まさか本当に鹿児島まで行ってしまうとは……。その行動力には毎回驚かされる
桜を目指して南下する旅。温かい土地を目指したそれは同時に椎の心を温めるものになったようで
鹿児島を目指す長い旅。それは単純に長距離をカブに乗って移動するだけのものにならず、カブ乗りとしての心構えやカフェ経営の参考、琵琶湖の素晴らしい夜景を見せるものになる
それらは川に落ちて身体も心も冷えた椎の芯に熱を加えるものになる
遂に辿り着いた満開の桜。そこから椎が持ち帰ったのは桜の花びらだけでなく、カブに乗って最南端を目指した経験、そして旅の中で受け取った数々の熱。だから地元に戻れば鹿児島と同じように桜が咲いていたのかもしれないね
椎は無事、春になれた
小熊と同じようにカブに魅了された椎の姿にはちょっと吃驚。小熊にとってカブ仲間が増えたのは喜ばしいことだろうね
ないない尽くしだった少女がカブとの出会いをきっかけに世界を広げ、繋がりを広げ、自信と経験を広くした
カブという存在との出会いを契機とした変化をここまで描いてみせた本作には色々な意味で驚かされる3ヶ月間だったね
フェスティバルに向け同好会は上手く回り始めている。なのにずれを見せ始める侑と歩夢
最初は侑と歩夢の二人でアイドルへの道を歩み始めた。歩夢は侑との好きを重視したのに対して、侑は歩夢との好きを土台に更に好きの輪を広げてしまった。だから二人にずれが生じてしまったのだろうね
フェスティバル会場決めの為に街を巡る同好会。ここまで来てもやりたい事がバラバラなのは本当にらしいね。
そうして見えてくるのはやりたい事を統一せずバラバラである事こそフェスティバルの目指す方向ではないかという点。バラバラが逆に皆の好きを肯定する土台になる
一方で好きを統一しない事が侑と歩夢をバラバラにしていく流れが憎い……
今の侑が目指す方向性はどちらかと言うとせつ菜に近いね
自分の好きを侑や皆に知って貰いたくてアイドルを始めた歩夢と、自分や皆の大好きを肯定したくてアイドルを続けたせつ菜
アイドルを好きだという気持ちから同好会に入った侑が今や皆の好きを体現する場所を作ろうとしている
だから侑と歩夢は同じバスに乗れず、標識が示す行く先は異なってしまう
今の侑が何をしているか歩夢は知らない。むしろピアノの件でせつ菜の方が侑をよく知っているように見えてしまう
好きがバラバラなままなら本当に二人は離れ離れになってしまうかもしれない。それを嫌がった歩夢が口にした独占欲のような我儘
好きの和を大きく広げようとしている侑にとって難しい分岐点となりそうだ
ファイドの停止から始まる最終話はやはりスピアヘッドの終焉が描かれるものに
そんな時に訪れた学校跡はクレナ達の子供らしさを強調するとともに、彼女らにとってそこが学びの場ではなく戦地における休息地にしかならない点が露わになる流れは残酷
食料は限界を迎え最後のドロップは口に含まれハイキングの終わりが訪れた
でも前には進めるから彼らは運命共同体で居られた。けれど、その中でシンエイだけは別の運命も見通す事が出来た
絶対的な死と高確率の死。それらを並べた時にシンエイが願ったのは仲間が僅かでも生き残る可能性
それは死神が役割を放棄した瞬間なのかもしれない
でも、ライデン達にとって変わらずシンエイは運命共同体だから見捨てるなんて出来ない
だから戦場に立つのだけど、唯の歩兵でしか無い彼らは囮にも成れず散るのみ……
馬鹿だけれど最後は一緒に散った彼らは本当に死んでしまったのだろうか?そしてラストの首なしはやはり……
それだけにようやく隔絶を越えて86の拠点まで辿り着いたレーナには驚かされる
既にスピアヘッドは居ない。それでも彼らの痕跡を探し続けた彼女に褒美の如く与えられたスピアヘッドとの対面
一方でこれがレーナにとってはゴールではなく、長い長いスタート地点に立ったのだと判るラストはいずれ来る続編を期待させるものだったね
