謎の言葉を呟くばかりで何が目的か判らない案山子の在り様が友人帳と繋がってくるとは思わなかったな
必要とされない案山子なんて誰が気にするでもない。でも存在として成立してしまったら、居着く場所を求めてしまうもの
そこが元々別の誰かの居場所なら競ってでも手にしようという話になるのかな⋯
案山子はまともに喋らないから彼らがどのような存在であったかは推測するしか無い
それだけに知らぬ内に繋がってしまったという考え方に着目してしまう。これは友人帳にも言える事
元々はレイコが妖と競う中で出来てしまった繋がりが因縁のように今の夏目へと至っている。でも、夏目はレイコの思惑を知る事は出来やしない
夏目は友人帳を通して妖達と時には衝突したりお願いを聞いたりと関わり続けている。それは押し付けられた呪いのような役目だろうけど、友人帳を持つ事で彼は知れなかった想いの数々との繋がりを紡げた
その意味ではあの屋敷の主人も怖い夢を見続ける事で案山子の想いに触れ、彼らが何を求めているかを知ったのかもしれない
それは呪いであっても繋がりである証拠
だから最後には追い返した案山子の解放を願ってしまったのかな⋯
なら呪いのように突然出来てしまった繋がりであっても、それが繋がりであるならば、相手の想いを汲み取りたくなるもの
夏目にとって良い事もあれば悪い事もある。それでも関わるしか無い。そこへ夏目と様々な繋がりを紡いできた名取が解放を誓うというのは良いラストに思えたよ
穴開けに対して「怖い」ではなく恐れ多くて折檻かと震え出す雪の感性⋯というか人好との関係性はズレている
それもあってか、人好の妹・李恋が登場し、人好の普通の兄貴っぽさが強調、釣られ3人が並んだ姿が家族っぽくなるのは面白い
そうした変化が最終的に暗殺者らしからぬ天誅へと繋がったのかな
人好が雪の暗殺術にビビったのに対し、李恋は雪の顔から入った為か彼女に興味津々。それどころか暗殺術に関しても肯定的に受け入れているのは懐の広さと云うより興味が勝っている感じかな
それはそれで年相応な普通の反応といった印象。⋯ただ、ウィリアム・テルごっこをして目がしいたけになるのは流石にズレている気がしないでもない(笑)
夏祭りは積極的に楽しむ李恋に同調するかのように暗殺者としての前職やメイド姿も年の差も関係なく、3人共にとても楽しそう
それは雪が体験してきた祭とは全く異なるもので有りながら、場違い感を覚えず多幸感を得られる。それは彼女が人好や李恋の居る普通の日常に慣れてきた証かもしれない
だから、かつての雪の日常に近い騒動が起きた時は少し心配になってしまったな
人好の発言は不注意だけど、彼は思うだけで実行できない人間。対して雪は実行できる人間。だからこそ、雪が暗殺術を行使せず普通の日常的な遣り方に近い方法で天誅を下すシーンには驚いたり
彼女は今の普通を本当に大切にしているんだね
そして人好の不注意発言パート2
思った事を悪気なく優しさを伴って言える彼の性質は本当に良いと思うのだけど、雪は暗殺者として実行できる側の人間であるという認識が圧倒的に足りてない⋯⋯!
