これまでは単純な居眠りキャラに見えていた彼方。けれど、その裏では夢を追うため家計を支えるため遥を助けるため奮闘していたようで
それは長女として当たり前の姿だったのかもしれないけど、今は彼方も遥も同じようにアイドルとして頑張っている
二人の境遇は瓜二つなのに彼方だけが遥を支えている
遥の決断は突然で極端。でも、あれっていずれ彼方がしていたかもしれない選択なんだよね。遥の決断を見て彼方が遥が辞めるくらいならいっそ自分がと思ったように、負担が大きすぎて遥を思うように助けられなくなったらいずれ彼方が決断していただろう事
それを遥が先んじて決断した
彼方も遥もとても似ている。似た意味を持つ名前であるだけに留まらず、境遇も夢も姉妹を想い合う様子も
それは本来なら素敵な関係の筈だけど、あまりに似ているから擦れ違う
だからあの局面で必要だったのは彼方が遥の想いを知ると同時に、遥に夢を追う気持ちは負けていないと見せる事だったのだろうね
似たもの姉妹は片方だけが支えるのではなく助け合う形に。そして姉と妹からアイドルの夢を追うライバルへ
これまでは似ているから衝突してしまった。でも並び立つ形なら支え合える
遥が作った卵焼きは不格好。でも、それを彼方は食べると言った。それに夕飯を作る際には助け合う約束までした
二人の姉妹愛が確かな成長を見せたエピソードだったね
季節は秋に。という事は小熊がカブに乗り続けてそれなりの期間が経ち、カブによって広がった世界に身を置くことに慣れた頃。つまり今の小熊は一端のカブ乗りとしての矜持を持っている
そこでカブへの憧れを口にする椎が登場する事で小熊の新たな一面が見える構図は面白いね
秋になって周囲は文化祭の準備に励んでいるというのに、カブの乗り心地や装備品にばかり目を向けている二人は何ともらしいね(笑)
そんな二人がカブ意外に目を向ける理由があるとすれば、それこそカブが関わる必要がある。だからって「原付きなんかで~」と言っているのを聞いてムキになる小熊は随分変わったと言うか、カブの事になると目の色が変わるようになったと言うか
クラスの一員として手伝ったのではなく、カブ乗りとして手伝った小熊だから椎への助言もカブ乗りの先輩としての含蓄を備えたものになる。あれらの言葉は小熊がカブに乗ることで世界の見え方が変わったから言える事なのだろうね
その一方で人生の先輩である先生の「困らせて欲しいのよ」という言葉にピンと来ていなかったのはちょっと面白かったかな(笑)
小熊からは抜けた部分があるように見えた椎。けれど、彼女は体の冷えた小熊達に最も必要な温かいコーヒーを持ってきた。それに文化祭のバールを立派に仕切っても居る
椎は小さな見た目に夏空のような大きな中身を持っていた
そんな彼女が今後どのようにしてカブを手に入れて、自分の世界を広げていくのか興味を持ってしまうね
この作品では86達の命が軽く消費されてしまう事はカイエの一件などで充分に判っていた筈なのに、ダイヤやレッカが為す術なく命散らす描写に衝撃を受けてしまう……
こんな環境だからシンエイに課せられた役割の重さを感じられるし、それに寄り添おうとするレーナの覚悟も感じられるね
それでもスピアヘッド自身は自分達の命を出来る限り尊重しようとしているね
「笑えなくなったら負けだもんな!」と花見を楽しむスピアヘッド。また、レッカが死に、もぬけとなったベッドに心を痛めつつも「ダーツしよ」と今を楽しもうとするクレナ
スピアヘッドにとって生きるとは笑みを失わないことなのだろうね
そしてもう一方の死に抗おうとする動きが隊員を忘れないこと
隊員が減って余った食事をアンジュは「一人で持てるから」と抱え上げた
また、シンエイは死んだ者達の名前を拾い上げた
そこに新たに加わろうとしているのがレーナだね。彼女は86には会った事はないけれど、メモの形で86達を忘れないようにしているね
それが時にはシンエイすら忘れていた人を覚えていたのは印象的
ショーレイの首に囚われ過ぎたシンエイには優しかった兄など思い出せない。けれど、レーナはちゃんと覚えていた。シンエイが拾い上げることが出来なかった者をレーナは生きている者に伝えてみせた
そういった記憶の連鎖がいずれ隔絶を超えた愛へと昇華されるのかと興味を覚えるね
原付二種を取得したことで更に行動の自由度が上がった小熊
上昇した自由度を修学旅行に参加する為に早速披露してくるとは……
