サービス開始日: 2016-04-05 (3608日目)
くくると風花の成長物語をベースとして、海と水棲生物を通して多様性と人としての寛容や優しさを描くテーマは”心の海”という言葉と共に強く印象に残り、またおじいの振る舞いに象徴されるように正しさを強調するような価値観の押し付けがましさがないのも好感が持てました。
一方で脚本の弱さは作品を通して気になったところ。良くも悪くも生真面目で行儀が良過ぎるというのでしょうか、登場人物も物語も深掘りしたり作り手としての個性を出すことなく淡白に終わってしまった感じが否めず、視聴者を作品に引き込む訴求力にやや欠けるかなとの印象も。
そういう意味で、テーマはすごく好きな一方で歯痒さも残り、なんとも惜しい作品という印象です。個人的なハイライトは12話、23話になるでしょうか。
物語としての決着はほぼ前話でついていて、最終話は全編エピローグといった印象。意外な展開や事実に驚かされる事もなくファンサービスも控え目で、終幕へ向けて穏やかに淡々とエピソードを紡いでいく生真面目さがこの作品らしい終わり方だなとしみじみ。
空也と夏凜の絡みはちょっとニヤニヤしました。最後、再会シーンでの紙飛行機は監督の過去作を思い起こさせますね。結構好きな演出です。
楠芽吹や乃木若葉のような新しい人物の視点を入れて物語の大きな流れに奥行きを出しつつ、前作までに残されていた伏線を回収しての大円団。1期2期はどんでん返しの締めでモヤモヤも残りつつだったので今回しっかり完結してのスッキリ・満足感はひとしおでした。
しかしまあ、スッキリする為に7年も待たされた事を思うともう少し構成どうにかならんかったのかと思わんでもないですが。本シリーズこそ一気見というかまとめて観るのに最適な作品なのかも。
勇者は戦いだけでなく平和になった後も復興への一歩という次代に希望を紡いでゆく役割が続いていく、という少し遠くを見つめた終わり方が世代を超えた大きなストーリーを描いた物語に相応しく素敵な結末だなと思いました。
すみれの晴れ舞台。一人前の舞妓さんになり美しい姿で皆に囲まれている百はなはなんだか遠い存在の人になってしまったような一抹の寂しさも。けど台所をふらっと訪ねてくる時はいつものすーちゃんで安心する。隅の方でコソッと彼女を見守っているキヨが微笑ましいね。
吹っ切れた姫乃が陶芸に取り組む姿はいわゆるゾーンに入った状態のよう。「自信があるから一度作った作品を捨てられる」日々取り組み続けるとある時(壁を越えて)見えている景色が今までと違っている事に気づいて驚く事がありますが、姫乃にとってまさにその一瞬だったのかなと。
娘の親離れに戸惑う父の目線やライバルの存在に気付いた久々梨の目線も描く事で、姫乃の成長する姿に奥行きをもたらしているのがまた素晴らしかったです。特に久々梨は8話の十子先輩のエピソードでもそうだったけどピンポイントでいい役回りしてて印象に残ります。
先週の白い砂に続き、アクアトープのタイトル回収、水族館の存在意義や生き物を知る事の意味を見つめ、そしてくくると風花の自立、と一気に物語が昇華し始め色々なシーンや台詞が沁みる回でした。
くくるは営業の仕事を続ける事に。環境問題を学び副館長のエピソードを聞いて、より広い視野に立った時、直接世話する飼育だけでなく営業の仕事も生き物を守る為の大きなやり甲斐を秘めていると思い至ったよう。以前館長が呟いていた大きなアクアリストへの一歩を踏んだのかな。
MTGでの館長のスピーチも心に残ります。多様な生き物の存在を知ることは自分と異なる他者への想像を働かせ理解しようとする力に繋がる。生き物を好きになる事は優しい人になる事、おじいが言っていた意味がようやくわかった気がします。
そしてくくると風花の自立。何度も風花に背中を押してもらってきたくくるが今度は自ら風花の背中を押す。12話の空港では実現しなかったシーンがとうとう。それぞれ挫折を経験しながらもくくると風花、二人の成長物語が一つの形として結実したかと思うと感無量でした。
ラストで見せた不思議体験は、ある意味対照的に描かれてきた物語の前半と後半、そしてくくると風花の成長物語と、母なる海と水棲生物をモチーフとして多様性と人としての寛容を伝える、という二つのテーマを合わせ最終話へと繋ぐ素敵な映像表現だなと。
すみれを探してキヨが彷徨う夜の京都の街が綺麗。気張るのも元気であればこそ。夕食を作ったりコバラおやつを用意してくれたり、心を砕いて毎日を支えてくれるキヨへの感謝の想いがすみれの願い事に感じられて、そんな二人の関係がホント素敵です。