家でメイドさんしている女性が突然同級生としてやって来る超展開、次回に何が起きてしまうかが手に取るように見えるよ⋯(笑)
第3話にして普通の学校らしさ、部活動要素を出してきたけど、そこにも普通科とマ組による格差を出してくるなんてね
普通科でも様々な夢を目指し実現することはできる。けれど魔法使いだけは成れやしない
そこで裏の遣り口が出てくるのは面白い
魔術研究部だから魔法使いの手帳が必要、無い者は入部不可。けどマジック研究会なら誰でも可
裏技めいたその遣り方は部室が勝手に作られたものである点とも符合するし、普通科の生徒を魔法使いにさせようとするミナミの方針とも一致する
でもそれは正しい遣り方から外れている
マジック研究会の在り方は正当な手段では魔法使いに成れないと強調しているも同じ
でも正統な魔法使いとは何なのかという点を考える上でミナミが企図する古代魔法の継承者なる要素は、もしかするとクルミ達に魔法使いの常識を一変させるものになりそうな…
恋愛物語に恋のライバルは付きものだからって針生は嫌な程に千夏との距離が近いね
大喜よりも千夏と仲が良くてバドも優秀で。それは一年と二年という年齢差だけでなく、様々な面での経験値が両者に大差を生み出している
大喜は千夏への恋を叶える為に己に勝ってインターハイを目指すだけでなく、針生よりも千夏に相応しいと示さなければならない訳だ
好きな人の傍には自分よりも凄い人が、なんて光景は心を凹ませる。おまけに針生はインターハイを目指す上で必ず障壁となる人物
そのような相手を前にしたら嫌な感情を覚えておかしくないだろうに、大喜はバドはバドとして区別出来ているね
だから彼のバドは眩しさを放ち、恋物語も青春らしさに満ち溢れて見えてくるのかもしれない
針生が積み重ねた経験値は千夏にも見る事が出来るのかな。大喜が千夏に魅せられたのもそういった部分だし
大喜の頑張りを見守り、凹んだ時にはバド遊びに誘ってくれる。その振る舞いはとても先輩らしい
他方で千夏が経験者として全て満ちているとも言い切れない。彼女とて同じ家に帰るまでの時間等に何も感じてない訳じゃないと感じ取れる
千夏がそうなのだから針生だって全て完璧という訳じゃない
勝ち試合でも大喜の追い上げに悔しさを滲ませるし、大喜は千夏が好きと知ればからかうような素振りを見せる
何よりもそこに勘違いが含まれるのを判った上で大喜を掌で転がした点にはいい性格してるよ!と言いたくなるね
こうなったら大喜は様々な意味で彼を上回らなきゃね(笑)
姿も心構えも変わり以前よりも大きく成長したムドが登場した事で時間経過を感じさせる内容となっていたね
けど、同時に全く姿も心持ちも変わらない道錬や村から出た途端に昔のような言動を示した真介が描かれた事で必ずしも時間経過だけが人を変えるわけでは無いとも伝わってくる内容になってきたかな
回想当初時点でのムドは千夜と戦っていた頃そのまま。彼が大きく変わったのは道錬と出会ってから
その出会いは一目惚れかのよう。道錬の語る武に魅せられた時を契機にムドからは以前の粗暴さは消え仁義を意識するかのような人物に
その変化は時間経過というよりも何を内に取り込んだかという話なのかな
だとしたら、真介や村の闇も似たような話かな
人間ではなくお握り等を食す事で村に順応し真介への恩を感じるようになった。それこそ内に取り込んだ物による変化
だとしたら真介が村で過ごした時間が無かったかのように飲んだくれに戻り、更には闇に関する異変を聞いた際にあの頃の面影を見せたのは真介の中にはあの頃取り込んだものが変わらず残っているのだと推測してしまう
真介が内に残しているのは灼岩達と過ごした旅の日々だね。その時間はまだ彼の中に残っているからバリーを倒した事も昨日のように覚えている。あれから有った事も灼岩に報告したくなる
だとしたら真介の中では変わらぬ光景が有ったのに、時間経過の象徴かのように灼岩の砕けた姿が眼前に広がっていた時に彼が覚えた苦痛と絶望はどれ程のものだったのだろうね⋯
花壇作りも箱庭作りもどちらも大変な労力を要する作業。それでも完成させたいと思うのは偏に大切な人の喜ぶ顔を見たいからだね