話が進む毎に行動範囲が広がっていく小熊の様子には良い意味で驚かされるね
発熱は旅行を諦めざるを得ないから連絡したのにあっさり熱が下がってしまう理不尽
発熱が自由を束縛する現象であるなら、解熱は束縛からの解放か。それでも普通はそこから修学旅行に参加なんて出来る筈がない
でも、小熊には自由の象徴であるカブが有ると(笑)
だからって単身旅行先に向かってしまうのは破天荒にも程があると思うのだけど、こうした行為を迷いなくするようになった状態こそ小熊がカブを手にした事によって得られた自由なのかも知れないね
自由な小熊は単純に目的に向かうだけでなく、寄り道だって出来てしまう。これは小熊だけが出来る自由な旅行だね
翌日の自由時間も先生の忠告を無視して礼子と共にツーリング。誰かが求めるルールが有ったとしても従順に従おうとするのではなく、ギリギリ許される範囲で自由を謳歌する二人
カブが有るから出来ること。カブと共に居るから夢見る将来。二人の様子は青春模様に溢れていて眩しいね
紫呉によって示される呪いの終わり。あれだけ十二支を縛り苦しめてきた呪いが放っておいても解けるというのは衝撃的
ただ、こうなって来ると別の見方が出来るようになるんだよね。十二支や夾にとって呪いが問題とならないなら、別のものが問題となってくる
夾の呪いがいつ解けるのかと気にして、夾を誰からも奪われたくないと執着を見せる透。それはきっと恋愛と呼べる感情
透に夾を譲った楽羅もそれを理解しているから、夾に自身の感情を告げられずに燻る透に憤る
でも、透は既に別の相手に対する執着で一杯一杯になってるんだよね
父親の死、今日子の憔悴、そして今日子の死……
最初は母親を引き止めて独りきりにならないため。そして母を亡くしてからは心の中に母の面影を繋ぎ止めて自分を保つため
いつまでも母を一番に想い続ける透の姿勢は一種の執着と呼べるもの。こちらは親愛と呼べる感情かな
これからの透と夾にとって十二支の呪いが問題にならないなら、二人にとって問題となるのは自分の心に正直になって相手を受け入れるかどうか
夾の未来が新たな姿を見せ始めた段階で顔を出した二人の心の奥底に眠っていた別種の問題
罅の入った写真立てがあまりに不吉ですよ……
ディーヴァの性格が以前と豹変している事にも驚きだけど、前回から大変長い時が経っている事にも驚かされる。もう61歳なんだ…。それお姉様じゃなくてお婆様じゃん……
ディーヴァにもAI達にも数多くの笑顔が見え、誰もが幸せを享受しているように見える。だからこそ、そこに違和感を覚えてしまう
AIを滅ぼすAIであるヴィヴィの人格を無くした今のディーヴァは歌にだけ邁進しお客も増えていると言えば聞こえは良いけれど、正史においては博物館贈りにされる運命を持ち序盤に置いては「音階をただなぞっているだけ」と揶揄された彼女の歌が大衆に受けているという事実
何かが致命的にズレているような……
そして付き纏う疑問は前半部の殆どに見られるね。特にナビと話すシーンなどこれまでであればマツモトが介入しそうなパターンのシーンなのにそれも無かった
ディーヴァとしては正しい有り様。そしてAIの活躍が広がる世界。全てが有るべき姿を示す世界に突如現れた有るべき姿ではない垣谷の姿にはかなり驚かされたよ
そして第一話と逆の構図を魅せる後半部。あの時はマツモトがディーヴァを勧誘するために言葉を尽くしていた。今度は逆にディーヴァが言葉を尽くしてマツモトの考えを変えようとしている
再起動によって消えた筈のマツモトとヴィヴィの繋がり、それが再び生まれた意味とは?ヴィヴィを二度に渡って助けたマツモトの真意とは?そして何故オフィーリアが自殺する羽目になるのか?何もかもが気になるね
これまでのレーナは頭の中お花畑と呼ばれる程に世間知らずの正義マンに思われていたのだけど、一番辛い時に86に助けられた経験があったのね。そしてその時に86が戦う想いを聞いたと
そんな原体験があるなら86を人として扱わないなんてそりゃ無理な話なんだろうなぁ…
前回にてレーナがスピアヘッドに対して歩み寄ったことを反映してか随分穏やかな前半部だったね
革命祭に行くのを躊躇うレーナ、哨戒中と嘘をついてレーナの話に付き合っていたシンエイ。更にシンエイの兄について話を聞く様子も有ったりと、徐々に双方の心理的な壁は取り払われてきた印象
その印象をぶった切る亡霊たちの声とシンエイが語る戦争の行く末は恐ろしいものだったね
