一部界隈では大人気の悪役令嬢モノ。本作はそれに則った作品なわけだけど、こうして見ると悪役令嬢モノとして必要とされる要素を第一話で判りやすく示しているね
物語的には悪役ポジションだからどうしたって最後には不幸になってしまうのは決まりきっている
だからそれを回避するためには並々ならぬ努力が必要だし、時には本来のヒロインに恋するヒーロー達を奪わなければならない
ただ、ここで打算的に動いたらそれこそ悪役なわけで
カタリナは憎めない天然タイプだけど、キースに手を差し伸べる姿は格好良く主人公然としているね
本人としては破滅フラグを回避しているつもりが主人公が立てるべきフラグを成立させてしまっている面白さ
こうなってくると他のヒーローともフラグを立ててしまうんじゃないかと思うけれど、そうなってしまったら今度は本来の主人公との兼ね合いが問題となってくる
本作がどのような方向へ進んでいくの興味が湧いてくるような第一話だね
何はともあれ、悪役令嬢なのに畑を耕したり、木登りする姿があまりに元気溌剌としていて微笑ましい気分になってしまうのでした
原作既読
ベテラン漫画家の久米田康治先生の自伝的要素を含みつつ、でも自伝じゃないしギャグ漫画でもない作品の正体は可久士と姫の遣り取りがとても尊い作品なのです
下ネタ漫画を描いている事を隠すために二重生活ならぬ二重仕事をしている可久士
何があっても姫には描く仕事をしていると知られてはいけないと必死に漫画に関わる物を隠そうとする可久士の姿は面白おかしい
と言うより、ベテラン漫画家である久米田先生が描く漫画家あるあるネタが本当にツボにハマる(笑)
漫画家として色々な作品を作ってきて、色々なやらかしのある久米田先生だからこそ描けるあるあるネタの数々は漫画を好む人には容赦なく刺さりそう
そうしてしょうもない漫画家ネタで話を転がしつつも要所要所で姫の純真な発言で話を締め、それに対して可久士が父親としての言葉を返す
コメディ描写とは全く異なる空気感で描かれる後藤家のゆったりとした親子の時間
これがとても尊いものに見えるからこそ、姫が可久士の隠し事を知る未来の話へ本編がどう繋がるのか気になる作りになっているね
ペテルギウスや指先を打倒しながらも死んでしまったスバル
あと一歩という所まで行ったからこそ、今回のエピソードからは「今度こそ!」という想いをひしひしと感じるね
死に戻りを理解してすぐに意識憑依について話したスバル。また指先が居る場所にも先回りして行動を封じている
事前準備の無い情報開示には危うさを感じるが、彼が「今度こそ」ペテルギウスを確実に倒したいとの想いがあるからか
意外に見えたのはエミリアの前に出たこと
エミリアとの間に色々有ったスバルからすればエミリアの前に出るのも緊張する筈。その緊張を無視しても村人に嫌われていると考えているエミリアを説得し、且つ子供達にも根回ししてるなんて随分周到に思える
でも、それもやっぱり「今度こそ」失敗したくないから
それらの労力は正しく報われる
村人は事前に逃し、商人に紛れていた指先も騙す
ペテルギウスにも前回より慎重に接近し、対策としてユリウスとの協調も充分。
全てが前回よりも素晴らしい出来栄え。それらの描写は終盤の物語を彩るに相応しいものだね
23話も22話と同じ構図が続く。
スバルは望む場所に至る為に更にユリウスに踏み込みつつ、ペテルギウスの指先に懐に挑み続けなければならない
それだけでなくハーフエルフを恐れる村人達の心にも踏み込まなければならない
それらを越えないと手に入らないものが有る
流石にこれらは難行となったけど、ここでも助言をくれるフェリスやスバルの言葉を補強するラムの存在が力強い
諦めず、下を向かず、戦い続けたスバルだからこそ到れる局面
遂にはユリウスと曖昧な言葉だけで意思疎通が図れるようになった描写からはスバルの著しい成長を感じさせたね
遺恨ある相手との和解、ペテルギウスや指先との戦い。幾つもの試練を越えた先に待っていたのはまさかのスバルが操られるという展開
ようやくエミリアの前まで来たというのに……
スバルは自分が死ぬしかない状況を越えられるのだろうか?