その意味では夏目と箱守り達の方向性は一致している。突然やってきて正体もよく判らない相手だったけど、その想いに怪しさはない。だから不思議な共同作業が成立したわけだ
自分の為ではなく大切な人の為に作るわけだから、どれだけ完成度を求めたって足りやしない
夏目の作った花壇は少し見ただけで想いが籠もった素晴らしいものと判る。石を盗まれた際に見張ろうとする程だし
箱守り達の細かすぎる要求も言ってしまえば、しだ姫に喜んで貰いたいとの想いがあるから。だから、夏目も何だかんだ協力的になる
大切な人への想いが籠められた作品は相手に嬉しさを齎すもの、その嬉しさにはお返しが有るものだし、それは他者にお裾分けも出来る。
夏目がお返しとして貰った種を箱守り達に分け与えたのもそういうもの。作業に加われなかった彼らに活躍の場を与えた
嬉しさのお裾分けとして得た花の種はしだ姫への想いを表現する作品の一分となるね
素晴らしい出来にあつらえられた箱庭はしだ姫に喜びを齎すものに。彼女が覚えた喜びや感謝が舞い踊る花びらの形でお返しされるというのは良いね
それは皆の労力に報いるものだけど、一方で夏目自身もあの庭を楽しめた。幼い頃の記憶の件を含め、夏目にとってはあの空間に身を置いた時間が何よりも褒美となったように感じられたよ
メイドを拾った次の回で犬を拾うなら次回は何を拾うの?ってなるけど、兎も角メイドさんも犬も人好にとって突然の来訪者であり彼に入居を許された立場という点は共通している
その意味では人好は両者に別け隔てなく接する。だからこそ今回は犬を苦手とするメイドさんが持つ様々な壁を優しく取り払おうとしてくれたのかもしれない
捨て犬に厳しい考えのメイドさんに対して、彼女の考えを否定しないままに彼女の行動にこそ答えを見る人好は良い奴だなぁ
自身の考えを自身が否定していたなら、寄辺とする人好が犬を好くのであれば自分とて無碍に扱いたくない。自分を許してくれた彼の想いを尊重したい
そして、両者を無理なく同居させる人好の気持ちが見えれば見えるほど、そこに温かさを感じられる
ただ、人好の温かさを直視すれば、メイドさんは犬に同じように接してやれない自身の冷たさを見ずに居られない
なのに人好はこれまた否定せず、むしろ彼女の言葉から温かみを見出すね
捨て犬の件を含め、人好はメイドさんが自覚していなかった心を次々と見出してやれる。だからこそメイドさんも自分の心に温かさの痕跡を見つけられる、眼に温かな光を映せるようになる
普通を目指し始めたメイドさんが思うは失敗しても良い自分。つまりそれって慣れぬ分野に挑戦するも同義
キャベツを千切りしたり、あげもちに餌を与えたり、触ってみたり。1人だったら出来ないそれも自分を信じる人好が居るなら挑もうと思える
そうすれば知らなかった他者の温かみを知る事も出来る。苦手を克服できる
極めつけが名付けのシーンかな
彼女にとっては引け目のある名前。当てる言葉は同じでも籠められた意味は大違い。冷たいイメージだったそれに温かさをイメージして貰えた
それは人好が彼女に温かさを見出しているとも言えるね
数々の遣り取りを通して、最初は怖かったメイドさん改め雪から温かい微笑みを見つけられた人好は雪にとって温もりの象徴となるのだと感じられたよ
マ組と普通科で夢の実現具合に大きな差が有るかと思いきや、普通科でも自分の夢を叶えようと努力する者が集っているというのは印象が変わる話
普通科の皆は魔法使い以外の夢を抱いている。そこでは魔法使いを夢見るクルミは浮くのではなく、魔法を夢の為に役立てる手段とするミナミが呈した魔法理論が面白いね
魔法使いとそれ以外、法律レベルで定められた壁は簡単に敗れるものじゃない。だからこそ、手帳ではなく自筆の魔法陣なら問題ないという論法は普通科の皆を惹き付ける
一方でマキが伝統について話すシーンも印象的。ルールが有るなら何でもかんでも破ればいいというわけではなく、ルールに従って別の可能性を探す事も否定していない
ただ、肝心の授業が凄いのか酷いのか判断に困る…(笑)
魔法陣の理論を図形を通して理解させるのは良いけど、難関校の授業がお絵かきに終止するってどうなの……
でも、それによってクルミは魔法陣の真髄の端緒を掴めたのかな?
