛けによって演出と受け取られる
裏の事情を重ね合わせることで表の観客に評価させる
幾つものトラブルがありつつも表に居る人々を完全に満足させた育人。そして本来は裏に属する千雪さえも満足させてしまう。
だからランウェイでは笑ってはいけない、裏に潜んでいる筈の千雪の感情が表に出て笑みを浮かべてしまう
タブーだけど、大成功の拍手となる
けれど、これは柳田のコレクション。二人の名が表に出ることはない。更には他のモデルの協力も有ったし、育人が直した服も千雪のウォーキングも誤魔化しだらけ
それでも次は裏も表も整った舞台が見たいと、そう思わせる演出の数々だった
第一話で手を繋ぎ、第二話では振る舞いによって親子であると認識されるようになったソマリとゴーレム
今回は周囲からの認識で二人が父と娘であると定義される回かな
ソマリの同年代として登場したキキーラ。
キキーラは親の手伝いが嫌で箱に隠れたり、お絵描きしたり。元気いっぱいな子供に見えるけど、遊びは店内。それはコキリラから子供と見られているから
そしてキキーラと一緒に遊ぶソマリも子供と認識される
ゴーレムは路銀を稼ぐため食堂の手伝い。その姿は家族を養おうと仕事をする父親と何ら変わらない
コキリラもソマリをお使いに出した事を「行かせては不味かったでしょうか?」とゴーレムに確認したのはゴーレムがソマリの親であると認識しているから
でも、これらは大人から見た二人の関係性
やはりキキーラから見ればソマリとゴーレムの関係は不思議に映る
けれど、ソマリはこれまでの触れ合いを踏まえつつも「お父さんはお父さんだからそう呼ぶんだ」と曖昧な回答をする
二人の質問も答えも非常に感覚的だけど、それだけに大切な部分を押さえているように思える
二人の子供の前に現れた狼人間。彼からは親に内緒で街の下に入っていった二人の姿はどう見えているのかな?
疑いと憎しみに満ちた目でスバルに武器を振るうレム。ここで残酷なのはスバルはレムと仲良くなった記憶があるけど、レムにはそんな記憶が無いこと。だからスバルを傷つける事に躊躇がない
その意識の差はあまりにも哀しい
そしてここに来てスバルの境遇を話せないという制約も発覚。スバルは無力なままで出来る事なんて無いのにまるで世界そのものが彼を追い詰めているかのよう
だからこそ、そんな彼の手を握ってくれたベティの優しさが光りますよ
でも、ここでのスバルの失敗は自分の生存を優先してしまったこと。ただ生き延びるだけじゃ何も守れないし意味もない。
眠るように死んだレムに取りすがるラム、何か話して欲しいと乞うエミリア、スバルを巡って力をぶつけるベティとロズワール
何もかもが悪い方に転がったと訴えてくる絵面はあまりにも残酷
ただ、スバルに落ち度があったかといえばそうとも言い切れない
また、ベティに逃してやると言われたスバルはこの時確かに選択肢を手にしたよね。でも自分の命を優先しなかったのは彼の本質は変わっていないから
死にたく無いし、恐怖も有るし、出来る事なんて殆ど無いし、自分だけ覚えている現状を憎んでいたのに、その想いに反するように、むしろそれこそが自分の武器であるかのように飛んだスバル
本当に彼の頑張りが報われる時は来るのかな?出来れば早い内に来てあげて欲しいけど
またしても死んだスバル。同じ行動をしても変わってしまう未来に対して今度は自分から行動し情報収集に徹することに
でも、その行動こそ欲する未来を遠ざけてしまったように思える
ラムとは「泣いた赤鬼」の話で関わったけど、親しくなったとは言い難い。レムとはまともに話せないまま
結局、誰が犯人か判らず関係者が多いからスバルも場当たり的な行動になる。最悪な未来を回避できない
「泣いた赤鬼」の話はレムラムを思うと印象的
頑張った分だけ報われて欲しいというスバルに対して、赤鬼はすべき事をしなかったと批判するラム。
前回の笑う鬼の話と併せて考えるとレムラムの考え方の違いが見えてくるような気がする
そしてやはり衝撃的なラストが……