個別エピソードが終わった事で始まる全体エピソード&合宿!……の筈が和気藹々とした旅行みたいになってしまうのは流石に如何なものかと思うけど、こうして皆で一緒に居る時間を最大限に楽しんでいるからこそ、同好会の纏まりは成立しているのかもしれないね
遊び要素に夢中になり過ぎて疎かになりそうな練習要素に目を向けさせるのがせつ菜の役目であるのはいつもどおりなんだけど、そこで侑も同好会の方向性に目を向けさせるような発言をちょくちょくしている点には注目してしまう
今の同好会を引っ張っている存在はせつ菜と侑で有ることが判る
そしてせつ菜と侑は夢や遣りたい事の後押しを互いにしている
侑はせつ菜のステージを見たからアイドルを応援したい夢が始まって、せつ菜は侑に応援されたからステージに立つことが出来た
今の二人はとても良いパートナーとなっている
……だからそんな二人を見て歩夢が表情を曇らせてしまうのはある意味当然だったのかもしれない
侑とせつ菜の夢を中心としてバラバラだった個性の集いである同好会は纏まり始めた。けれど、歩夢は……
二人の思い出を二人のものと考えていた歩夢と二人の思い出があったから繋がりの輪が広がったと考える侑
同好会としては纏まりつつも、侑と歩夢の心が離れつつ有るのが気になるね…
自由になっても限られた資源の中では進める距離も限られる。
そんなシンエイ達を立ち止まらせた大きな川。それはまるで三途の川を前にして逝くか戻るかの選択を突きつけられているかのよう
レーナは登場しなかったけど、それは今回の内容が死者の国に程近い場所で繰り広げられる関係だろうか
死の任務を潜り抜け兄を弔った今のシンエイはどこか空虚。でも、その空虚さが年相応の少年さも見せているようで複雑になる……
他のスピアヘッド隊員達は少年少女らしさを持ちつつ日常の中に死の戦争を組み込んでいたように思うのだけど、兄に殺されたかけたシンエイは最初から死の国に半身を置いていた
兄の呪縛から開放された事でシンエイの心の行く先は無くなってしまったのだろうか
それでもシンエイが生きている自分を預けられる存在となったのがレーナの筈なのだけど、彼女とは完全に離れてしまった。だから今のシンエイは生に背を向けて死に歩いているようなものなのかもしれない
これまで86の仲間達を葬送していたのはレギオンに脳を取られない為だったけど、今回の葬送はそれとは別。完全にシンエイが死神となってしまったように感じられたよ
シンエイやスピアヘッドを最初からずっと見守り続けたファイド
彼の中に留められた記録は戦いに身を置くしか無かった86がいかに普通の少年少女であるかを教えてくれると同時に、厳しさを増す戦況の中で少年少女が何を失っていったのかが判るようになっている
いわばスピアヘッドの生き字引であるファイドが壊れる時は即ちスピアヘッド崩壊の時であるように思えてしまうが……
冬の試練はその長さにあるという事だけど、その意味は冬の厳しさに一つの対策を立ててもまた次の厳しさがやってくるという意味なのだろうね
寒さ対策が完了したと思ったら次は積雪ですか。カブ乗りにとって冬がいかに厳しい季節か伝わってくる描写ばかり
雪道を走る小熊の様子は非常に危なっかしい。重大な事故でも起きるんじゃないかとハラハラさせられる程
だからこそ、その後に登場するタイヤチェーンの頼もしさったらないね。そりゃ礼子も小熊もテンションが上がって雪中で遊び尽くしてしまうというもの
厳しい冬であろうがカブで楽しみ尽くす二人の様子は輝いている。そんな二人に影響されて椎が走る楽しみに目覚めるのは納得の展開。更にイタリアの領土拡大計画も順調に進んでいる点は微笑ましいね
でも小熊達の楽しいカブ生活は様々な冬対策の上に立脚する楽しさなわけで…
危機的状況に陥ってしまった椎の為に小熊が出来る事は何があるのだろう……
これまで個別エピソードを積み重ねてきた本作。仕上げとなったのは同好会の代表としてステージに立つ事を意識した状態でのソロライブ
そこには責任やプレッシャーが伴う。だから生半可な覚悟では挑めない