既存のルールに従っていなさそうなミナミの授業、これを受け続ける事で本当にクルミは魔法使いに成れたりするのだろうか
突然の同居というラブコメ状態だけれど、すぐ恋愛に結び付かない構図は良いね
千夏と一緒の空間にドギマギしつつも大喜はそれに溺れるを良しとしない。むしろ、より深い仲になる為インターハイを目指そうとする考えは好感を持てるものだね
ただ、近づいた事で却って大喜を悩ませるのは千夏を読み切れない点かな
同じ家に住む事になっても千夏とすぐ恋仲になれると思わない。むしろ千夏がバスケに対し本気であるという点は知っている大喜はその考えを尊重し自らもそこに並び立とうとするわけだ
でも、それ以外ではまだ千夏の考えを知れていない。だから無防備な接近を繰り返す彼女にやはりドギマギしてしまう。その光景はとても甘酸っぱいものだね
他方でこの同居は千夏に大喜を知る機会ともなっているね
同じ家に住まなければ見えないストイックな筋トレや思考は大喜への認識を改めさせるものとなっていそうな
また、擦れ違いに拠る誤解も大喜は自分の為じゃなく千夏の為を考えてのものだと教えるものになるね
この状況は大喜が認識している以上に二人を近付けている
そうなると気になるのは雛の現状
匡の「素直な奴が強い」との台詞を採るなら、大喜の恋を応援する雛は果たして素直なのだろうかと考えてしまう
親友を名乗る彼女の考えにあるのは本当にそれだけなのか?というのは深読みし過ぎだとしても、大喜の現状を知らない雛は危うい境界に居るような…
もはやド安定と言えるシリーズで居ながらこちらが求める水準を毎度満たした逸品を提供してくれるのだから嬉しい処
新シリーズ初回は想いの優しさを感じる話となったかな
普通は物が動き出すなんて思わない、物は物。でも動かないからといって情が湧かないわけじゃないのが『想い入れ』の面白い点
夏目の作ったミニ先生は滑稽だけど可愛らしい。それが無くなってしまった時は惜しむ気持ちが湧いた程。動かなくても夏目は情が湧いていた
なら動けば余計に情が湧くのかというとそうでは無いような
夏目はミニ先生が動かなくても罅割れに手当しただろうし、叶えたい何かがあれば手伝ったように思う
対象が物であってもきっと想い入れがあれば情が湧く
似た要素は神主にも言えるね。彼とて動かぬ物を慈しみ、壊れた時には悲しみを抱いた
夏目のように妖が見えない人間でもそうなら、物が動かなくても情が湧いてしまうのは想いが有る何よりの証拠で
ミニ先生に宿った妖もそうなるのが面白い。動く振り子時計よりも動かない時計に愛着を覚えたのは彼とて人と同じように情を物に抱いたのだと感じさせる
情を持てるほどの想いが有るから、彼は自分を慈しんでくれた神主への情も同じように湧いたのだろうね。そういった繋がりはとても尊いものであるように思えたよ
なら、別の見方としての多くの名前が残された友人帳もただの物ではなく沢山の情が詰まった想いの入れ物と考えられるのかもしれない
友人帳を中心としたこれからの物語を再び味わうには丁度よい初回と感じれたよ
一人暮らし少年の家に突然メイドがやって来るとか、それどんなご都合展開…と思ったらむしろメイドさんにとって都合の良すぎる相手だったというね…
人好もメイドさんも誰かと一緒に居られる温もりを求めていた。二人の出会いは互いに良すぎる相手となったけど、条件など求めていなかった筈のメイドさんにとって何よりも破格の主となったような
一般人の人好には暗殺術が得意なメイドなんて不必要、雇う余地は無い
けれど、掃除を一緒にしてくれる人という条件なら彼女を引き止められる。それは言葉の言い換え。でも1人じゃ掃除が出来ない人好やメイドさんにとって、二人が一緒に居る最上の理由になる
