視聴者を容易く翻弄してくるあおいのホラに笑顔が止まらない
足湯でのホラは「ああ、いつものが始まった」と身構えられたのにラストのホラは予想外過ぎて……(笑)
なでしこはホラを人を笑顔にするものだと受け取ったけど、あおいの場合は他人の都合よりも単純に自分が楽しいと感じる最高のタイミングでホラを吹いているような気がするよ…?
まあ、それが結果的に周囲を楽しませているのだけどね
王城の中はスバルの理解していないルールばかり。これまでは無理解のままでも成功してきた啖呵や口上もここでは不利に働く。騎士団を侮辱してしまうし、エミリアの望まぬ言葉を口にしてしまう
スバルの無理解さはエミリアを恐るべき存在ではないと示す言葉となるが慰めにもならない
王城のルールを理解せず、そしてエミリアの胸中も理解できず。だからスバルが口に出来るのは自分が知っている、これまでの行動の成果だけ
でも、そんな驕りを口にして「何故か」自分の為に助けになりたいというスバルをエミリアは理解できない
二人の擦れ違いは決定的となってしまう
お人好しすぎて損する性格な二人がここに来て互いの為を思って行動したことで結果的に相手の望まぬ行動をしてしまう
これからも無理解の連鎖が続いて更に擦れ違ってしまうのか、それとも相手の行動の根幹を理解することはあるのか。物語の分岐点であるように思えた
王選を前にして王都に行くことになったエミリア。彼女の為になりたいと考えるスバルは必死に彼女に付いていこうとするのだけど……
擦れ違いが積み重なっていく二人の様子があまりに辛い
そもそも二人のすれ違いは早い段階から始まっている。
魔獣騒動の有った村への貢献を自覚していないスバルとそんな事はない、判っている人は居ると否定するエミリア。この程度の違いはまだ微笑ましい
けれど、二人の見えているものの違いが垣間見えるシーンでもある
エミリアはスバルに王選の事を何も話さない。遠ざけ、知らせない事で王選の中で生じるだろうゴタゴタからスバルを守ろうとしている
対してスバルはまずエミリアの傍に居ようとする。そして王選の事を知らなくても無理が出来れば助けになれると思っている
この二人の認識の違いはこの回でずっと続く。擦れ違ったまま状況は進んでいくものだから、王選を理解しているエミリアと理解していないスバルの間には分厚い壁が作られていく
遂にエミリアは「私を信じさせて」なんて言ってしまう。つまりスバルを信じられなくなる直前ということ
亡霊が鉄骨を持って跋扈する現実に勝る、鋼人七瀬など存在しないという虚構を求められる琴子
推理モノである本作で必要とされるのは真相ではなく、真相を覆す嘘であるという点は面白いね
琴子は虚構を立ち上げるために事前に事件について調べ、紗季から警察の捜査状況も知った。更に現場を見ていた亡霊の証言も得ている。普通の推理モノなら充分すぎる証拠だが、琴子が求めるのは真相ではなく虚構。
真相に繋がる物証よりも虚構をぶち上げる論拠を探している。極論、犯人すら必要としない
人々の納得を必要とするのだから、そこには合理的な解釈が求められる。合理的であれば人々は信じてしまう
そもそも、私達はニュースや本で見る情報のそれらが真相だから信じているのではなく、合理的だと感じたから信じているわけで
それを考えると琴子の狙いも充分成立しそうな気もする。これもある意味、視聴者が琴子の主張を「合理的だ」と感じたから納得できる展開とも言える
けれど、怪異なんて頭から信じないと決めている人間は別なわけで
寺田は怪異が跋扈する現実を信じず、人間が起こしているという虚構を信じ行動した。だからこそ、鋼人が本物の亡霊であった為に寺田は倒れた
生半可な虚構では立ち向かえないという突きつけられたシーンであるように思えた
これまでは現実に鋼人を見た者は少ないから、怪異の存在する現実を打ち破る道も容易かった。けれど、寺田の死によって怪異が人を殺す現実を虚構によって別のものに塗り替えねばならなくなった
鋼人七瀬対策が難事件に跳ね上がった事で物語は益々面白さを増していくね
あおいと千明の馴れ初めが明かされる回
なんてことのない、小さな事故から始まったと思われた二人の関係。その実、もっと前に踊るような気持ちの中で出会いが有ったというのは胸が温かくなる描写
本当に大切な思い出ってそうそう口に出さないものだよな~、なんて思ってしまった
自販機のラッキーチャンスは嬉しい出来事だったけど、覚えていたのは千明だけ。けれど、今はラッキーチャンスなんて無くても三人は並んでジュースを楽しそうに味わう。そんな野クル三人組の姿に思わずほっこりとした気分になるね
モデル活動をしながらもデザイナーを目指す心。初めてのショーが綾野麻衣であることから彼女のモデルとしての才能はかなりのものと推察できる
だから、彼女のマネージャーは心がデザイナーを志すことを気の迷いだと断じる
きちんと才能があるのに別の道に踏み入るのは誰に対しても失礼だと思える。けど、心はノートや部屋の様子から判るように恐ろしい程に本気。でも、その本気度は内面的なものだから他人には伝わらない