因縁有るユリウスと行動を共にすることになったスバルが向かうのはこれまた因縁有るペテルギウスの元
けれどそれらを越えた先に待つエミリアにこそスバルは謝らなければいけないわけで
スバルにとって試練となる回
スバルがまず踏み込んだのはユリウス相手だね
ただ、この場面は先に礼を口にしたユリウスの方が大人か。彼の言葉があったから、スバルも彼に対して以前の非礼を詫びることが出来る
両者が互いに譲り合い、そして踏み込んだ為に越えられた遺恨
大嫌いだと伝えあった事で二人の丁度いい距離感は定まったようで
次にスバルが対峙したのはペテルギウス。恐怖も憎しみも有るはずなのに、それらを越えて囮となる道を選んだスバル
ここでも彼が相手の懐に踏み込んだお陰で奇襲は成立する
スバルの姿勢が打倒ペテルギウスへと繋がったわけだ
ただ、ここで終わらないのが厄介な驚きであったけど……
因縁が終わらないなら、味方を死地に追いやった悔恨があってもスバルは姿勢を変えてはいけない。変わらずに戦い続けなければならない
ヴィルヘルムの言葉は俯きかけてしまったスバルに必要なものだったね
最終回ではどんなキャンプをするのかと思いきや……
良い意味で野クルらしい、へやキャンらしいキャンプになりましたな
場所は校庭で、食べるのもツナ缶鍋にマシュマロと手が込んでいるわけではない
それでもいつもと変わらず温かいキャンプ模様に見えるのは梨っ子スタンプラリーでの蓄積が有ったからこそ。ぱっと見は寂しいキャンプでも、ラリーに関する思い出話や裏話をするだけで楽しい空間になる。想いがこもったキャンプになる
楽しいをたくさん教えてもらったなら、今度は自分が知ってる楽しいをたくさん教えたくなる
野クルがなぜこれ程までに「楽しい」に満ちた空間であるか、伝わってくるかのような最終回だった
白鯨が三匹になってもスバルの戦意は消えないまま
多少の強がりは有るだろうけど、「このくらいの絶望で」と豪語できるのはこれまでに歩んだ道があったからこそ
そして最も弱い彼だから、天高く避難する本体を見つけられるし、兵士たちの士気を取り戻す象徴にもなれる
スバルの抵抗と同時に描かれるヴィルヘルムの過去。
守るために剣を手にしたヴィルヘルム。だというのに彼の前に現れたか弱いように見えたテレシアは彼よりずっと強く、剣の運命に囚われた存在
ヴィルヘルムは現在で白鯨の支配に抗いつつ、過去ではテレシアを縛る運命にも抗う
閉ざされかけた未来を手にすべく先陣切って戦うスバルが居るから、ヴィルヘルムもあるテレシアとの遣り取りを回顧しながら初期衝動を掴み直し白鯨へと挑む
この瞬間、ヴィルヘルムにとってテレシアとの逢瀬は過去ではなく現在となり、愛の言葉を捧げる未来へ繋がるわけだね
白鯨の消滅と共に終わる夜
なら次にスバルが向かうべきは魔女教の脅威
スバルを奮い立たせてくれたレムは傍に居ないまま旅立つことになるとは。
遺恨有るユリウスやこれから対峙するペテルギウスにスバルは何処まで抗い、未来を掴めるのかな?
高い空からやってきて、スバル達の未来を押し潰し飲み込むかのように襲撃する白鯨
それに対し、未来を切り開きその手に掴むが如く突き進むスバルの姿が格好いい
巨大な白鯨に対して一番槍を取ったスバルとレム。二人を追うようにしてクルシュ達は照明弾で夜を引き裂いた
それはあたかも白鯨に支配され閉ざされていた未来への道が開かれたかのよう
だからか、照明弾で夜が消えている間はヴィルヘルム達の攻撃はよく通る
それが変わるのは白鯨の霧によって再び夜が訪れてからだね
白鯨の攻撃で存在が消される兵士が続出し、残った兵士たちは恐怖に縮こまる。
おまけに精神攻撃まで受けて阿鼻叫喚の地獄絵図。
白鯨が支配する夜の時代が訪れ、未来は閉ざされたかのよう
この状況を再びスバルが変える展開は素晴らしい。
夜に包まれたままでもスバルはレムと共に白鯨に抗う
スバルが開いた道に付き従うかのようにヴィルヘルムも再び剣を振るう
スバルの行動は白鯨に支配されていた時代への抵抗をそのまま表現している
幾つも有ったはずの空白はあっと言う間に埋められて、スタンプカードは遂に完成
と、同時にスタンプラリーの裏が明かされる展開
風変わりな場所ばかり巡ると思っていたら、そういった事情がありましたか
全ては山梨県民になったばかりのなでしこに山梨の良い所を沢山知って貰い、梨っ子にする為のちょっとした計画だったわけだね
このラリーを通してなでしこは充分に山梨の良い所や楽しい所を知れたんじゃなかろうか?
次回はへやキャンなのにキャンプに行ってしまうのかな?それはそれで有りな気もするし、いつものように野クルのメンツで駄弁っているだけでも満足な気もするし
何はともあれ、ラストはなでしことリンの会話で締めて欲しいかも
これまでのような死に戻りからのリスタートではなく、心機一転からのリスタートを始めたスバルの交渉術が輝かしい
過去の経験や見てきたものから相手の欲しているものを推測し、それに見合った対価を用意した
アナスタシアに教えられた点も正しく実践できているね
19話ではスバルだけでなく、様々な人物がリスタートを迎えようとしている点が印象的
ヴィルヘルムに始まり、かつて大切な者を奪われた老兵達
彼らは単純な復讐の為だけではなく、悲願を叶え、大切な者に顔向けできる自分になろうとしている
この状況をスバルが作り出したのかと思うと感動的
新しく何かを始める為にはそれまで蔓延っていた何かを終わらせなければならない
スバルが先頭となり、白鯨に蹂躙されてきた歴史を終わらせようとしている
その行動は同時に自分の弱さに負けてしまったスバルの過去からの脱却であり、終わりであり、新たな始まりである
この戦いを通してスバルが手にする新しい自分がどのようなものか次回が待ち遠しいね