ここでもメイドさんの方が得る量が多いのは面白い。美味しく味わって欲しいとの想いが詰められた豚カツはメイドさんにかつて無い温もりを与えるものになるね
だからって夜中にソース舐めてるのはちょっと酷いけど(笑)
ただ、ここでも人好は分け合う遣り方を選んでいるね。夜中に起きて夜食なんて駄目生活を美味しい食事を共にする時間とした
メイドさんは人好から食事も夢も温かい物を与えられている。だからこそ、自分がそのような想いをしている時に人好がそれを分かち合えていない点を気にしたのだろうね
与えられてばかりで暗殺だけが得意なメイドさんが人好に返せるものは少ない。だからこの身一つで与えられる膝枕は格好。でも、受け取って貰えなかったら…というタイミングで人好の飛び込みはとても良かった……
二人が分かち合ったとても尊い温もり。それがどのように家族となり、与え合っていくのか。興味をそそられる初回でしたよ
まるで絵画を見ているかのような気分にさせる素晴らしい作品…
好きになった人は高嶺の花、告白以前に名前を覚えて貰うのすら一大事。そのような境遇だからこそ、一歩一歩彼女に近付いていく工程がとても尊く感じられる
それは話の展開だけでなく、一つ一つのシーンがとても緻密に描かれているからなのだろうね
大喜と千夏の接点はせいぜい朝練の時間くらいで遠くから見遣るしか出来ない。だから彼女が監督と何か話していても内容を知れやしない
大喜の恋がきらめきを失わないのは、スポーツ選手らしく挑戦心を保ち続けるから。その感情が千夏のくしゃみに接した際に過剰な行動をさせる原動力になった
それは確かな一歩だね
大きな変化の一歩となったのは1on1で向き合った時かな
相手の挙動に注視する競技は大喜がどれだけ千夏を見ているかを示すものになるね。また、千夏に大喜の人となりを教えるものともなっている
本作が良いのはここで大喜が知らず知らずして千夏に最も大切な事を知らせている、思い出させている点だろうね
一歩ずつ踏みしめていた大喜が大きく駆け出すのは千夏が遠くに行ってしまうと思い込んだから。でも、それだって告白できないという理由でなく彼女が遣りたい事を出来なくなる虞から
結局勘違いだったそれは、けれど千夏に大喜という人となりをアピールする最高のシーンになったような
そのように綺麗なオチが付いた後にまさかの同居エンドとか吃驚させられたよ……
この事態に今回は活躍が控え目だった雛がどう絡んでくるのか楽しみすぎる…!
これは童話的と云うか、一昔前の少女向けアニメのような雰囲気を持つ作品だね
けれど、落としてから上げていたり、緊張感有るシーンを高いレベルで描くものだから誰でも楽しめる作品になっている
魔法使いに憧れていたのに落第してしまったクルミが夢を諦めない中でどのように彼女だけの魔法を手にするのか楽しみですよ
さらっと描かされていたけど、どうやらクルミは努力家タイプのようで。小さな頃の憧れを胸に日夜勉学を熟してきた彼女は夢を叶える側の人間であるように思える。なのにマ組不合格…
不思議なのは他にも理由が見えない不合格者が居る点か
穿った見方をすれば、不合格には何か理由があるかもしれなくて、それは夢を叶える道へと繋がっているのかもしれない
普通科とマ組は住む世界が違うかのよう。クラスは分けられ、輝きも異なる。その状態で歓迎会を見ても自分には関係ない世界
だからこそマ組の騒動を収めたミナミが担任として普通科にやってきた挙げ句、生徒を魔法使いにさせるというのは世界が引っ繰り返るような話
これから彼女らの学園生活はどうなるのかな?