人に伝える為にはショーにデザイナーとして出るしか無い
育人は芸華祭参加者から貧乏だと笑われる。また、庇われたお礼をしたいと言えば甘いと批判される。育人の在り様は浮いてしまう
それでも育人は自分の遣り方を変えない。参加費が生地購入費と知れば切り詰める気で居るし、感謝を伝える気持ちも変えようとしない
言われたから辞めてしまうなんて流儀は育人にはない
それは千雪にも言えること
背が低いからとモデルの道を絶たれかけた彼女だけど、ショーモデルとしては小柄と言われたセイラを手本とする道を選び、家でウォーキング練習を繰り返す
171センチですら小柄と言われる世界へ挑戦することを千雪はまだ止めようとしない
誰に何を言われても自分の夢を叶える為に努力と挑戦を止められない三人が揃ったことで物語が本格的に動き出したように感じられるね
レムはひたすら自分が持っていないものを求めてきた少女
姉のようになりたいと願い、役に立つ者になりたいと願い、最後には姉の角が折れたことに喜んでしまった少女
姉ならこう出来たはずだ、姉ならもっと上手く、姉の角さえあればと存在しないものを求め続けても際限が無い。
スバルにすぐに手を伸ばさなかったことを悔やんで暴走した果てにスバルとラムに助けられてしまったレム
その有り様は成長していないと本人を更に悔やませるものだけど、そんなことはスバルには関係ない
レム達の経緯を知らず、レムに助けられた経験を持つスバルは今のレムを肯定する
レムが拘泥するラムの姿を知らないと言い切り、爽やかな表情でレムの価値を認め、笑えと促してくるスバルは格好良い
小さい頃「見てて」と言って森で食料を取ろうとして失敗して以来、何もしなくてもいいと感じてしまった少女。けれど、スバルは今のレムだけを見て、今のレムが成した成果を基に彼女の努力を褒め、感謝の言葉を伝えた
ようやく笑えた少女の表情はとても素晴らしいものだったね
魔獣から子供を取り返してスバルも助かってハッピーエンド!……とならないのがこの作品の厳しさ
逆にスバルの余命が明確になったことでレムが追い詰められてしまう理不尽
助かった筈なのに余命幾許もない。それは命を失いかけているも同様
けれど、スバルはこれまで何度も命を失ってきた。そこでスバルは決して死に慣れるなんてことはなく、むしろ命の大事さや「その後」に至る尊さを知った
スバルには失いゆく中で得たものがある
ラムは鬼でありながら角がない。鬼のアイデンティティである筈のそれがないことをラムはあまり気にした様子はない。レムに頼りっきりの現状も「頼るしか無い」ではなく「頼ることにしている」と言う
その様子はラムの言葉通り「無くしたことで得たものもある」状況なのだろうね
失ったことで別のものを得た二人が死物狂いでスバルを失うまいと戦うレムを止めようとする構図は印象的
「カチカチ山」の話があっという間に「ウサギとカメ」と混同されてしまう描写には笑ってしまうし、写真撮影と見せかけてモノボケに走ってしまう三人娘にも思わず笑ってしまうね
育人がデザイナーを志す理由を中心に据えながらも互いに想い合う家族の絆を描くAパート
優しすぎるあまり、家族のために夢を諦めていた育人。そんな育人に憤りを隠せないほのか。どちらも夢を叶えて欲しいと思うから、相手に譲ってしまう
そういった大きなすれ違いを育人が柳田の所で働くことでお金の問題も夢の問題も同時に叶え二人を和解させる
更にはほのかが自分の選択に憤っていたことを知った育人が久しぶりに自分の口で自分の夢を語るシーンは良いね
デザイナーの世界が広がるBパート
展示会は育人に服が売れる瞬間を見せるだけに留まらず、新たな出会いも齎してくれる
類まれな才能を持つ独立志向の遠、モデルをやっていたのにデザイナー志望としてやってきた心
助っ人を探していた筈が育人が助っ人として駆り出されるかもしれない事態。そこに芸華大でのファッションショーの話も絡んできて、デザイン方面の話がどんどん広がっているね
スバルが8話で勝ち取ったものによって進む9話。呪いの発生源も判明するし、再び村へ行く際もレムが同行してくれる展開にもなった
居なくなった子供達を救出する際、スバルは子供達の夢を守りたいと語り、友達の心配を優先する意気を汲もうとする。それらを語るスバルは真剣な表情を浮かべる
そういった表情の中にレムはスバルの人間性を見つけていく。
やはりここでも笑顔ではなく、別の表情や行動によってスバルは信頼を勝ち取っていく
そういった積み重ねが土砂崩れを前にしてレムがスバルを押し、助ける展開に繋がるのだろうね
それはスバルも同じ。鬼となり殺戮を繰り返すレムに対してもスバルが躊躇なく助けようとしたのはこれまでの積み重ねによって鬼になったレムであっても信頼できると考えているからだろうね
幾つもの積み重ねによってここまで辿り着いたスバル。その頑張りはきちんと報われるのかな?
そして自分を助けてくれたレムに対してお礼を言う機会はあるのだろうか?