絶望的な事実を前にしてもレーナは一緒に戦おうと言おうとした。けれど結局言えなかったのは心理的が壁が減ったとしても二人の間にはまだ消しようのない空間的な壁が有る。それこそ自分の話を聞くシンエイの表情を窺い知ることが出来ないように
これまでレーナ陣営と86陣営を分ける場面転換の際にはOPEDやCMを用いる場合が多かったように思うのだけど、今回のED前後はシンエイが映ったまま
ED画像は色が反転した月、ED後にはシンエイが首の痕を晒しながら死んだ兄に言及している事から、ED後の場面は死者の世界なのかなと深読みしてしまうね
それぞれの違い、異なる大好き。それを肯定したから同好会は復活できた
けれど一致点を決めないままに再スタートしたからやりたい事が違うまま。最初の特訓ですらグループ分けが必要と同好会の問題が見えてしまった
今回は知らずしてその問題と向き合うことになってしまった愛のメイン回だね
でも、愛はそんな事知らないから、全部の特訓に参加してしまうくらい純粋に今の同好会を楽しんでいるんだよね。
そんな愛の姿を見れば判るように、この同好会なら楽しい何かを作れるというのは確かなのだろうけど、では実際にどういうライブにするのかという具体案は挙げられない
だからソロアイドルなんて方向性も持ち出される
同好会が直面した迷いは愛にも降りかかるもの。アイドルになるなら愛も自分なりの正解を考えなければいけない
でも、エマからすれば既に愛は自然に正解が出来てるんだよね。『楽しい』が好きで『皆を笑顔にしたい』
それこそが愛が目指すアイドル道
それはそれとして、ランニング前にランニングした挙げ句、公園でゲリラライブしてみせた愛の運動能力ってとんでもないのでは……?
そんな体力お化けな一面を見せつつも最終的には親父ギャグを連発してしまう意外性
早くも一人のアイドルとして輝き始めたように思えるね
小熊の場合はカブが新しい世界へ連れて行ってくれるという印象を受けたけど、礼子の場合は可能性を切り開く為の武器がカブという感じなのかな
カブ仲間はカブ仲間でもカブへの見方が随分違ったのは意外だったかも
自由を阻む高い壁の具現化的存在として富士山を相手に考えた礼子
普通は許されないバイクでの登山。それは自由が制限された空間であると同時に限界を試される空間でも有るのだろうね
玲子の場合、富士山に登るのは「そこに山があるから」ではなく「普通は登れないから」なのかもしれないね
ただし、限界を攻めれば自分を追い込むような行為になってしまう。苛立ちが続けば全てに対して悪感情を抱いてしまう
残酷なのは礼子が挑む富士山は世界一高い山ではないということ。富士山以上に高い山を登った人間は存在しているのに礼子は富士山すら満足に登れない
でも、一方で富士山は敵ではないんだよね。それに気付けたから礼子は逆境を楽しめるようになった
カブで富士山を登る千載一遇の好機。例え登り切ることは出来なくても「カブなら何処までも行ける」事は証明できる
だから挑戦は成功せずに終わっても礼子は悪くない気分を味わえたのだろうね
話を聞いた直後は礼子の挑戦を「馬鹿みたい」と言った小熊。だというのに眠る時には「私のカブなら頂上まで登れる」「出来ない事はないと思う」なんて言ってしまう
礼子の挑戦が小熊にも影響して「カブなら何処までも行ける」という心を伝播させたのかもしれないと思うと礼子の挑戦はある意味成功と言えるのかな
蓬や夢芽を前にしてのシズムの語りが印象的
「人は自身で理を作る」 理が有るから自由でなくなる。でもそれによって関係を定義できる
暦が稲本とのサシ飲みに躊躇するのも、蓬が夢芽との恋人設定に戸惑うのも関係の定義ができないから。理が曖昧だから一応自由な行動が取れる
人妻とサシ飲みして良いかどうかの理はないし、蓬達と怪獣優生思想が敵対しているという理もない。理が曖昧だからそれに縛られない自由さを持てる
一方で理に縛られてしまう人達も居るね
稲本は何故結婚したのかと悩みを見せるし、ガウマはこの機会をシズム捕獲に活かそうとする。夢芽は叫び声に影響を受けてしまう
水着はプールに入る為の物である理。でも川に入る為に使った蓬達は理に縛られていない。でも、夢芽だけは入らなかった
姉は既に死んでいるという理は動かない。けれど、それが事故であるか自殺であるかで理の意味は変わってくる。それによって夢芽に大きな影響があるなら、夢芽は姉の死を契機に自由を無くしたままと言えるのかもしれないね