逃若党の未来は絶対ではなく、時行の逃げ上手も絶対ではない。だからこそ、そこには命懸けの駆け引きが生じるし、常に以前の自分を乗り越える成長が求められる
今回は保科達や狐次郎にその点が求められた形となり、同時に生きる為の逃げ力が試される戦ともなったのかな
相手が兵力は上でこちらは寡兵なら、どうしたって効率的な戦法が必要。そこで玄蕃や狐次郎は上手く動き回ったね
特に狐次郎は奮戦と評するのが相応しい働き。けれどそこで彼が反省点としたのは仲間の名前を覚えていなかった点。今回は時行の逃げを広める戦であった事を思えば、彼だけが皆を活かすのではなく、皆が皆を活かす逃げへの仕組みが必要だったわけだ
時行による逃げて生きるという信念に真っ先に影響されたのは保科だね
前回はあれだけ死こそ全て!な感じだった彼が生きるを覚悟して戦う様は将としてとても気持ちの良いもの
将が変化を遂げているから諏訪神党の者達も同様。狐次郎が生きるに必要な助けをし、敵の将に助からない道を用意した彼らの変化は逃若党があの戦いに参加した最高の褒美に思えたよ
一方で逃げ生きる事を不利な結果とさせたのが吹雪の策か
清原の無能を見抜き、彼が生きる為に逃げるよう仕向けた。それは逃げが必ずしも良い未来を導くとは限らないと示すもの
だとしたら、保科に気持ち良い負け戦を教え、諏訪明神の力になると宣言させた今回の負け戦は良い未来を引き当てた逃げだったと言える
この経験は鎌倉奪還に役立つものになる、そう思える回でしたよ
まこと祖父のお洒落具合には驚かされたよ。あの小さな家に展開されていたのは彼が作った夢の国だね
でも、それは家族からの理解を諦めた空間。その極地たる光景は揺らぐ性別に生きるまことの目を輝かせるものとなるけど、一方でその姿はまことに自分はどう生きるべきかと考えさせるものにもなるね
若き美香が受けたショックは想像に余りある。きっと彼女にとって「可愛い」と「私」は結び付いていただけに、可愛いに踏み込んできた父親はおぞましい侵略者
なのに息子がかつての父と同じように異性装へと突き進む様はトラウマを刺激する
ただ、その瞬間に彼女は父も息子も理解の範囲から外してしまった。その人らしい生き方の先に幸福が有るかもと考えられなくなった
祖父の暮らしは可愛さに溢れている。でも大事なものを捨てたという彼の生活に寂しさがあるのは確か
不器用な言葉で娘の今を知ろうとして、まことが自分をどう思うか探って。そして別れの時には控えめにまことを留めようともした
その姿からは大事なものは捨てたと言いつつ、大事なものへの未練を感じさせてしまう
祖父の姿はまことにとって辿り着くかもしれない可能性の姿。自分の可愛いを極める在り方はまことを魅了するが、まことは1人の生活で可愛さを求めるのではなく、理解される中での可愛いを求めたわけか…
改めて勇気を持って母と向き合ったけど、このとき美香も勇気を持ってまことを理解しようと努めていたと判るね
父との最大の違いは彼女にとってまことは幸せを願う対象であった点かな
異性装を理解できない美香もまことが幸福に成るべきだとは理解している
だから異性装を身に纏う先に幸福が有るのかと疑っていたようだけど…
ここでまことが様々な衝突を経て手にした当たり前の学校生活が活きてくるなんてね
まことは皆と違う姿をしていても幸せになれるかも知れない。その可能性を示せただけでも本作には大きな意味が有ったと思えるよ
まことの件については一定の終着を見せたけど、流石に咲や竜二の件についてはアニメで描ききるのは難しかったか…と思わせての映画化決定には本当に驚かされたよ