今回は果林や同好会の絆が見えるエピソードとなったね
誰がステージに立つのか、と選ぶ段での果林の言葉は厳しい。それは3年生としての責任も感じさせるし、既にモデルとして活動している実績に基づく認識も有るのだろうね
ただ、あの場では果林がはっきり言い過ぎたせいで果林がハズレくじを引いてしまった感もある。それをきちんとフォローする後の場面や侑の発言は良いね
果林はしっかりしているように見えて実は方向音痴な側面が見えたり、他のメンバーに追いつくためにこっそり練習していたり
仲間たちに物を言うだけの努力をしているし、時には仲間の助言が必要なタイプである点も見えてくるよう
だから、侑達は果林が忠告してくれた事に感謝を伝えられるし、同好会がステップアップする為に皆で相談しあおうと提案できるのだろうね
代表としてステージに立つ事になった果林。一人だからプレッシャーに一人で立ち向かわなければならないように思えてしまう
でも、同好会の代表として立つならそこには支えてくれる仲間がいる。そして仲間達はライバルだから、情けない姿は見せたくないと思う
果林も、そして同好会も大きく成長した話となったようだね
ああ、いつの間にか審判の日になっていたのか
ヴィヴィとマツモトが100年掛けても変えられなかったものを既に戦争が始まってしまった段階から何かを変えられるのだろうか、と思ってしまう程に絶望的な状況ですよ……
変わらなかった悲劇が目に付いてしまうけれど、一方で変わったものも目立つようになっているね
博士は生存し、マツモトやエリザベスが存在する。何よりも100年を旅してきたヴィヴィが居る
それらは大きな惨劇の中で小さくても意味を持っているように思えてしまう
サルベージされたエリザベス。けれど今の彼女はサンライズ事件直前の状態。だから人間への対立意識を持った状態のままだった筈が垣谷の言葉が有ったから今は人間を助ける立場に変化している
そうして変わったエリザベスは今もエステラの最期を気にしていた。変わった彼女の変わらない部分が少し見えた気がしたね
そして……
正史から変わった存在、ヴィヴィとエリザベスが暴走していない事からマツモトや博士が物語の黒幕を暴き出す展開は良いね
「貴方を待っていた」と告げるアーカイブは何故人類を滅ぼそうとするのか。そこにAIと人類の対立は存在するのか。するのならば、ヴィヴィには何が出来るのか
ここから最終回までの話がどうなるのか楽しみだね
影だけ残し次々と消えていく光景には恐怖しか感じない……
今回の怪獣は街への破壊行為は行わない代わりに行っているのは現代の侵食。今を削り取られてしまうから夢芽達は過去に囚われてしまったのかな
そしてその過去は夢芽達にとって悔いの残る時間でも有ったというのは因縁めいている
ただ、悔いは悔いでも囚われた五人の過去風景は方向性が異なっているね
アンチやガウマの過去は史実とそれほど変わらないものになったようだけど、暦はあの時出来なかった選択をした。けれど、それによって何かが変わる事はないと理解したから現代に戻れたのかな?
対して蓬は軽々しく食事に付いて行った事を後悔しているが、迷わずに過去よりも現代を選んだから皆を導くことが出来た
最近は香乃が事故死ではなく自殺ではないかと探る展開になっていたから忘れていたけど、そういえば夢芽は姉を理解したくて過去への探求を始めたんだっけ
結局、姉がどうして死んだのかは判らない。けれど、ああして話し合えたことで後悔を懐きながらとか自分を嫌ったまま死んでのではないと判ったことは夢芽にとって大きな意味の有る対話となったのだろうね
夢芽達は過去を踏まえつつも現代を選び取ったから、現代に戻れて怪獣も倒せた
その中でガウマだけは少々毛色が違うような…
ガウマは過去の世界でも変わらぬ選択をしたから史実と変わらず優生思想を裏切ったのか?
いちいち覚えてないと言いつつ姫にこだわり続ける彼の心はまだ過去に囚われたままであるように思えてしまう