幾つもの諦めが複雑に絡まったこの物語にどのようなハッピーエンドを示してくれるのか、今から本当に楽しみですよ
狂信者ってこういう風に作るんだ……となんか妙な納得感を覚えてしまったよ。勿論、アインズは彼女をそういう風に作り変えたかった訳じゃないんだろうけどね(笑)
直裁に表現してしまえば盛大な茶番劇が描かれていた印象
オーバーロードシリーズは圧倒的な強者集団であるアインズ・ウール・ゴウン魔導国がどのようにして普通より幾らか強い者達を蹂躙するのか、そして相対する者達はどのように滅びの道を歩むのかという点を描く作品であると認識していたりする
つまりはアインズ達が向き合った勢力は滅ぶか従属するか以外を選べない。ただし、毎回同じ方法で敗北させるのではなく、その時々で相手に合わせ最適な方法で蹂躙が行われるのだけど、聖王国で行われたそれは最高の茶番であるが為にアインズ視点で見るか、聖王国側の視点で見るかによってかなり印象の異なる内容となったね
物語の進行は殆ど聖王国で行われるだけに魔導国側の登場人物は少ない。その分、聖王国側の変化は充分に描かれているね
その変化が最も象徴的に描かれているのはアインズの従者を務める事になったネイアか。彼女は聖騎士団では不遇な立場にあった為か聖騎士団が掲げる正義には疑問を覚えていた。それだけに全く異なる信念によって行動するアインズに惹かれる要素を持ち合わせていたと言えるのだろうね
作中でネイアが段々と傾倒していった「弱者は悪」「強者且つ道徳性を備えた者こそ偉大」との考え方。聖王国側でこれに適合する人間が少しでも居れば彼女の境遇は変わったかもしれないけど、そもそも魔導国を相手取った時点で強者の側に回るなんて不可能だからなぁ…
というか、キービジュアルの中央に居るカルカが序盤であっさり退場するとは思わなかったよ。彼女って公式サイトの説明に拠ると国内最高戦力とまで謳われているのに…。そんな人物が早々に脱落する程度なら聖王国はどうやったって強者には成れない。アインズのような存在に擦り寄るしかない
強者でない時点で選択肢は絞られていく。それでも足掻こうと思えば、人質少年の父親のように戦うしかないのだけど、それだって亜人相手にすらほぼ通用しないわけで
このような聖王国の状況ではネイアが狂信に傾倒してしまうのは仕方ないように思える
滅びに突き進む聖王国において、それでも足掻こうとしたのがレメディオスと言えるのかな
ただし、彼女の考え方がネイアと両極端と言える程に異なる点が聖王国敗北までの物語を面白くしているね
レメディオスって正義の考え方がかなり凝り固まっているだけで、それ以外の点については柔軟性も有るし決断力も有る。ただ、彼女に致命的に足りていなかったのは己自身の力と強者であるアインズへの敬意か
彼我の実力差を察せずアインズを利用しようとした時点で彼女はどうしようもなく敗者。逆にネイアがアインズへの敬意から様々な加護を与えられ結果的に信仰のシンボルになった事を思うととんでも無い差である
彼女に正しさが有るとすればアインズに頼るのをヤルダバオト戦に限ろうとした点かな。その考えはすぐに瓦解するのだけど聖王国が辿った道を思えば正しかった。ただ、それを実現するだけの力がどうしようもなく足りなかっただけで
やはり本作は弱者に厳しい……
望みを叶えるには他を圧倒するだけの強さが必要。それを最も体現しているのがアインズだね。
魔導国のトップとして君臨し、強大な力を持つ階層守護者を従える彼はあらゆる望みを叶えられる立場。だから今回のような茶番を仕掛けられるし、彼自身に深い考えは無くてもデミウルゴスの計画に沿って動けば彼にとって都合の良い状況は次々と作られていく
その強さは弱者を魅了するもの。聖王国の兵士達は圧倒的な力を持つ彼に歓声を上げるように成るし、人間を苦しめる亜人の群れはアインズを阻む壁にも成りはしない
そしてアインズの願いを叶える象徴的存在になったのはネイアだね
本作においては、階層守護者がアインズの深い考えの無い行動を「深謀遠慮だ!」なんて持て囃す事が有るのだけど、今作ではネイアがその役に就いている。でも、彼女の場合は「深い考えがある」と感心するのではなく、「これぞ強さの有るべき姿」だと狂信する
彼女の在り方は変質する聖王国を体現するものだね。だからラストで彼女がアインズの伝導者となっているのは納得の光景
まあ、その光景は視点を変えれば身の毛がよだつような代物では有るのだけど
こうまでアインズが他者を蹂躙する様を描いてしまうと、寒々しい気持ちになったって不思議ではないのだけど、本作が抜かり無いのはそんなアインズでも叶えられない願いが描かれた点か
ルーン装備を広めたいのにネイアの忠心やらシズの不器用さが邪魔をしてしまう様は面白おかしい。特に頑固なネイアの否定に時が止まって、更に酷い小芝居で負けを装うシーンには声を上げて笑いそうになったよ
他者を蹂躙する強さと間の抜けたギャグを両立させてくる本作は本当にファンを楽しませてくれる作品ですよ
殺し合わない敵対関係、白夜もミラも辿り着いたのは敵意なんて露ほども無い穏やかな日々
白夜はミラにやられているし、ミラは白夜にやられている。互いに負け続ける関係。最終回だからといって特別な事は何も無いのだけど、それこそが二人が辿り着いた優しさに満ちた敵対関係なのだろうね
白夜とミラ、二人の視点が描かれた今回だけど、それによって描かれる内容に大差はない。言い換えれば二人共一つの場面に対して似たような事を考えている
相手の優しさに嬉しくなって、相手の笑顔に多幸感を覚えて
それはどちらが勝ったも負けたもない状況。かといって引き分けというわけでもない。互いに負けているようなもの
世界を救う魔法少女と悪の参謀が仲良くなって、行き着いた先は互いに負け合う関係。相手から得られる幸福に浸り、相手に参ってしまう二人の様子にはこれから先を期待してしまう
だからこそ、不本意な終わりを迎えてしまった原作を基に、終わらないラストを提示したアニメ版の優しさには感無量の気持ちとなってしまいましたよ
カオスも度が過ぎれば言語化した感想が難しくなる…
そんな最終回はもはや無法状態となっていたよ。最終回詐欺に唐突な謎設定にそして全キャラ大動員。最終回あるあるななメタネタを多分に含みつつも展開されているだけに、言葉での説明が難しい…。というかせんとくんのインパクトが強すぎた(笑)
前回の前フリは何だったの?という調子で始まった今回はもう本当に好き勝手やっているなという印象
ただ、面白いのはのこが好き勝手やっているのではなく、制作側が好き勝手やって、のこが被害者になっている点。のこになら何でも有りという認識がこの最終回を作らせている
いわば、のこは自分が振り撒いたカオスにしてやられた形となったわけだ
その構図を打ち破る様が最終回の醍醐味になるわけでも無いのがまた別の意味で面白い
虎子が意識するのは部活の維持ばかり、餡子とめめはそもそも勝負に興味がない。最終回なのに全く一致団結出来てない
そんなダメダメな状況で過剰な暴走をするのこをゆるキャラ大先輩のせんとくんが強烈なダメ出しで締めてくれる様は何というか本作の終わらせ方として逆に有りだったのかも知れない…(笑)